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国土交通省仙台河川国道 今後は舗装へ

気仙沼湾横断橋 ケーブル架設から閉合までの軌跡

 国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所が建設を進める気仙沼湾横断橋が閉合した。その内容について取材した。気仙沼湾横断橋は、気仙沼港のシンボルとなる橋たるべく東北地方整備局道路部が造る橋としては初めて斜張橋形式を採用している。橋長はA1~P10の陸上部も含めると橋長は1,344mに及ぶ。海上部の斜張橋は、その半分を超える680mで鋼重は8,800t(主塔、主桁、鋼床版に達する。斜張橋部はP10から斜張橋中央部(約331m)を朝日地区上部工としてJFE・IHI・日ファブJVが、A2から斜張橋中央部(約349m)を小々汐地区上部工としてMMB・宮地・川田JVがそれぞれ製作・架設を行っている。閉合ブロックはMMB・宮地・川田JV側が架設した。


ケーブルの架設および振動対策

 ケーブルの架設は以下のような装置を用いて施工した。

 押し込みは、専用装置を用いて600tジャッキ2機(大瀧ジャッキ製)で押し込んだ。同様のジャッキは鶴見つばさ橋など多くの橋梁で用いられている。鋼床版上面で押し込みシリンダーをセットし、50tラフタークレーンを使って一次引きこみ装置をセットする。次いでクレーンで中間部1/3を介錯しながら一次引き込みを行う。最終的に押し込み装置を用いて2次引き込みした。全てのケーブルで同じ作業を行っている。装置は、ラムチェアー等の引込み設備がケーブル先端の定着側に必要ないため、桁内スペースに左右されないメリットはあるが、既設ケーブルの張力調整には機材の組み直しによる工程に対するデメリットもあった。

ケーブルの架設順/ケーブル架設と押込み装置(MMB・宮地・川田JV提供、以下注釈なきは同)


ケーブルの押込み装置

 ケーブルは制振対策のため、改良型インデント付き空力対策ケーブル(「NEW-PWS」、東京製綱)を使用している。ケーブル表面に空力対策を施しているもので、具体的にはインデントパターン(ケーブル表面の凹型のパターンを離隔して施したもの)を従来の8箇所から6箇所に施し、レインコンディション、ドライコンディションとも風の影響を大きく減らせる改良型を採用した。さらにケーブル基部には高減衰ゴムダンパーや角折れ緩衝材、ケーブル止水対策(ケーブルカバー、ケーブルハット)などを施している。

 朝日地区側は、スパイラルに突起状のパターンを施している空力的制振機能付被覆平行線ケーブル(「SPWC」、神鋼鋼線工業)を採用している。



最終桁ブロックの架設

 最終桁ブロックの吊り上げの前に、まずJ24側主桁を260mmセットバックし、エレクションガーダーを中央径間側に寄せる。その上で吊り上げが5月23日20時から24日未明にかけて行われた。閉合桁は長さ15m、幅15m、桁高2m、重量約130tの鋼床版箱桁ブロックを朝日ふ頭から150t起重機船で桁下まで運搬し、ダブルツインジャッキ(オックスジャッキ製)を使って8本のワイヤーで吊り上げるもの。吊り上げ自体は21時から開始し、毎分約70㎝ずつ上げていき、22時15分には吊り上げを完了、24日未明には小々汐地区側の桁への仮添接を完了した。

最終ブロックの施工ステップ①

架設直前の状況

最終ブロックの施工ステップ②



最終ブロックの吊上げ架設状況

 今回吊り上げに使用したダブルツインジャッキは、ラム運動(R)ジャッキとシリンダ運動(C)ジャッキの併設方式を採用しているもの。ラム運動ジャッキが稼働しているときにシリンダ運動ジャッキは反転戻し運動を行い、常時相対するジャッキは反転動作を行わせることで、連続稼働が可能となる。こうした稼働は、コンピューターを用いて連続運転及び変位制御、速度制御が行えるため安全性が高い。各定着部には、特殊定着装置が装備され、自動定着・解放を行うことが可能だ。750kN×2のRジャッキと375kN×4のシリンダジャッキを有するダブルツインジャッキを4基使用することで吊り上げをスムーズに行うことができた。吊り上げ設備の重さは約200t。


ダブルツインジャッキの仕様・寸法/吊上げ動作手順図(オックスジャッキ提供)

 朝日地区側はなお2,500mmほど高さが下にずれた状態にあるが、これは桁上の吊上げ設備および閉合ブロックの重量を有するため。この後移動防護工をJ24側に移動させてJ24仮高力ボルトを本締し、エレクションガーダーを解体、その上で移動防護工をJ23側に移動させ、最外側のケーブルであるC21とC40の一次過引きを行い、主桁をセットフォア―して所定の位置に設置する。




最終ブロックの施工ステップ③

セッテイングビームの取付状況

 その後、セッテイングビームを取り付けて高さ調整を施し、J23下フランジの未閉合部をケーブル(C21)の二次過引きしつつ、仕口調整を行い、仮高力ボルトを本締めした。仮高力ボルト本締め後、C21およびC40ケーブル張力を所定の張力に戻し、閉合が完了した。その後、桁内の全断面溶接や同部分の防食工を施工した。

仕口調整/仮高力ボルトの本締め
 また、桁同士の接合は橋梁の耐久性を向上させるため全断面溶接を施しているが、最終ブロックも例外ではない。ただし、デッキの開先角度は35°±5°(ルートギャップ:5㎜~12㎜、目違い:0㎜~1㎜)、ウェブの開先角度は35°±5°(ルートギャップ:7㎜~14㎜、目違い:0㎜~2㎜)。L-FLGの開先角度は35°±5°(ルートギャップ:5㎜~12㎜ 目違い:0㎜~2㎜)と精度が求められることから慎重に施工した。現場は海上であり、風によるアークの乱れに起因した、溶接欠陥を防止するため、溶接部には風防設備を設置して、溶接個所での風速を0.5m/s以下にして施工した。

主桁の溶接状況(東京フラッグ提供)

主桁の閉合式典の模様

 今後は排水溝などを設置し、順次舗装工に引き渡していく。排水溝も防食性を考慮してSGめっき+ナイロンコートの複合防食を採用した『FDドレン』を使用している。


鋼製排水溝『FDドレン』の仮設置状況(JFE・IHI・日ファブJV提供)

(2020年7月29日掲載)