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①ドクターパト 規制速度で走行しながら1台で舗装や床版、高欄、遮音壁、標識柱などを点検

阪神高速技術の新技術・新材料

交通規制を必要とせず点検可能

 阪神高速技術は、1台の車に各種計測機器を搭載して、舗装や床版、高欄、遮音壁、標識柱などを規制速度で走行しながら点検できる車両「ドクターパト」を開発し、阪神高速道路の維持管理に活用している。ドクターパトの点検は交通規制を必要としないため、渋滞の発生を避けることができる。さらに点検結果においては、画像診断による伸縮装置の健全度評価、舗装の路面性状測定、赤外線調査、及び専用のソフトウェアで解析することで、点検・補修の効率化、精度向上に大きく寄与している。


走行中のドクターパト

 ドクターパトには多くのカメラを中心とした計測機器が備えられている。車両前方には赤外線画像カメラ(赤外線熱計測)とエリアカメラ、これらが舗装下面の耐水や空洞および路面状態を点検する画像を撮影する。車両下面にはレーザー変位計が装着されており、路面の平たん性を計測している。車両側面と後方にはラインスキャンカメラが備え付けられている。側面のカメラは高欄や遮音壁、標識柱などの損傷を確認する画像を撮影するとともに、各画像の位置合わせも兼ね備えている。後方のカメラは路面を撮影し、ひび割れ率の算出および伸縮装置の健全度を評価するための画像を撮影する。走行撮影中の位置情報はGPSとも同期させており、画像情報等の整理統合も容易だ。



ドクターパトには様々な撮影装置や調査機器が搭載されている


「路面診断支援システム」の開発を進めていく

 これらのカメラが撮影した画像は、車内にあるパソコンにもリアルタイムで流れており、計測状況の確認も可能だ。またラインスキャンカメラで撮影した大量の画像に対しては、独自に開発した「ひび割れ検出システム」を用いて、従来の目視によるひび割れ判別の処理時間の短縮を図っている。同システムはAI技術の一種であるFCM識別器を採用し、撮影画像から自動的にひび割れを検出する。FCM識別器に学習を繰り返させることで、ひび割れ検出の精度を向上させている。また、わだち掘れ量や検出されたひび割れなどの損傷を基に路面性状の評価を行い、他の評価情報と合わせて総合的に損傷を評価している。今後は、舗装診断で最も人手とコストを費やす「ひび割れ率」の算出を自動化できる「路面診断支援システム」の開発を進めていく方針だ。




赤外線熱計測を採用し舗装下面の変状をスクリーニング

 埋設ジョイント部、補修部の剥離、舗装と床版の層間剥離等が対象

 赤外線熱計測は車体上部に搭載した赤外線画像カメラが、道路からの放射熱を感知し、舗装内部と床版上面の損傷で起きる路面温度の格差(異常部と健全部の温度の相違)を基にして空隙や滞水を発見する。舗装内部の損傷箇所は健全部と違った寒暖による熱変状を見せる。その温度差を感知して舗装下面の変状をスクリーニングするものだ。

 ドクターパトは一般的な赤外線熱計測で用いる8~14μmの波長領域ではなく、「中間赤外線」の3~5μmの波長領域を対象にしており、センサー自体も高感度のものを採用している。仮に時速100kmの高速走行で計測しても精度の高い赤外線熱画像を撮影できる。赤外線熱画像でスクリーニングできる対象は、埋設ジョイント部、補修部の剥離、舗装と床版の層間剥離部分、面的なスクリーニング対象が鋼床版Uリブの滞水、舗装内部の滞水などである。赤外線画像と同時にエリアカメラの撮影も行っているため、変状箇所が舗装路面の上面か下面かの判断もできる。これらの画像の統合は開発した専用のソフトウェアで自動処理している。この点検結果を一次スクリーニングとすることで、上面から水の侵入により劣化している舗装や床版の候補地点を抽出することが可能だ。

(2018年4月18日更新、井手迫瑞樹)