HOME現場を巡る一覧国道2号淀川大橋を軽くして耐震性能を向上しつつ、健全化するリニューアル

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RC床版を鋼床版に交換し、スピーディーに軽い構造へ変換

国道2号淀川大橋を軽くして耐震性能を向上しつつ、健全化するリニューアル

 国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所は、国道2号淀川大橋の床版取替を主としたリニューアル工事を進めている。直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用して事業を行っているもの。同橋は国道2号の淀川渡河部に架かる橋長724.516mの鋼6径間連続単純上路式ワーレントラス桁(4主桁)+鋼24径間単純鈑桁(いずれもリベット接合、7主桁)で、供用後90年が経過し、傷みの激しい既設床版(RC床版構造)を鋼床版に変更し、健全化すると同時に、上部工を約30%も軽量化することで下部工を補強せず耐震性能を確保しようというもの。合わせて桁の損傷部にも状況に応じて補修補強をかける。そのため「施工設計」、「維持管理保全設計」を基本コンセプトに、専門性が高い鋼橋上部工業者を発注対象とした。(井手迫瑞樹)


淀川大橋全景(一番手前、国土交通省大阪国道事務所およびIHI・横河住金JV提供、以下注釈無きは同


架設後約90年が経過

 第二次大戦の戦火や阪神淡路大震災などの災害も経験

橋梁と発注概要

 同橋は1926年(大正15年)に架設され、架設後90年が経過しており、第二次世界大戦の被災や阪神淡路大震災なども経験している。25年度の定期点検やその後の診断の結果、床版の漏水、剥離・鉄筋露出、ひび割れ、補修材の再劣化、鋼材腐食など様々な種類の著しい損傷が見られている。これまでの間に主なものだけで11回に及ぶ補修補強工事も実施されているが、今回抜本的な対策として床版の取替工事を実施するに到った。


鈑桁部(左)とトラス桁部(右)の損傷状況写真


直轄初の設計交渉・施工タイプによる調達方式

 床版をRCから鋼構造に変更し上部工死荷重を軽減

 同橋では、直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用した。具体的には傷みの激しい既設床版(RC床版構造)を鋼床版に変更し、健全化するもので、合わせて桁の損傷部にも状況に応じて補修補強をかける。そのため「施工設計」、「維持管理保全設計」を基本コンセプトに、専門性が高い鋼橋上部工業者を発注対象とした。施工設計、維持管理保全設計を基本コンセプトにしたのは、施工者独自の最新技術や知見などを反映することで、施工時のリスクを低減しつつ、効率的な検討を行う必要があるためだ。施工計画はもちろん、施工設計することで工事を安全かつ確実に実施することを目的にしている。また、補修補強後の維持管理も意識した設計を求めている。

 取り替えに鋼床版を採用したのは、施工のし易さ・迅速さなどから交通規制を最小限にできることや、下部工の耐震性が低いため上部工の軽量化を図りたい――という理由からだ。下部工は、鈑桁部が木杭で、トラス部が半ばパイルベントのようなコンクリート井筒基礎(その上に細い柱があり左右を梁で繋がれ、支承を介してトラス桁と繋がっている)。地盤は軟弱な沖積層であり、木杭は半ば摩擦支持で浮いているような状態、井筒基礎は基礎地盤には達しているものの、現状では耐震性能を満足していない。しかし、直下にはJR(東西線)が走っており、基礎の補強は困難だ。そのため、基礎乃至橋脚の補強を行わず上部工の軽量化を行うことで、地震時に作用する水平力を減らし、下部工以下の補強を伴わず耐震性能を満たすという手法を採ったものだ。


RC床版を鋼床版へ取替え


耐震評価


トラス部の鋼床版は18mmのUリブ、鈑桁部は14mmのバルブリブ

 床版重量を12,000tから4,700tに軽量化

 ただし交通量は12時間で24,000台、24時間で35,000台弱、大型車混入率も12.7%/12時間あり、床版の疲労損傷対策が必要なためトラス部の鋼床版は版厚18mmのUリブ、鈑桁部は14mmのバルブリブ形式をそれぞれ採用し、かつトラス部の鋼床版にはSFRCによる基層を打設する方針だ。

 これにより床版の荷重だけで言えば既設のコンクリート床版約12,000tに対し、鋼床版では約4,700tまで重量を軽減でき、上部工全体でも取替前より3割ほど軽量化でき、支承補強や下部工の耐震補強が不要となる。

 一方で、既設の桁形式は非合成構造であるが、一部、主桁がRC床版に入っており、現状確認できない箇所もある。そうした詳細や床版撤去後の桁部の損傷によっては大きな補修補強も考慮されることから直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用し、専門性の高い会社による確実な施工を求めたものだ。

 工事実施の主な前提条件は、①補修補強を行い、耐震性能および健全性を確保、②工事実施中は対向2車線を確保し、中央分離帯を設置、③工事実施中の歩道は有効幅員3.5m以上を確保、④河川占用が伴う工事の施工期間は非出水期(10月16日~6月15日)に施工、⑤吊足場はO.P+3.14m以上(過去15年間の非出水期最高水位)を基本――などとした。


架け替えの検討は?

 そもそも淀川大橋は、以前から淀川のH.W.Lとのクリアランスが低く、地震による津波が遡上した場合、対応が困難であることが指摘されている。しかし、架け替えをするとなると、橋を全体的に嵩上げしなくてはならないだけでなく、国道2号と接続する部分の嵩上げも必要となり、莫大な費用が想定される。そのため、早急な老朽化対策と耐震性能の確保を目的として大規模修繕を選択した。


損傷状況の詳細

 平成25年度の定期点検では、橋単位の健全度はⅢと判断された。C判定の部材と損傷状況は、主桁の腐食、主構トラス部分の亀裂、腐食、縦桁の腐食、床版のはく離、鉄筋露出、うき、対傾構の腐食などが確認された。鋼材関係は腐食が進み、床版も劣化している。腐食、き裂が顕著に出ている箇所は、水が回りやすい桁端部が多いが、端部に限らず全体的に損傷が進んでいる。床版が損傷しているので、そこから水が回っているようだ。桁は、空襲の不発弾で抜けている個所や、機銃掃射で横から穴が空いている箇所も見られる。過去、主なものでも11回補修してきたが、補修箇所でも再劣化が見られている状況だ。


大阪大空襲による損傷


損傷対策の歴史


トラス部の損傷状況


鈑桁部の損傷状況


 特に今回主たる対象になる床版は、架橋当時、阪神電鉄の軌道部分も存在した。軌道部分に関しては撤去し、RC床版(152mm)の上部に非常に厚い調整コンクリート(約280mm)を有している。道路部もそれに伴い調整コンクリートを打設しており、RC床版上にさらに調整コンを平均214mm打設している状況だ。そのうち傷んだ調整コンクリートの上面はSFRCにより打ち換えている。床版下面には、架橋当時に使用された菱型金網が残っており、床版下面の剥落部分をポリマーセメントによって断面修復していたが、こちらも剥落などの損傷を生じていた。


淀川大橋のRC床版の歴史的変遷


RC床版は対傾構上で支持

 RC床版は配力筋と主鉄筋の方向が通常と逆

 面白いのはRC床版が主桁の上フランジを巻き込み、約1m間隔にある対傾構上で床版を受けていること。このRC床版は面白く、配力筋と主鉄筋の方向が従来と逆に配置されている。これは主桁の間隔(3m)より対傾構の上弦材の間隔(1m)の方が狭いためにそうした対応をしたようだ。主桁のコンセプトは対傾構を支えるためのものだったのだろうか。鋼床版への取替にあたっては、構造上必要のない対傾構については撤去する方針だ。


主桁間隔より対傾構のピッチ幅の方が短い。構造に配慮して床版は配力筋と主筋の配置を逆にしている

(井手迫瑞樹撮影)