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覆工コンクリートの内巻補強工・はく落対策工などを実施

NEXCO西日本 山陽道・尼子山トンネル(下り線)の復旧工事が進む

公開日:2023.11.30

 NEXCO西日本関西支社は11月15日、9月5日未明に発生した車両火災により損傷した山陽自動車道・尼子山トンネル(下り線)の復旧工事現場を報道陣に公開した。延長592mの同トンネルは播磨JCT~赤穂IC間に位置し、同区間の下り線は通行止めが続く。NEXCO西日本では12月下旬の通行止め解除を目指して、覆工コンクリートの内巻補強工、はく落対策工などを24時間体制で進めている。


現場公開概要図(NEXCO西日本提供。注釈なき場合は以下、同)

覆工コンクリート内巻補強工は214.3mで実施
 既設コンクリートを200mm切削して新たに打設

 同トンネルの火災では、東側坑口付近から約400mの区間で覆工コンクリートに甚大な損傷が生じた。


被災状況

 尼子山トンネル火災事故技術検討会(砂金伸治委員長・東京都立大学教授)では、コア削孔、中性化試験などの調査を行い、覆工コンクリート表面からの火害の影響が深い箇所は内巻補強工、浅い箇所ははく落対策工を標準的な補修方法とすることを確認し、復旧工事に着手した。
 内巻補強の施工範囲は、セントル3~20の214.3m(1セントルは12m)に及ぶ。矢板工法で施工した覆工厚55~70cmの既設コンクリートを200mm切削して、セントル(移動式型枠)を用いて新たに覆工コンクリートを打設していく。
 切削は、工程短縮のために大小7台のツインヘッダを使用して行ったが、それでも「工程のなかで時間がかかるものとなった」(NEXCO西日本)。切削完了後、NATM工法での測量・施工などを支援するシステム「CyberNATM」で切削面を3Dスキャンし、規定の切削深さが確保できているかを確認して、深さが足りないところは再切削を行った。


被災した覆工コンクリートの切削

 切削面に防水シートを設置後、軸方向約12m×高さ約7.2mのセントル2基で西側から片押しで、切削したコンクリートと同厚を打設している。1日の打設量は約70~80m3である。コンクリートは高流動タイプを使用し、繊維「バルチップJK」(バルチップ)添加後のスランプフローは60cmとなっている。中流動コンクリートでは打設厚200mmの充填不足が懸念されることから高流動タイプを採用し、型枠にかかる側圧が高くなるため、セントルの部材を補強している。また、NATM工法による通常のセントルは、軸方向10.5mであるため本現場の12mに対応できず、改良をおこなって施工に臨んだ。


セントルは2基用いている(大柴功治撮影。以下、撮影=*)

防水シート設置後/現場公開時もコンクリート打設が続いていた(撮影=*)

 コンクリート打設は、側壁両側から天端部に向けて実施している。コンクリートの充填不足や密実性の確保が課題となる天端部については、妻側から充填状況を目視で確認するととともに、圧力計で側圧を管理し、型枠バイブレーターでの締固めを行っている。昼間に打設を完了させて、1夜間の養生とするサイクルを繰り返し、養生では塗布型収縮低減剤「ヌッテガード」(フローリック)を塗布して品質確保に努めた。


内巻補強工が完了したセントル(撮影=*)

はく落対策工は167.9mで実施
 劣化部をWJではつり、MBSクリアガードを塗布

 はく落対策の施工範囲は、セントル0~2(36.4m)、21~28(95.5m)および37~39(36m)の合計167.9mである。劣化して落下の可能性のあるコンクリートをウォータージェット(WJ)ではつり落とし、プライマー不要のコーティング材「MBSクリアガード」を塗布する。同製品は透明であるため、施工後のコンクリート表面を目視により確認できることも特徴だ。なお、セントル0~1は有筋区間であることから、ガラス繊維シートをコーティング材の間に挟み込み、同2、21~28、37~39の無筋区間はコーティング材のみの塗布としている。


ウォータージェットによるはつり

はく落対策工

はく落対策完了(撮影=*)

24時間体制ではく落対策は夜間に施工
 職員20人、作業員平均100人が従事

 本復旧工事は10月1日にツインヘッダでのコンクリート切削を開始して、切削工約1カ月、覆工コンクリートの内巻補強工・はく落対策工約1カ月、路面・施設工約1カ月という工程で進め、12月下旬の通行止め解除を目指している。
 短工期での施工が求められるなかで、「日々、工程やヤードの調整をNEXCO西日本と行って、少しでも早い完了を目指している」(元請の鹿島建設)という。また、「工程をラップさせて、作業時間を確保することで作業効率を上げている」(同)。そのため、内巻補強工を8時から17時過ぎまでの昼間に施工し、はく落対策工を16時から翌6時までの夜間に2班体制で施工する24時間体制とし、職員20人、作業員平均100人で臨んでいる。
「作業は順調に進捗しており、今後も1日も早い復旧に向けて関係機関と連携して取り組んでいく」(NEXCO西日本)とのことだ。

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