桁端部を切り欠き構造にした低桁高化製品も開発
ジェコス 「H形鋼橋梁 GHBⓇ」を初架設 支間長は20m、2主桁
ジェコスは、同社初となる本設橋梁用製品「H形鋼橋梁 GHB®」の第一号案件を神奈川県の民間企業から受注し、初架設を9月末に完了した。
本案件は発注企業の敷地内での大型車両通行のため、既設橋の横に架ける新設橋としてGHBが採用されたもの。同橋の支間長は約20m、有効幅員約4m、主桁数2本となっている。同社では「軽量化による下部工への負担軽減、狭隘な架設条件での現場施工性、短工期での製作・施工」が評価されて採用に至ったとした。
GHBは主桁と横桁に大型圧延H形鋼を使用し、高力ボルトで添接する構造だ。主桁のH形鋼は桁高912mmから588mmまでの5種類が用意され、現場条件に合わせて適用する。床版は現場打ちのRC床版で合成桁としている。
GHB概要図
本案件では、主桁に桁高912mmのH形鋼を用い、横桁などを含めた全鋼重は約15t、主桁1本は約7tだった。一般的なPC橋と比較して上部工の死荷重を10~20%低減(支間長20mの場合)できることがGHBの大きな特徴である。
現場は山間部で大型車両の通行を確保するなか、クレーンの旋回範囲が限られる狭隘なヤードでの施工となった。架設(別会社)は、70t吊クローラークレーンを用いて、主桁・横桁等の主構造を3日で完了させている。また、部材搬入路の幅員が狭かったため、主桁分割ができる鋼桁の利点を生かし、3ブロックに分割して搬入後、ヤードで地組をした。
桁架設
詳細設計と工場製作は同社が一貫して手掛けている。詳細設計については、「設計パートナー会社と連携しながら実施していく」(ジェコス)。桁製作は、千葉県にある同社長沼工場で行ったが、「全国展開を考えると、輸送や工場生産能力などの課題を踏まえ、社内外の製作体制を構築中」(同)とのことだ。
今回は、詳細設計を約2カ月、鋼材手配を約3カ月、工場製作を約3カ月で完了させた。上部工の施工(別会社)は、舗装、付属物設置まで含めて約2カ月の工期となった。
工場製作。キャンバー加工(左)と補剛材溶接(右)
仮組立
上部工施工完了
GHBへの具体な問い合わせは100件を超える
適用支間長10~25mのGHBは、中小橋梁の架替えや新設ニーズに対応した製品として展開しており、2022年9月の商品化以降、全国の自治体や建設コンサルタントなどから具体の問い合わせが100件を超えているという。進捗中の案件では、設計織り込み済みが2件、詳細設計実施中が4件となっている。
PC橋が約50%を占めている橋長10~30mの中小橋梁に対し、「PC橋や鋼橋の架替え需要を第一のターゲットとして、GHBを開発した。現状では新設の問い合わせも非常に多い」(同)。
桁端部の桁高を抑え、架替え時の桁高制限に対応
同社ではGHBのさらなる展開を目指して、従来製品を低桁高化した新製品を開発した。河川改修時を含む橋梁架替えの際に求められる桁高制限に対応するためで、桁端部を切り欠き構造とすることにより、桁端部の桁高低減を図った。切り欠き部の角部の応力集中は補剛材やR加工により緩和し、その安全性はFEM応力解析により確認されている。
荷重条件などにより切り欠き高さは変動するが、平均すると3割程度は端部の桁高を削減できるという。一例では従来912mmのもので392mm削減した520mmとなり、一般的なPC橋とほぼ同程度の桁高となっている。
標準構造と低桁高構造/低桁高構造の端部FEM解析
低桁高側面図
ただ、その構造により全体の桁高は変わらないため、路面擦り付けなどの上部の桁高制限に対応できるもので、桁下余裕高をクリアしている条件で適用可能となっている。