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JIS法と同精度で測定時間を1/3以下に短縮

ケミカル工事 塩分センサを用いたコンクリート構造物の塩化物イオン量測定技術を開発

公開日:2023.08.24

 ケミカル工事は、塩分センサを用いたコンクリート構造物の塩化物イオン量測定技術を開発した。同様の試験方法としてはJIS A 1154が規格化されているが、同社の開発した銀塩化銀電極を用いた塩分センサによる簡易な測定方法は、現地で特殊な技術や工程を伴わず、だれでも測定できることが特徴だ。従来のJIS法(電位差滴定)が140分かかるのに比べ、同程度の精度の測定をするのに新技術の1つである「抽出法」では40分に短縮できる。さらに新技術のもう一つの測定法である「接触法」は従来手法では平滑部しか塩化物イオンを測定できなかった接触による測定を、電極をドリリングした削孔に挿入することにより、作業時間30分で測定可能とした。0~80mmの削孔深さ範囲まで測定できるため、鉄筋近傍の塩化物イオン量を測定できることが特徴だ。(井手迫瑞樹)


塩分センサ
測定方法別の所要時間の比較表(ケミカル工事算出)

銀塩化銀電極を使って構造物の測定したい箇所の電位を測定
 一部の高速道路でも採用

 同工法は銀塩化銀電極を使ってコンクリート構造物の測定したい箇所の電位を測り、その電位から塩化物イオン量(Cl⁻)を換算して推定するものだ。そのため、測定をより正確にすべく、作成した銀塩化銀電極をいくつかの既知の塩分濃度の溶液に浸漬して電位を測定し、キャリブレーションカーブを求めた上で、実際の運用を行っている。既に一部の高速道路でも採用されており、 同社では「コンクリート構造物を的確かつ安価に調査・診断・評価・対策していく手法として、本技術を積極的に活用していく」方針だ。


測定方法の概要/測定方法の図

接触法 φ10mmの削孔を行った上で棒状の塩分センサを挿入
 抽出法 現場において高精度な測定結果を得られる

 測定に使用する機器は、棒状の塩分センサ、参照電極、直流電圧計の3つである。コンクリート構造物の深さごとの塩化物イオン(CL⁻)量を測定するためには、所要深さまでドリル削孔でφ10mm程度の削孔を行う必要がある。
 同技術の測定方法は2種類ある。コンクリート構造物に塩分センサと参照電極を表面ないし削孔部に挿入し、直接接触させることにより測定する「接触法」とドリルで削孔した粉を採取して調整した後に塩分センサと参照電極を挿入して測定する「抽出法」がある。
 接触法は、構造物表面に接触して電位を読み取るだけの簡易な手法である。従来の手法のように平滑部だけでなく、ドリル削孔した内部の深さ方向にも接触して測定できることが大きな特徴だ。一方で、表面の含水状態、接触面が骨材かモルタルかによって測定速度に抽出法と比較して±30%程度のばらつきが発生しやすい。
 抽出法は従来のJIS法と比較して同等の測定値が得られることを確認しているが、接触法と比較してドリル削孔やその後の試料抽出などの手間を要する。それでも従来の蛍光X線分析法と比べれば簡便で、現場において高精度な測定結果を得られる。


塩分センサA法(接触法) / 塩分センサB法(抽出法) 
A法とB法の測定方法の概要

 同技術は2014年度から始まった戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で土木研究所と物質・材料研究機構と共同研究を行った結果をまとめた「塩分センサを活用した簡易な塩害診断技術」をもとに開発している。

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