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歩道部拡幅はFRP床版を採用、車道部の既設RC床版も打替え

国道33号ケヤキ谷橋 鋼単純合成箱桁にアーチ形状の補剛桁を設置して2径間化する補強を採用

公開日:2023.06.19

 国土交通省四国地方整備局土佐国道事務所は、国道33号の高知県高岡郡越知町越知丙~同町越知乙の仁淀川支流青潰谷川を渡河する箇所に架かるケヤキ谷橋について既設橋の補強および拡幅を行う事業を進めている。橋桁の補強に当たっては、同橋の桁下クリアランスの高さや地盤条件などを考慮して、アーチ形状の補剛桁(鋼製)を設置し、現在単純構造である同橋を2径間化する補強を施す予定だ。その設計及び施工方法の概略について取材した内容をまとめた。(井手迫瑞樹)


ケヤキ谷現況写真及び、橋補強・拡幅後イメージパース(土佐国道事務所提供、以下同)

現在の構造は大型車のすれ違い困難のため拡幅
 耐荷力確保、地震時水平力の不足解消のため補強

 同橋の現在の構造は橋長55.9m、幅員7mの鋼単純合成2主箱桁である。下部工は重力式橋台、基礎工は直接基礎である。1963年に、昭和31年鋼道路橋設計示方書に基づき、建設、供用された。これを車道7.5m+歩道2.5mに拡幅し、鋼2径間連続非合成箱桁+鋼アーチ桁へ変更する。現在の構造は大型車のすれ違い困難であることやTL-20およびB活荷重に対して耐荷力不足が生じていること、地震時の水平力に対して不足していることから、拡幅および補強を行うものだ。


既設橋と補強・拡幅後の橋梁構造の違い/現在の耐荷力および地震時水平力不足状況

補強、拡幅概要図

 補強や拡幅に当たっては、国道の供用への影響を最小限に抑えるよう配慮している。国道33号は地域の幹線道路であるため、通行止めは難しい。架け替えや上部を規制する補強を行う場合、う回路となる仮設道路や仮設橋が必要となるが、仁淀川と急峻な崖地に挟まれて大規模なものとなってしまう。また、2径間化としては新たに下部に橋脚を建設する手法もあるが、河川の河積阻害率を増やしてしまう事や、橋脚高が20mを超える大規模なものになってしまう事、直下の地盤が下流に向かって支持層が深くなる状況にあり、支持層の深さが最大で40m程度に達してしまうことなどから、延長50m弱、鋼重約160tの鋼アーチ部材を使った橋桁の補剛案を選択した。


補強および拡幅の工法比較検討結果

アーチ桁は鉛直材を設けない
 上流側にベントを組むヤードを確保

 橋台前面にアーチ拱台を建設し、アーチライズが既設鋼箱桁部分を支持する中央部分は免震沓(鉛プラグ入り免震沓、反力3,600kN)を設置し、両端部はヒンジ構造の鋼製沓とする。なお、アーチ桁はあくまで箱桁の中央部を下から支持することで補剛する部材であるため、鉛直材は設けない。既設の箱桁構造については、アーチ部の支点となる中央部を当て板補強するほか、桁内に6~8mピッチに横桁とダイヤフラムを設置する補強を施す。さらに端部支承も現在の鋼製ヒンジ沓を免震沓に変更する。

 拡幅桁は下流側(上り車線側)に架設する。4m弱のブラケットを張出し、歩道部床版を設置して拡幅するため、ブラケット支点部についても既設桁を補強する必要がある。歩道床版は死荷重を軽減するためFRP床版を採用した。さらにその後、片側通行規制を行い、上下線の床版を半断面ずつ打ち替える予定だ。


施工手順 ①アーチ部材の組立/②既設主桁部補強・ジャッキアップ、③支承設置・2径間化

施工手順 ④張出しブラケットの設置、⑤歩道部床版の設置/⑥床版打替え(上り線→下り線:半断面施工)

 鋼アーチ材の架設は、上流側にベントを組むヤードを確保し、アーチの形で地組して、既設橋の桁下まで横取りして、ジャッキで調整する手法を採用する方針。地組に関してはタワークレーンやバックステイ材などを用いず、桁全体を7ブロックに分けてバランスを取りながらクレーンで地組していく方針だ。既設桁およびアーチ部の支承交換・設置は主桁のジャッキ支点部を補強した上でジャッキを操作して支承を出し入れして交換する。

 設計は大日本コンサルタント。元請は川田工業。

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