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軽量骨材を用いたHSLスラブを採用

兵庫県道路公社 播但道市川大橋で床版取替を実施中

公開日:2023.06.15

 兵庫県道路公社は播但連絡道路の市川大橋(架橋地:兵庫県姫路市の市川渡河部付近)の一部で床版取替などを中心とした老朽化対策工事を進めている。播但連絡道路は、兵庫県の播磨地域と但馬地域(姫路市~朝来市和田山)間を結ぶ延長65.1kmの自動車専用道路である。市川大橋はその砥堀ICの上下線ランプに位置しており、今回床版取替を行う部分(市川大橋第5・第6橋)は、市川渡河部に架かる橋長222.5mの鋼2+3径間連続非合成鈑桁である。昭和48年の建設から約50年が経過しており、RC床版の劣化が著しい事から、床版取替を行うものだ。取替に用いるプレキャストPC床版は、既設基礎や下部工への死荷重を軽減するため、軽量骨材を用いたHSLスラブを採用している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


市川大橋全体概要

床版の圧縮強度が15N/㎟の箇所も
 鉄筋近傍においても6kg/㎥の塩化物イオン濃度を計測

 市川大橋は姫路駅から7kmほど北に位置する砥堀ランプの橋梁である。片側3,000台/日の交通量である。橋梁設計基準の変遷による床版厚が薄い時期であったこと、凍結防止剤を散布することや50年間の累積疲労、防水工の未設置などもあり、「床版はかなり傷んでいる状況」(兵庫県道路公社)であった。事実、今回床版を取替える第5橋では一度床版の損傷により一部の路面陥没が生じており、その際はアンダーデッキパネルによって部分的に補強を施していた。


床版の損傷状況①(下面)/同(上面、雨天時のため舗装をはいだ後に水が溜まっている)(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)

床版の損傷状況②

 床版の傷みについて、コンクリートの損傷は貫通ひび割れにまで進展しており、橋面上の雨水の浸透によって床版下面に漏水や遊離石灰が発生していた。内部の鉄筋腐食は上端筋だけでなく下端筋にも及んでいた。さらに詳細調査を行ったところ、建設時の設計基準強度(圧縮強度)21N/mm2に対し、一部では15N/mm2と強度不足の箇所があり、さらに静弾性係数が下回る箇所もあった。

既設床版の詳細調査結果

 塩分量の測定結果はさらに深刻で、最も強度不足が見られた箇所では、鉄筋近傍において6kg/m3の塩化物イオン濃度が計測され、塩害による損傷が生じている可能性が示された。さらに被りコンクリート内にも7kg/m3弱の塩化物イオン濃度が計測され、上部のはつり調査では多数の浮きが発生しており、浮き部付近の鉄筋は断面欠損を伴っていることから、補修は困難と判断して床版取替工による抜本的対策を実施することにした。

床版取替工は4,390㎡
 下り線側の床版取替を昨年7月末から今年4月中旬にかけて施工

 本工事における床版取替工は市川大橋第5・第6橋のほぼ全面約4,390㎡を対象とする。プレキャストPC床版のパネル総数は上下線合計205枚に達する。さらに両橋梁とも78°の斜角を有する(第5橋梁の片側P14橋脚直上のジョイントは直角のため、プレキャストPC床版を設置する)ため、床版端部ジョイント前後の調整部のみ72.7m2を場所打ちで床版を打設する。同時に同㎡の床版防水・舗装に加え、落橋防止構造の設置や支承補強も行う。


床版取替工は市川大橋第5・第6橋のほぼ全面約4,390㎡を対象とする

 市川大橋第5橋、第6橋の橋長内訳は第5橋が3径間部133.5m、第6橋が2径間部89mであり、全幅員はいずれも19.75mである。

 施工はまず、中央部から行った。床版取替は下り線から行うが、少なくとも上下1車線は通行を確保しなければならない。そのため照明柱を撤去して仮設照明を設置した。その後、まず下り線側の床版取替を昨年7月末から今年4月中旬にかけて施工している。
 下り線完了後は、下り線を対面通行にして、同様に上り線の床版取替を11か月かけて行い、最後に2024年3月ごろに2週間かけて中央分離帯の再設置を行うスケジュールだ。


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