道路構造物ジャーナルNET

鹿島道路、NIPPO、ショーボンド建設、フタミ、範多機械などと共同

阪神高速技術 鋼床版上面に設置したSFRCを容易に剥がせる  『解体性接着技術を用いたSFRC舗装撤去工法』を開発

公開日:2023.02.27

 阪神高速技術は、鹿島道路株式会社、株式会社NIPPO、ショーボンド建設株式会社、株式会社フタミ、範多機械株式会社と共同で、解体性接着技術を用いた鋼繊維補強コンクリート(以下、SFRC)舗装撤去工法を開発した。近年、鋼床版の疲労き裂対策として、鋼床版上面舗装の基層(約40mm厚)をグースアスファルト舗装からSFRC舗装に置き換える工法が増えている。阪神高速道路における鋼床版上のSFRC舗装の施工面積は2020年6月末時点で18万8千㎡に及んでいる。SFRC舗装は、鋼床版の補強効果を大きく有するものの、鋼床版と3N/mm2程度の引張接着強度を示す接着材で強固に接合されているが故に撤去が困難で、万が一、鋼床版にデッキ貫通き裂などが生じた場合は上面からの当て板補強が非常に難しくなる。


SFRC補強例

 新開発した撤去工法は鋼床版とSFRC舗装の付着界面の剥離工法として、SFRC舗装を打設する前に塗布する防錆プライマーの中に予め5~50μmの熱膨張性マイクロカプセル(以下、熱膨張性MC)を仕込んでいる(以下、解体性接着材)。熱膨張性MCは、熱可塑性高分子の中に炭化水素を内包しており、舗装上面からグースアスファルトを撤去する際に用いるのと同じ電磁誘導加熱装置(以下、IH)で鋼床版を温め、その熱が解体性接着材を温め、内包した炭化水素をガス化させ、その内圧膨張を利用してSFRC舗装と鋼床版の縁を切り撤去するものだ。実橋での試験施工から1.5年後に行った追跡調査では、解体性接着材の耐久性・機能性(易はく離性)および撤去工法の施工性を確認し、解体性接着技術を用いたSFRC舗装撤去工法の有効性を確認した。(井手迫瑞樹)


解体性接着技術を用いた後のSFRCと鋼床版の接合構造

解体性接着技術を用いたSFRC舗装撤去工法は4本柱からなる複合技術
 ①解体性接着材、②アブレシブウォータージェット、③IH、④真空輸送技術

 SFRC舗装を撤去するための工法開発は2013年度から始めた。当初は外的あるいは内的な破砕工法、接着材層加温工法、ウォータージェット工法なども並行して検討していたが、2018年度に現在の解体性接着技術を用いた工法に収斂させ、工法を確立した。
 解体性接着技術を用いたSFRC舗装撤去工法の柱は4つある。①解体性接着材の採用、②アブレシブウォータージェット(以下、WJ)によるSFRC舗装の切断、③IHによる鋼床版の加温、④真空輸送技術によるSFRC舗装の撤去である。こうした複合した手法を用いることで、チッパーやブレーカーなどを用いない低騒音、低振動の施工が可能、切削機やバックホウで基層を撤去せず、引き上げて撤去する手法を取るため鋼床版を傷めない――などの効果を有している。


研究のタイムスケジュール

解体性接着材……熱膨張性MCを混入した防錆プライマー
 アブレシブWJ……研磨材を含有したWJでSFRCを切断

 解体性接着材は、熱膨張性MCを混入した防錆プライマーであり、SFRC舗装(厳密にはその下部に塗布する接着材)と鋼床版の界面に塗布する。解体性接着技術は、建築業界では一般的に使われている技術で建築物の壁紙を張る際に(壁紙交換しやすいよう)こうした熱膨張性MC入りの材料が使われており、それを援用した。


解体性接着材と熱膨張性MCの構成および特徴

剥離後の熱膨張性接着剤層

 WJは、その名の通り、アブレシブ(研磨材)を含有したWJで、その機体は幅1m×奥行1.5mと通常のWJより小型化し施工しやすくしている。設定は水量を19ℓ/min、吐出圧を200MPa、切断速度を0.5m/minとした。WJ工法を用いるのは従来のコンクリートカッターを使うと鋼床版を傷める可能性があるためだが、研磨材なしでは鋼繊維は切断できず、切断溝に角欠けが散見された。そのため、最大粒径2mmの球状の鋼製ショット(JIS K 5903, S-S 140)を単位長さ(m)当たり2.4kg±0.4kg混入したアブレシブWJを採用した。切断幅は2cm程度で、1か所460mm四方6か所を2.5時間程度で切断できる。WJを使うことによる水養生は、スポンジ養生+バキュームを並行して行うことで解決した。


アブレシブWJの特徴

アブレシブWJによる切断状況

IH……加温して熱膨張性MCを膨張させ、鋼床版とSFRCの縁を切る
 真空輸送技術......米国VACUWORKS社が保有する真空吸引技術を利用

 IHは鋼床版を加温し、鋼床版とSFRC舗装の縁切りに必要な熱膨張性MCの膨張を促すために用いる。IHで温める加温装置は阪神高速道路が有し、維持管理工事で使っている1m真角の手押しのIHで施工することを鑑みて、一か所当たり最大で460mm真角程度とした。熱膨張性MCは温度が110℃以上にまで温められないと急速膨張しないものを用いているため、通常の供用時はSFRC舗装に覆われている鋼床版の温度が上がっても、せいぜい60℃程度であるため、接着面の膨張は生じない。また、IHは撤去予定部の中心から同心円状に鋼床版を温めて熱膨張性MCを反応させるため撤去予定箇所に隣接する外側の接着層の温度は、熱膨張性MCが反応する温度以下に抑えることが出来るため、健全箇所の引張接着強度や鋼床版裏面の防錆塗料にも悪影響を生じさせない。


IH加熱による施工

 真空輸送技術による撤去は主にボルト接合部対策である。鋼床版面には平滑部とボルト接合部が存在する。平滑部のSFRC舗装には水平力や鉛直力を作用させて撤去する施工法が考えられるが、ボルト接合部のSFRC舗装を撤去するには、SFRC舗装に鉛直方向の力を作用させる施工方法しか選択肢がない。このような条件下で、確実に鉛直力を作用させる施工法を検討した結果、米国VACUWORKS社が保有する真空吸引技術の利用が最も現実的であるという結論を得た。この工法は、撤去したいSFRC舗装面に吸着パットを装備した鋼製枠を設置し、SFRC舗装と鋼製枠間の大気圧を真空ポンプにて80kPa以上に減圧することで両者を一体化させ、鉛直方向に引き上げることで、SFRC舗装を撤去するものである。しかし、SFRC舗装体は大気圧により下方向に抑圧されているため、鋼床版とSFRC舗装の付着力が限りなくゼロN/mm²に近い状態においても、真空吸引装置による引き剥がしは困難であった。そのため、SFRC舗装版の端部をバール等により斜め上方向に持ち上げることで、SFRC舗装体下面に空気を送り込み、鋼製枠に作用する大気圧を開放させる施工法を考案した。この時、SFRC舗装の鋼繊維の毛羽立ちが残っていると吸引力が落ちるため、SFRC舗装はできるだけ平滑に仕上げる必要がある。


真空吸引技術

阪神高速道路湾岸線の実橋を使って試験施工、追跡調査を実施
 常温時はしっかりと接着し、撤去は24hで全行程の完了を確認

 同社では技術は確立したものの、実現場での適用性を確認するために、2019年11月下旬のリニューアル工事期間中に阪神高速道路が管理する湾岸線の実橋を使って試験施工した。前述のとおり、鋼床版面には平滑部とボルト接合部が存在するが、同技術は,両部に対応した工法であり、その有効性を実構造物で検証するため、平滑部とボルト接合部を備えた片側3車線の第1走行車線2径間分の一部に施工した。両径間とも1982年の供用で、鋼床版厚さは12 mmであった。


試験施工は湾岸線で行った/1.5年後の追跡調査

 解体性接着材は、両径間とも第1走行車線の左わだち部に施工した。施工1. 5年後、3年後および5年後に鋼床版加温前後の引張接着強度試験を行い、解体性接着材の耐久性および機能性(易はく離性)の評価が実施できるよう、1径間を3工区に分け、それぞれを1. 5年後,3年後および5年後の追跡調査用とした。施工場所の橋軸直角方向における寸法は、用いるIH加熱装置の鋼床版加温可能範囲に合わせて460 mmとした。橋軸方向については、加温後の真空輸送技術による剥ぎ取り試験が1工区あたり3ブロック実施できるよう、また、建研式引張接着試験が加温前後で計6カ所実施できるよう、2,880 mmとした。

 そして1年半後の2021年5月、追跡調査を行った。
 調査はまず、表層アスファルト舗装を撤去し、SFRC舗装上面の研掃を行った。これらはIHによる熱伝導および最後に用いる真空輸送技術の施工を確実に行うためである。次いで、アブレシブWJでSFRC舗装撤去範囲の周囲を切断し、SFRC舗装上面からIHを用いて鋼床版を加温した。鋼床版を120℃±10℃程度の温度域に加温すると、解体性接着材の機能性(易はく離性)が発現し、接合部の接着力を低下させることができた。また、同じように解体性接着材を用いた鋼床版とSFRC舗装の界面についてIHを用いる前に引張接着強度を確認したところ、常温時の強度は1.0N/mm2以上あることが確認できた。


アブレシブWJの施工状況(左)/切断後の状況(中)/ボルト部(右)

IH式加熱による施工状況

鋼床版を120℃±10℃程度の温度域に加温すると、解体性接着材の易はく離性が発現し、接合部の接着力を低下させることができた

 最後に真空輸送技術は、VACUWORKDS社(米国)の保有する機械を阪神高速道路仕様に小さくカスタマイズしたものを用いて、吸引して持ち上げて撤去した。平坦部・ボルト接合部ともSFRC舗装が残ることなくきれいに撤去できることが確認できた.規制設置からSFRC舗装撤去までは12時間、SFRC舗装再打設から3時間の養生を経て、24時間程度で全ての工程が完了出来ることを確認した。


真空吸引技術による剥取試験状況/うまくいけばぽこっと外れる(右写真)

 今後は、本適用に向け、解体性接着材の長期耐久性確認のため、輪荷重走行試験を実施する方針だ。

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