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昼夜問わず点検業務が可能に 損傷箇所抽出の的中率が約2倍に向上

NEXCO西日本・西日本高速道路エンジニアリング四国 偏光フィルターを採用した赤外線カメラを実用化

公開日:2022.11.17

 NEXCO西日本と西日本高速道路エンジニアリング四国は、赤外線カメラを用いてコンクリート構造物の損傷を抽出する「Jシステム」において、偏光フィルターを採用した赤外線カメラを実用化した。現在、四国地方の点検業務で部分的に活用されている。
 同カメラは地表面などからの熱反射の影響を除去できることから、損傷箇所(浮き・剥離)抽出の的中率が約2倍向上することと、昼夜問わず赤外線調査が可能になることが特徴だ。


現行のレンズを装着したカメラ(左)と偏光フィルター内臓レンズを装着したカメラ(右)(NEXCO西日本提供。以下、同)

 Jシステムは、異常(損傷)部と健全部の熱の伝わり方の違いにより生じたコンクリート表面の特異な温度差を赤外線カメラにより可視化し、損傷部を抽出するシステム。ただ、日中は構造物のコンクリート表面が地表面などからの熱を反射して、その熱が赤外線カメラの撮影画像に映り込み損傷部の抽出が困難となっていた。そのため、Jシステムの使用は夜間に限定されるという課題があった。

 この課題を解決したのが、西日本高速道路エンジニアリング四国が開発・製品化した偏光フィルターを内蔵した赤外線カメラ専用レンズだ。偏光フィルターにより昼間でも点検が可能になるとともに、同社が蓄積してきた画像処理と統計的処理技術を用いることにより高精度な熱画像を取得できるようになった。これにより、損傷箇所抽出の的中率が従来(夜間点検時)の24%から46%に向上した。また、夜間よりも昼間のほうが調査に適した(構造物の温度差が出やすい)時間帯が長いため、昼間の調査が可能となることで、その時間分効率化が図られるとともに、昼間は周辺の視認性も高く点検員の作業効率も上がることになる。これらのことから、調査時において1.2倍の効率化を図ることができた。また、的中率も約2倍向上しているので、損傷箇所の抽出対象が半分程度となり、解析に必要な時間も半分程度で済み、解析時でも2倍の効率化を実現している。


昼間の点検作業が可能になり、調査時と解析時の効率が向上

 同レンズは、現行のJシステムで使用している赤外線カメラのレンズと交換して使用できる。撮影については、同システムを利用できる者であればマニュアルを見れば対応できるものになっているとのことだ。12月には偏光フィルター内臓レンズの市場展開も予定している。
 現在、一般的な赤外線カメラ(非冷却型汎用カメラ)を使用した偏光フィルター内臓の小型赤外線カメラの開発を進めていて、ドローンに搭載することによりJシステムのさらなる適用拡大と業務効率化、コスト削減を目指していく。

*的中率:赤外線カメラによる点検の「打音検査の抽出」箇所数に占める、実構造物の「浮き・剥離」箇所数の割合

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