道路構造物ジャーナルNET

橋長61.2mの鋼単純上路式トラス橋

岩手県 国道395号猿越橋を制震・免震的に耐震補強

公開日:2022.11.17

 岩手県県北広域振興局土木部二戸土木センターがリニューアル工事を進めている国道395号猿越橋は、耐震補強および床版取替工事を進めている。同橋は岩手県九戸郡軽米町の猿越峠付近に、昭和39年道路橋設計示方書に拠り1972年に供用された橋長61.2m、幅員7.5m(有効幅員6.5m)の鋼単純上路式トラス橋(非合成)である。下部工は重力式橋台で直接基礎を採用している。長年にわたる凍結防止剤散布に伴う塩害、ASR、凍害などにより主構やトラス、下部工や床版など様々な部位が広範な損傷を招いている。耐震的にも照査した結果、現道路橋示方書の要求性能に不足している部分もあったことから、2021年度から2年間かけてリニューアル工事を行っているものだ。その現場を取材したものを2回に分けて詳報する。(井手迫瑞樹)


耐震補強前の猿越橋/同橋一般図(岩手県提供、以下注釈なきは同)

橋台はASRによる損傷の疑い
 L2地震時の地震力に対して両端部が持たない状況

 同橋は、2003年には3種ケレンでの塗装塗替え、07年には落橋防止構造、変位制限装置、段差防止構造、A1、A2のRC縁端拡幅、09年には防護柵の取替などを行っている。
 11年度の前々回の定期点検では、主桁および支承がC、床版および橋台がB判定であった。しかし5年後の16年度の点検では、主桁および支承がC2、床版がE1、橋台がC1と判定されており、劣化が進展している事態であることが判明した。


主桁の損傷状況

支承、床版、橋台部の損傷状況

 具体的には、主構・トラスについては伸縮装置が排水型であることから、端部に層状剥離を伴う腐食が発生しており、凍結防止剤の散布によって、さらに腐食の振興が懸念されることからC2判定とした。また、支承部及び端部対傾構近傍の腐食は著しい状況にあった。また、橋台はASRによる損傷が疑われる状況にあった。一方、L2地震時の地震力に対して両端部が持たないことが分かったことから、塗装塗替えや免震および制震的な補強を行うことにした。

端部対傾構を座屈拘束ブレースに変えて制震的補強
 支承は支承をピンローラー支承から免震支承に交換

 塗装塗替えは20年度に全径間をRc-1相当で塗り替えている。後工事で床版の取替工があり、上塗り塗装を損傷させる可能性があるため、本工事においては、更新する部材をジンクリッチペイントによる下塗り塗装(架設材含め全面積558.63m2)までとすることで防食処理した。次いで、制震および免震的補強だが、これは支承をピンローラー支承から免震支承(東京ファブリック工業)、端部対傾構を座屈拘束ブレース(SUB、横河NSエンジニアリング)を用いた。また端部下横支材には当て板補強を施し、端部下横構では型鋼材CT 142x200x8x8の断面をBCT 144x204x8x8に更新した。


免震支承および制震材を用いて地震対策を行った

既設斜材の撤去及び座屈拘束ブレースの取付状況

座屈拘束ブレースの取付完了状況

 トラス橋の制震および免震的補強で施工上の難所は、支承の取替である。ジャッキアップの際、既存構造では格点部やトラス斜材が持たなくなる可能性があるためだ。猿越橋では、解析の結果、通常の手法では斜材に変形が生じる可能性があったことから、仮設の斜材を上下に杖のように入れて補強し、さらにジャッキを置くRC縁端拡幅部を増し打ち補強して強度を確保した上で、1支承線に200tジャッキを4箇所(計800t)配置して5mmジャッキアップし、免震支承に交換した。交換後、仮設支持材は撤去したがその端部にあるブラケットは、再度の支承取替の際に打替えるように残置した。


(左図)変更前ジャッキアップ変形予想図(左は補強材を入れ込んだ図、右は予想される変形図)
(右図)左図は変更前ジャッキアップ変形解析、右図は変更後解析状況

左から既設支承の撤去、新設支承の吊りこみ、新設支承の設置状況

新設支承の設置完了状況

ASR対策にプロコンガードシステムS工法を採用

 橋台部は、詳細なASR分析を行った結果、粗骨材の安山岩および細骨材の安山岩・流紋岩、安山岩質溶結凝灰岩にASR反応が見つかり、劣化進行度は加速期~劣化期に相当することが推定された。また、A2に比べてA1側の方が、コンクリート試料の膨張性が高いこと、しかし両方ともに膨張性示していることため、今後も環境条件によってはASRが発生する可能性がある。


プロコンガードシステムS工法の施工状況

 そのため、補修工法としては、亜硝酸リチウムを用いたASR対策工法(プロコンガードシステムS工法)を用いて鉄筋防錆とアルカリシリカゲルを非膨張化することにより、ASR対策すると共に、床版取替時において伸縮装置の非排水化を行うことで塩分や雨水の侵入阻止を図ることにした。
 免震および制震的補強の設計は土木技研、施工は中央コーポレーション。一次下請はショーボンド建設など。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム