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地下水位が高い軟弱地盤であり、養老山地山麓による被圧水頭が実にGL+4mに達する

国交省岐阜国道 東海環状自動車道で回転杭を91基、1,363本採用

公開日:2022.09.16

 国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所と中日本高速道路名古屋支社岐阜工事事務所が工事を進めている、東海環状自動車道の岐阜県西南部の工事が佳境を迎えている。岐阜県西部における東海環状自動車道は現在大野神戸(ごうど)IC~養老ICまでが暫定2車線で供用されており、現在は山県IC~大野神戸IC間18.5kmと養老IC~岐阜・三重県境9kmの暫定2車線整備を進めている。
 とりわけ養老IC以南の水田地帯は、地下水位が高い軟弱地盤であり、養老山地山麓による被圧水頭が実にGL+4mに達する地域である。
こうした状況から通常の杭基礎では施工が難しく、多くの橋脚で回転杭工法を採用している。採用基数は91基、杭径別ではφ1,000mmを16基436本、φ1,200mmを75基927本で施工している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


被圧水頭の調査(岐阜国道事務所提供、以下注釈無きは同)

養老ICから岐阜・三重県堺 2026年度の開通を目指し工事が進む
 鋼管杭の最長は55m 20m後半から30m前半が主

 記者が取材したのは、養老IC~県境付近の9kmの区間である。同区間は2026年度の開通を目指し、橋梁下部工、上部工及び地盤改良を含む盛土工事を進めている。施工予定箇所を含め、周囲はほぼすべてが水田であり、津屋川や稲作のための水路も幾条にも伝っている。さらに地下水位がGL-1.0m以浅に測定されているので極めて高い。さらには滞水層であるAts層、G1g層で地下水が被圧状態であることが確認されている。とりわけ基礎の支持層であるGL-30m以深にあるG1g層の被圧水頭は実にGL+4mに達する。しかし、支持層までは、N値が1未満のごく軟弱な粘性土が厚く堆積しているため、同層を支持層とせざるを得ない。

地盤状況図

 施工には、こうした被圧地下水と軟弱地盤下の橋脚基礎工に実績を有する回転杭工法を採用した。回転杭工法は、先端に回転貫入を容易にする翼形状を設けており、この翼が大きな先端支持力を得る役割を果たしている。低振動、低騒音、無排土施工で環境への負荷が少ない基礎杭である。また場所打ち杭や鋼管ソイルセメント杭などセメント・コンクリートを用いる杭基礎工法は、被圧地下水への適用性や排土が多くなるため水田環境に影響を与える可能性を考えると難しい。バイブロハンマ工法を用いた鋼管杭工法は、N値50以上の礫径が予想されるため、適用ができないと判断した。

基礎工法比較

 施工は杭長を約10~12mごとに分割して打ち込み、継手は全周溶接構造とした。杭長20m後半から30m前半が主だが、40m台のものも少なからずあり、最長は55.0m((仮称)大跡高架橋P28橋脚)に達している。


回転杭工法に用いる鋼管/回転杭工法先端の羽根(井手迫瑞樹撮影)

30m程度の杭長であれば半日ほどで1本の施工が完了
 中掘り工法などと比べると、排土がほとんどない

 施工方法は、ほぼオールケーシングと同じやり方でよい。
 円状のチャッキング装置の中に先端に翼状の刃のついた鋼管杭を通す。次いでチャッキング装置と鋼管杭の隙間をスペーサーで埋める。最後にチャッキング装置の全周を回転させ杭を回転圧入していく。鋼管は10~12mごとに溶接で継ぎ足していく。


鋼管の建込み及びセッティング(井手迫瑞樹撮影)

スペーサーで固定(井手迫瑞樹撮影)

 回転圧入のストロークは1回750mm程度で、30m程度の杭長であれば半日ほどで1本の施工が完了する。
 施工上、留意する点は杭芯位置の的確な測量と、施工時の立て起こしの確認をきちんと行うこと。ただし、施工の際も「中掘り工法などと比べると、排土がほとんどなく施工箇所周りの汚れなども少ないので杭施工がきれいにできる」(ジャパンパイル(東海環状南大跡南高架橋下部工事の施工一次下請))、「使用する重機がコンパクトで済み、排土発生量も少ないため、今回のようなヤードが狭い現場でも十分対応できる」(岐建(同工事元請))などの利点を発揮できる。反面、同現場を含む養老IC~岐阜・三重県境は風が強いため、継手溶接の際の養生には細心の注意が必要だ。


(左、中)回転杭の施工状況(つばさ杭)(井手迫瑞樹撮影をGifアニメ化)/(右)継手溶接状況

降雨後は数日たっても水がわき出てくる
 盛土区間はペーパードレーン工法、深層混合処理で対応

 杭施工後の頂版コンクリートや橋脚コンクリート打設で苦労しているのも被圧地下水だ。周囲を矢板で囲っているものの、被圧水は多く、とりわけ降雨後は数日たっても水がわき出てくる。そのため24時間排水ポンプを稼働させ、湧水が比較的収まったのちにコンクリート打設をする必要がある。同地の施工会社の一部は、「施工箇所どころか隣接する道路が水没したこともあると付近の方に聞いた。コンクリート打設後は良いが、打設前の鉄筋が露出した状態で現場が水没するのが最悪の状況だ。施工ステップの際はできるだけ早く天候を見極めると共に、いったん施工したらできるだけ早く、手際よくコンクリート打設を完成させたい」(前出の施工会社)としている。


底版コンクリート打設状況(過年度)

橋脚躯体工(過年度)

雨が降ると水が溜まりやすく、地下水も豊富であることから、排水ポンプをフル稼働させないと次工程に移れない

 

 同地では一部で盛土区間もあるが、それらはプレロードして沈下が収まった時点で、内側はペーパードレーン工法、外側は深層混合処理を施し、盛土施工を行った。


ペーパードレーン工法

地盤改良工の状況

 

 設計は協和設計、中日本建設コンサルタント、開発虎ノ門コンサルタント、八千代エンジニヤリング、大日コンサルタント、エイト日本技術開発、中央コンサルタンツ。元請は岐建、杉山建設、三建産業、日東工業、西濃建設、佐竹組、TUCHIYA、徳倉建設、大日本土木、矢作建設工業、新井組、清水建設、大有建設、市川工務店、神野産業、若築建設、松野組など。一次下請はジャパンパイル、菱建基礎など。回転杭工法の鋼管製作はJFEスチール、日本製鉄。



(上段)施工完了箇所と今から基礎工や地盤改良を行っている箇所もあれば/(下段)すでに上部工が進んでいる区間もある

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