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兵庫県道路公社 供用後20年程度しか経過していない橋梁で床版上面の土砂化や鉄筋露出が発生

播但連絡道路 床版打替え・複合床版防水工などを施工

公開日:2022.06.30

 兵庫県道路公社では、同公社が所管する播但連絡道路(姫路JCT~和田山IC間65.1km)の朝来市内にある円山そり橋(橋長46m、幅員10.55m、床版面積483㎡)と羽渕橋(橋長86.5m、幅員10.56~16.07m、同992㎡)について床版の補修及び複合床版防水の施工、舗装の打ち替えを行った。両橋は、同道路で一番新しく供用された区間(2000年5月供用)にも関わらず、床版上面の一部土砂化、床版下面には貫通ひび割れやエフロレッセンスが生じており、羽渕橋では部分的に床版打替を行わなければならない箇所もあった。(井手迫瑞樹)

床版上面からの鉄筋の腐食劣化 東北道並みの凍結防止剤散布量
 全断面をはつって修復した箇所も リフレモルセットSF

 両橋の床版構造はRCで、設計床版厚は220mmと通常の床版と相違ない。しかし、供用後20年程度しか経過していないにも関わらず、舗装にわだちぼれやクラック、ポットホールが生じ、部分的な修復を繰り返す状況となっており、過年度の夜間通行止め時に舗装の部分掘削で調査したところ、床版上面の土砂化や鉄筋露出が発生していた。そのため、今回の全面通行止めを伴う大規模修繕工事(5月16~21日)において、床版の部分打ち替え、複合防水の施工を行った。


損傷状況(場所によっては全断面修復を行わなくてはいけない箇所も)

 損傷の面で特徴的なのは塩害の影響とみられる床版上面からの鉄筋の腐食劣化だ。凍結防止剤は「東北道や北陸道並みの散布量」(同公社)であり、実際にコアなどを抜いて測定したところ、発錆限界値を超える塩分が認められたことから、鉄筋腐食が生じやすい環境になっていた。さらに、上面の被りは薄いが、床版厚は薄くなっておらず、むしろ「建設時の床版施工において上面コンクリートの被りが小さい箇所が弱点になった可能性がある」(同)。また、防水層は施工されていたものの、局所的には有効に働いていたとは言える状況になかった。今回、鉄筋腐食の著しい箇所はハツリを行い、ポリマーセメントモルタルによる断面修復(リフレモルセットSF)を行った。


損傷部の断面修復状況(左)カッター施工、(中)はつり状況、(右)はつり後鉄筋ケレンが完了した状況

補修用プライマー施工状況/モルタル(リフレモルセットSF)充填状況/断面修復完了状況

 とりわけ損傷がひどい羽渕橋の一部についてはブレーカーで全断面をはつり超早強コンクリート(24N/mm2)による全断面打替を行った。幸いなことに鉄筋は一部に断面欠損が生じていたものの損傷は小さく、鉄筋を再配筋することなく、断面修復するだけで対応できた(損傷原因は調査中)。


全断面修復を行わなくてはいけない箇所もあった

全断面修復施工状況

 床版防水はアイゾールテクニカと阪神高速道路が共同開発し、同高速道路や地方自治体などで実績のある複合床版防水『Hi-SPECシール工法(KSタイプ)』(以下、『KS』)を採用している。

Hi-SPECシール工法(KSタイプ)を床版防水で使用
 カットバックが生じないため、安定した防水工を実現

 『KS』は、水性エポキシ樹脂と脂肪族ポリアミンからなるHI-SPECシールLを塗布し、養生後にHI-SPECシールLと早強ポルトランドセメントと結晶性シリカ(フライアッシュ)を主材とするHI-SPECシールPを混合したペースト状液体を塗布する二層塗り構成だ。『KS』はコンクリートのひび割れに浸透し充填することが可能である。1層目のHI-SPECシールLが微細なひび割れ(0.05~0.15㎜程度)、2層目のHI-SPECシールL+Pが比較的大きなひび割れ(0.15~1mm程度)を補修できる。HI-SPECシールL+P は既設床版表面に2mm幅の保護膜を形成することが可能だ。


複合床版防水の施工状況①(HI-SPECシールL塗布状況)

複合床版防水の施工状況②(HI-SPECシールL+P施工状況)

複合床版防水の施工状況③(HI-SPECシールL+P)

アスファルト系塗膜防水工の施工

 また、『KS』のHi-SPECシールLは有機溶剤系ではなく、完全無溶剤の水系エポキシ樹脂を用いているため、床版表面に旧アスファルト防水材などが残っていてもカットバック(有機樹脂の溶解、ここではアスファルト樹脂)が生じないため、そのまま塗布しても安定した防水工を実現でき、かつHI-SPECシールL+Pは切削下地の不陸を修正する厚みを有しているため、複合床版防水のアスファルト樹脂塗膜系防水層を比較的均一に塗布できる。さらに大小のひび割れに浸透して補修できるため、床版上面の耐久性を大きく向上させることが出来る。
 施工は、床版上面の断面修復、下地清掃を行った後、1層目にHI-SPECシールL(KSタイプ)を塗布(0.25㎏/㎡)、2層目にHI-SPECシールL (KSタイプ)+Pを塗布(0.8㎏/㎡)し、最後にアスファルト系塗膜防水を施し、さらに舗装を敷設することで完成させた。工程ごとの養生時間は1時間~2時間程度しかいらず、アスファルト塗膜系防水から舗装敷設までは養生を必要としなかった。
 同公社では、一連の調査結果と補修方法をとりまとめた上で、効果的な維持修繕に向けた取組を進めていくとしている。

 元請は松本組。床版補修及び防水の一次下請は構造メンテ。床版防水の二次下請は雄交

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