道路構造物ジャーナルNET

同社で首都圏発となる床版取替工事

NEXCO東日本 横浜横須賀道路釜利谷第二高架橋(上下線)の床版取替工事が進捗

公開日:2022.06.30

 東日本高速道路関東支社京浜管理事務所は、同社が管轄する首都圏の高速道路で初めてとなる横浜横須賀道路釜利谷第二高架橋(上下線)の床版取替工事に着手した。同橋は上下線とも橋長140mの鋼3径間連続4主鈑桁橋で1979年12月6日に供用され、1997年の拡幅により現在の橋梁形式である鋼3径間連続6主鈑桁橋となっている。建設当初の床版は供用後42年が経過しており、疲労を主因とした床版損傷が著しいことから今回取替に至ったもの。プレキャストPC床版は上下線合計244枚、約4,100㎡架設する予定。交通量に配慮して床版取替は3回に分けて実施する(下図参照、NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

3万台強の交通量 大型車混入率は10%前後
 拡幅部の床版厚は350mmに達している個所も 05年まで床版防水工は未設置

 釜利谷第二高架橋は、横浜横須賀道路の釜利谷JCT~朝比奈IC間に位置しており、厳密には釜利谷JCTのすぐ南にある。1日交通量は上下線とも平日は3万台強で大型車混入率は上りが10.6%、下りが9.2%、休日は3.3万台で同6.8%、5.6%という比較的交通量の多い路線である。


位置図

 こうした特性のため、床版の損傷は疲労が卓越している。同橋の桁間隔は建設時の4主桁に関しては2.7m、拡幅部2.15mとなっている。拡幅は平成9年度に両外側に主桁を2本増設する形で行った。その際、既設床版張り出し部と新しく拡幅した桁の床版と連結部付近に主桁とは別に縦桁を増設しているが、これは供用路線を止めずに床版を現場打ちするため、床版連結部付近の型枠の振動を抑制し、施工時の品質を確保するために設けたものと推定される。この縦桁があることなどから拡幅部の床版は、ハンチがしっかりとつけられず床版厚は350mmに達する箇所もあった。

 また2005年度(平成17年度)に拡幅部を含めた床版部を40mmほど増厚して床版防水も施しているが、それまで床版防水は未施工であったことや累積疲労から既設床版の下面には亀甲状のクラックが生じており、水染みも出ている。エフロレッセンスの析出もあり、過去2018年度(平成30年度)の点検では国土交通省の道路橋定期点検要領に定められている床版の健全性はⅢと判定され取替えに至った。


床版の損傷状況(既設床版の下面には亀甲状のクラックが生じており、水染みも出ている。エフロレッセンスの析出も見られる)


増厚床版の再劣化状況(井手迫瑞樹撮影)

 橋梁の線形的にはL側にはらむ形でA(クロソイドパラメーター)=300mの曲線となっている。勾配はA1(東京側)のL側が最高点、A2のR側近傍を最低点として縦断が最大2%、横断が最大5%の勾配が生じており、A2側が反向点となる形状にある。このような少し複雑な形状を有しているため、取替に用いるプレキャストPC床版の製作には、こうした勾配に合わせた工夫が必要となる。

 

全体一般図および平面図

縦断図


桁下状況

上下とも幅員分割施工 規制を4段階に分けて施工
 上下線の桁同士を対傾構で連結して仮設縦桁を設置

 床版の取替は、交通渋滞を避けるため、上下線とも2車線を確保する必要があり、上下とも幅員分割施工となる。本現場では最大規制延長を800mとし、規制を4段階に分けて施工する手法を取る予定だ。
 第一ステップは、上下線ともに2車線を確保するために、中分のガードレールを撤去し、上下線をつなぐ工事を行う。上下線はセパレート構造であるが、張出床版端部どうしの離隔は僅か50mmしか離れていない。そのため本線上から吊り足場(SKパネル)を設置して、上下線の桁同士を対傾構で連結させ、その上に同部分には通常かからない交通荷重を支えるための仮設縦桁を設置する。次いでガードレールを撤去して、端部の地覆を削って平らにしたうえで上下線の床版同士の隙間にアスファルト加熱充填合材「ファルコンHR」を充填して一体化させる。仮設縦桁と既設床版の間はエポキシ樹脂を塗布して一体化するが、床版取替時に剥がしやすくするため、仮設縦桁の上フランジ上面にふっ素樹脂をコーティングした。


ロードジッパーにより中央部に規制帯を作る(井手迫瑞樹撮影)

夜間施工前のロードジッパーの運用状況


連結対傾構の取付状況

ファルコンHR施工状況

ファルコンHRを充填して上下線を一体化(井手迫瑞樹撮影)

床版の撤去・架設 中央から端部へ進む形で施工 ロードジッパーを活用
 新設の半断面パネルは壁高欄までプレキャスト化

 第二ステップでは、上り線の走行車線側に規制帯を設けて、床版を撤去・架設していく。撤去架設は、2台の150tオールテレーンクレーンを用いて中央から端部へ進む形で施工していく。まず昼間にワイヤーソーやロードカッターで橋軸方向2m×橋軸直角方向6mと、同2m×3mに分割切断した既設床版をクレーンで後ろに仮置きしておく。次いで夜間はロードジッパーを用いて、仮設防護柵を動かし、さらに1車線規制(夜間は上り側1車線となる)した上で、15t積トラックを運用して仮置きした既設床版をクレーンでトラックに積んで場外に搬出した後、同様にトラックで運ばれてきた半断面床版パネル(1枚当たり2.3m×9.5m)を架設していく。1日当たりの施工効率は2台で6枚程度。これは「規制帯の狭さがあり、150tオールテレーンクレーンのアウトリガーでは最大限延ばすことが出来るが、それ以上の大きさのクレーンではアウトリガーを最大に伸ばすことが出来ず、どうしても作業半径が短くなり、盛り替えの数が多くなるため」(元請のJFEエンジニアリング)ということだ。新設の半断面パネルは、壁高欄までプレキャスト化した状態で現場に搬入するため、接合部以外の現場施工の手間がいらない。その反面、本現場は微妙にRを有し、さらに縦横断勾配も少なからずあることから、高欄の通り(高欄上面のライン)がずれないように、工場では通りを慎重に確認しながらプレキャストPC床版および壁高欄を製作した。


床版の撤去状況

既設の縦桁が踏ん張ってしまう 図面にない鉄筋も多数存在
 既設縦桁の上フランジ下面を先行して水平切断

 さて、第二ステップは、切断時に既設の縦桁が「踏ん張ってしまう」問題が生じた。前述したように床版厚が350mm程度に達することに加え、拡幅部床版のハンチ筋がかぶりギリギリのところにまで配置されているところもあり、図面にない鉄筋も多数存在したことから鉛直カッターでの切断が非常に難航したのだ。


図面にない鉄筋も多数存在(井手迫瑞樹撮影)

 さらには既設縦桁の存在である。これを一緒に引きはがそうとすれば、センターホールジャッキの反力を配置している主桁に大きな力をかけざるを得なかった。また、縦桁は主桁と横桁でつながる形で配置されているが、その横桁間隔(約5.3~5.4m)の前半部の床版を撤去した後に、後半部の床版を撤去しようとするとバネのように縦桁がはねてしまう可能性がある。そのため、その後半部分の縦桁は上フランジ下面を先行して水平切断することで、床版撤去時に引きはがしによって縦桁に伝わる力を無くしている。



既設補強桁の切断(上段中、右写真のみ井手迫瑞樹撮影)

上フランジ下面を切断することによって跳ね上がりを防止する

床版架設状況①(井手迫瑞樹撮影)

床版架設状況②(井手迫瑞樹撮影)

間詰コンクリートの打設状況

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム