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空気量に依存せず、空気量の少ないコンクリートにおいても高い凍結融解抵抗性を付与

太平洋セメント・太平洋マテリアル 凍結融解抵抗性を向上させる液体混和剤「太平洋パラテクト」を共同で開発

公開日:2022.03.31

 太平洋セメントと太平洋マテリアルは、コンクリートの凍結融解抵抗性を向上させる液体混和剤「太平洋パラテクト」を共同で開発した。太平洋パラテクト(以下、パラテクトと称す)は、コンクリートに混和することで、強度に影響を及ぼすことなく(図-1)、空気量の少ないコンクリートであっても優れた凍結融解抵抗性を付与できる。

太平洋パラテクト 主成分はパラフィン(固形分30%)、標準添加量は4.5kg/m3

凍結融解300サイクルで相対動弾性係数が90%以上を維持
 スケーリング量も著しく低減 凍害と塩害の複合劣化の対策にも効果的

 コンクリートの凍結融解抵抗性を向上させる最も効果的な方法は、エントレインドエアの導入であり、JIS A 5308では、凍結融解抵抗性等の観点から普通コンクリートの空気量を4.5±1.5%と定めている。また、東北地方では、凍結防止剤が散布される環境下における凍結融解(スケーリング)の対策として、コンクリート練上り直後の目標空気量を6.0%以上に推奨するガイドラインやマニュアルが整備されている。
 その一方で、上述のように練上り直後に所定の空気量が確保できた場合においても、施工時のポンプ圧送やバイブレータによる振動締固めにより、打設時の空気量は1~2%程度減少する場合が多い。また、6.0%以上の空気の導入は圧縮強度の低下や乾燥収縮率の増加を招くほか、レディーミクストコンクリート工場で製造する際に、混和剤量の調整が難しいことなどが課題として挙げられている。
 このような背景に鑑みて、空気量に依存せず、空気量の少ないコンクリートにおいても高い凍結融解抵抗性を付与できる液体混和剤「太平洋パラテクト」の開発に至った。

 空気量を2.0%程度とした供試体を用いて行った凍結融解試験(JIS A1148 A法)において、パラテクトを未混和としたコンクリートの相対動弾性係数は100~150サイクル間において60%を下回っている。それに対して、パラテクトを混和したコンクリートは凍結融解300サイクルで相対動弾性係数が90%以上を維持しており優れた凍結融解抵抗性を有している(図-2)。更には、凍結防止剤散布環境下を模擬して、塩水を用いて実施した凍結融解(スケーリング)試験においても、パラテクトの混和によってスケーリング量が著しく低減されており、凍害と塩害の複合劣化の対策にも効果的であることがわかる(図-3)。


 その他の効果として、パラテクトの混和は防水性が向上する特長も有するほか(図-4)、太平洋マテリアルの既存商品である太平洋ラスナイン(主成分:亜硝酸カルシウム)を併用することで防錆効果の付与も可能だ(表-1)。

ベルトコンベア用橋梁の壁高欄で検証進める
 実構造物および供試体の暴露実験も続けて行っていく

 既に、パラテクトの実構造物への適用性についても検証している。対象は、岩手県にある太平洋セメント大船渡鉱業所より大船渡工場へ石灰石を運搬するためのベルトコンベア用橋梁の壁高欄部分であり、積雪寒冷地に位置している(図-5)。打設箇所は、日射などの環境条件を同一とするため、橋梁の中心を境として東側にパラテクトを混和していない普通コンクリートを、鉱業所側西側にパラテクトを混和したコンクリートを打設した。

 施工性は、いずれの配合においても良好であり、打設は問題なく順調に行われた(表-2、写真-1~4)。また、打設時に採取した供試体についても凍結融解試験(JIS A 1148)を実施した結果、パラテクト混和による耐凍害性の効果が確認された。引続き、実構造物および現地に暴露している供試体の追跡調査を行う予定である(写真-5)。



写真-1 フレッシュ性状/写真-2 打設状況/写真-3 施工終了後

写真-4 橋梁外観/写真-5 暴露試験状況

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