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中床版の損傷が大きく目立つ

首都高速道路 羽田トンネルのダクト内部を公開

公開日:2022.03.25

 首都高速道路は、「首都高速道路の大規模更新・修繕及び機能強化に関する技術検討委員会中間とりまとめ」でも更新すべき構造物の一つとして挙げられていた首都高速1号羽田線羽田トンネルの現場を公開した。同トンネルは、1964年8月に供用された全長300mの首都高で初めて建設された海底トンネル。国内の海底トンネルとしても関門国道トンネルに次いで古い。開削トンネル部の継ぎ目部分からの漏水や、天井面のひび割れ、排水樋からの漏水、側壁部の浮き、鉄筋露出など多岐にわたる損傷が目立っている。とりわけ損傷が進んでいるのが開削部(延長200m)のみにある道路部とダクト部を分ける箇所にある厚さ300mm、幅約8.6m×2(上下線)の中床版の損傷だ。全体の4割において上鉄筋裏面まで、閾値(1.9kg/m2)以上の塩化物イオンが浸透しており、同部分は床版を造り変える更新工事を行う予定だ。更新工事は2024年度から事業化する方針であり、今後1年程度で対策方法の詳細を詰める。また、更新工事を行う際は、上下いずれかの車線を全面通行規制して施工しなければならないが、同トンネルは1日断面交通量10万台であり、羽田可動橋を再利用などしてう回路の確保に努める。(井手迫瑞樹)

羽田トンネルの構造概要(首都高速道路提供資料より抜粋)

羽田トンネル中床版 現在の案では4割造り変え、6割補修
 1.5mメッシュで小径コアを抜き塩化物イオン量を測定して対策判定

 羽田トンネルは供用後57年が経過した橋梁であり、これまでも剥落防止や天井版の撤去(ケーソン部)を行ってきた。直近では2017年に塩害対策や剥落防止、炭素繊維補強、コンクリート塗装、タイルパネル設置などの比較的大規模な補修を施している。しかし依然として、構造目地の止水性能の低下により海水を含む漏水が頻繁に発生し、2016年度は4か月に1回の緊急車線規制により補修していた頻度が21年度には1か月に1回と増加傾向にある。また、中床版部などでは、塩害によるコンクリートの浮き・剥離やひび割れ、鉄筋腐食および甚だしい箇所では鉄筋消失が生じており、もはや通常の修繕では性能が回復しえない箇所もあることから抜本的な更新として中床版を一部打ち替えることにしたものだ。

羽田トンネルの損傷状況(首都高速道路提供資料より抜粋)

補修履歴(同)

 中床版上のダクトは、もともとトンネル内に生じる排ガスを外に排出するため設けられたものであるが、自動車の環境性能向上によってそれは必要なくなり、現在は火災事故が起きた時の排煙機能として用いられている。一方で中床版は、開削トンネルの構造部材としての機能も有しており、ケーソン部で行ったような撤去はできない。

開削部の構造(首都高速道路提供資料より抜粋)

 中床版は、1.5mメッシュで小径コアを抜き塩化物イオン量を測定する方法により塩化物イオンの浸透深さを確認、その程度によって補修・更新方針を決めることを考えている。

 補修・更新の方法は今後有識者委員会での議論を経て決定されるとのことだが、案として以下の方法が検討されている。
 塩化物イオンの浸透範囲が表面のみと判断した損傷が軽微な約3割は、下面を炭素繊維シートで補強した後、上面の塩化物イオン浸透範囲を除去する。その後、樹脂モルタルで断面を復旧し、表面に防水塗装を施す。
 塩化物イオンの浸透範囲が鉄筋近傍まで達していると判断された損傷が中程度の約3割は、下面を炭素繊維シートで補強した後、上面の塩化物イオン浸透範囲と損傷した鉄筋を除去する。その後、新しい鉄筋と周囲の鉄筋を接続し、犠牲陽極材を設置して防錆剤を塗布した後、樹脂モルタルで断面を復旧し、表面に防水塗装を施す。
 塩化物イオンの浸透範囲が上鉄筋の裏面を超えて、中床版厚の半分程度まで浸透していると判断された最も損傷が大きい約4割については、全面的に造り替える。造り替えの際には防錆鉄筋を使用し、さらに防水塗装を施す。中床版はトンネルの構造部材でもあるため、造り替えの際は支保工を別途設置する必要があることから、長期間の通行止めが発生する。

ダクト部の高さは1.2mと低い(井手迫瑞樹撮影)

中床版部のひび割れや浮き剥離が生じている個所/同部の鉄筋が露出している個所/側壁部の損傷(井手迫瑞樹撮影)

毎分10lの塩分を含む水が漏出している個所もある/樋の漏出痕/中床版上面にある塩の結晶(井手迫瑞樹撮影)

腐食膨張の末、鉄筋が消失した箇所もある(井手迫瑞樹撮影)

3つの対策方法案(首都高速道路提供資料より抜粋)

う回路として羽田可動橋を活用することを検討
 上り線としての恒久化も検討

 羽田可動橋部の再利用
 羽田トンネルの近傍には現在使われていない羽田可動橋およびアプローチ道路が存在する。今回のトンネル更新に当たっては、同橋をう回路として再利用することを考えているが、サグによる渋滞を緩和するため、上り線として使用を恒久化することも検討している(その場合、羽田トンネルは下り線のみの運用となる)。そのため単純に再利用するのではなく、補強して拡幅する、あるいは現橋を撤去し、新橋に架け替えることも念頭に置く。

羽田可動橋を再利用するなどう回路確保もしなくてはならない

 記者の目
 現場で鉄筋が溶けて消失している状況を見せられ、改めて塩害が進行した箇所における酷さを感じた。中床版は補修、打替えを併用する案が検討されているが、長期的な損傷の進行などを考えると、全面通行止めを行うのであれば、全面積での床版造り変えもありなのではないか、と感じる。
 さらに、トンネルの補修・造り替えを行うためにう回路の橋を架けるのであれば、既存の羽田可動橋をどこまで撤去するのかも重要となる。東品川桟橋・鮫洲埋立部の更新事業では、既設橋基礎の残置が認められたため、事業がスムーズに進んだ。河川管理者との協議によるが、今回もそれが認められれば、スムーズな施工が期待できる。

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