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10m/sを超える強風、冬季の低温、2か月の工期

NEXCO西日本四国支社 「3つの課題」に対応した吉野川サンライズ大橋の防水・舗装工

公開日:2022.03.17

 NEXCO西日本四国支社徳島工事事務所が建設を進めている徳島南部自動車道徳島JCT~徳島沖洲IC間が2022年3月21日に開通する。開通日は「令和4年3月21日、すなわち『4、3、2、1』」と小気味良いカウントダウンのようである。その開通日に向けて急ピッチで施工していたのが、吉野川渡河部に位置する吉野川サンライズ大橋(橋長1696.5m)などの床版防水約23,000㎡と土工部も含めた舗装工約90,000㎡の施工だ。とりわけ、吉野川サンライズ大橋については、上部工の施工が難航を極めたため(既掲載記事参照)、舗装工事を短期間で施工する必要があり、約2か月で約17,000㎡の床版防水および舗装工事の施工を行った。その内容についてまとめた。(井手迫瑞樹)

防水層の主材を1回吹きで施工できる『レジテクトGS-M』工法を採用
 ターンテーブル車を用意して、橋梁内で方向転換

 NEXCO3社は、床版上面の防水層に対して、基本的に高性能床版防水、いわゆるグレードⅡを施している。本現場もそうであるが、とりわけ短期間での施工を求められたため、防水層の主材を1回吹きで施工できる、主材施工後の養生時間が殆ど必要ないことから『レジテクトGS-M』工法(以降「レジテクト」)を採用した。

『レジテクトGS-M』工法の吹き付け施工状況(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

 施工はまず、A2側500m、次いでA1側500m、最後に中央部700mが上部工から引き渡された。A2側は橋梁中央部の工事用車両が通行出来るよう、上下線を分割した施工になった。A2側とA1側の引き渡し日のタイムラグは約1か月、A1側と中央部のタイムラグは約1週間であったため、A2側は防水層から舗装までを単独で施工し、A1側と中央部は合わせて防水層を施工した後、舗装を施工する工程とした。限られた期間でかつ雨天等の荒天候時は施工ができないことも鑑み、夜間(22時まで)や土日祝の休日も施工をする工程を策定し、施工者全員が一丸となって労務体制を構築し取り組んだ。

 プレキャストセグメントPC桁の床版面であるため、床版上面の性状は良く、不陸はほとんどないため、表面研掃は全てライナックスにより研掃した。次いで床版用プライマーを塗布後、防水層を吹付け施工し、層間接着剤、舗装接着剤を塗布後、レベリング層を舗設していく。

床版防水施工詳細図

施工前の床版上面(左、井手迫瑞樹撮影)/ライナックス施工状況(左から2枚目)(NEXCO西日本提供)/
床版防水主材直上のプライマー塗布状況(井手迫瑞樹撮影)

 さて、本現場での施工に際して、対応しなくてはいけない最たるものは、気温と風である。冬季施工のため橋梁付近の外気温は低く、防水工や舗装を施工する床版の温度も低い傾向にある。さらに吉野川河口部の、殆ど海に面した箇所に建設されている橋であるため、強風が起こりやすく、穏やかな日でも平均風速4~5m/s、強風の日には同10m/s以上が吹き荒れる。そうした箇所で施工するため、防水層吹付け時の養生や、舗装施工時の保温対策(防水層との接着を担保する最低温度の維持)がとりわけ重要になる。
 レジテクトは、外気温5℃以上、床版表面温度0℃以上(~60℃以下)、表面含水率10%以下が求められる。冬季施工であり、強風下での施工は、温度低下が起きやすい。また雨や結露が床版上面に生じると施工条件を満たさない。そのため、床版表面の水を飛ばし、温度を上げるための熱風循環式ヒーターを装備したヒーター車を備え、床版面が設定した温度を下回った場合、ヒーター車を使って温度を確保した上で防水工の施工を行った。

ヒーター車
 防水工吹付け時の強風に対する養生は写真のような囲いを施している。その上で施工することで、飛散による材料ロスを減らすよう努力した。それでも一部は波打つような表面になるため、必要な膜厚についてはゲージなどを使って目視で確認した上で、次工程に移っている。


囲いを設けて施工

 本現場においてレベリング層の舗設温度管理は大きな課題である。防水層と舗装間の接着力を担保するには、140℃以上の初期転圧温度が必要となる。しかし、A2側でも500m、A1側・中央部に至っては1,200mの延長があり、この長い区間で舗設の温度を保つのは通常手段では難しい。舗設は約20km離れたプラント(出荷温度約175℃±10℃)からダンプで現場まで舗装材を運び、さらにダンプから小分けしてホッパーで受け止め、床版上面に卸して敷き均し、マカダムローラーを上下線に1台ずつ2台入れて転圧する。ダンプで現場まで運ぶ際は保温シートを上にかけて温度低下を防ぎ、さらに現場受入れ時の温度を170℃±10℃にするよう努めた。またダンプから舗設材を受け止めるホッパー内には、ジェットヒーターを装備しておき、レベリング層の初期転圧時の温度が140℃を下回らないようにして、防水層との接着力を確保した。こうした温度管理をリアルタイムに遠隔操作・確認できる手段として『KSSL』(Kajima Smrat Site Link)を活用している。

ジェットヒーター

 さらに現場では、ダンプの移動効率および安全性を確保するため、ターンテーブル車を用意して、橋梁内で方向転換できるようにしている。

ターンテーブル

 レベリング層はFB13、表層は高機能舗装Ⅱ型を用いている。層厚はいずれも40mm。舗装面の高さ確認でもITを取り入れた非接触かつ夜間でも確認可能な『ラインリーダーシステム』を活用している。
 上下線およびA2側と、中央部の境目には施工継目が発生するが、防水層、舗装、レベリング層の施工継目をずらすことで、雨水の橋梁床版面への流入を抑制している。

舗装基層施工状況(左、中)/表層施工状況(右)(NEXCO西日本提供)

 元請は鹿島道路、一次下請はアクトクリエイテイブトラスト。

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