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26~32%の汚損軽減効果

阪神高速技術 トンネル用火災検知器汚損防止装置『検知器ブレスくん』を開発

公開日:2022.02.25

 阪神高速技術 は、トンネル用火災検知器汚損防止装置『検知器ブレスくん』を開発した。この装置はトンネル内に設置されている火災検知器の煤塵による汚損を軽減するために開発したもので、車の進行方向上流側に広い吸気口と狭い排気口からなるダクトを設置し、その風圧で検知器に堆積した煤塵を吹き飛ばすもの。火災検知器は炎から発生する赤外線エネルギーを検知する輻射方式となっており、検知部である「目」(センサ)が85%以上汚損すると正常な検知が期待できなくなる。

検知器ブレスくん(左)と火災検知器

 阪神高速31号神戸山手線長田トンネル南行線の長田出口から湊川連絡路までの本線区間で1カ月間効果検証を実施した結果、装置を設置しない場合と比較して26~32%の汚損軽減効果が認められ、清掃周期を2倍近く長期化できることが実証された。阪神高速が管理している全てのトンネルで同様の効果が適用されることを想定した場合、あくまで試算レベルだが、火災検知器清掃のコストを1000万円以上コストダウンする可能性がある。

従来工法との汚損率の比較

 検知器ブレスくんの特徴は、汚損防止を軽減するための風圧確保と取り付けやすさである。風速4m/s(大型トラックが通過した際のトンネル壁面を吹く風の平均値)を想定したCFD(Computational Fluid Dynamics【数値流体】)解析の結果、装置を設置しない場合と比べ、1.5倍の風圧を確保することが見込まれた。


検知器ブレスくんの構造概要と効果

 形状はトンネルの延長方向を伝うケーブルを回避するため、壁面に沿いつつ浮くことのできる薄い板状の構造とした。また、ダクトも含めて全体が検知器のセンサより低い位置から検知器へ向かって上るような形状にすることでうまく風を伝えつつ、検知器の機能を妨げないよう配慮した。

 さらに、検知器との接合は火災検知器のボルトをいったん緩め、検知器ブレスくんの接合側端部のL字型のプレートを挿入してボルトを締めなおすだけで固定できるため特殊な治具や新たな穴あけなどを必要としない。
 維持管理面では、機械的な動きはほとんどないため疲労による損傷も起きにくく、素材はステンレス製のため防食性能にも優れている。ダクト形状は風圧を高めるため吸気口を広く、排気口を狭くしており、中に埃が溜まりにくくなっている。

 従来から火災検知器の汚損による検知不良を防止するため、高頻度の清掃は欠かせないものであったが、大規模工事による片側終日規制が長期化した場合に全く清掃でない場合や、阪神高速32号新神戸トンネルなど監査路がない場合には 大規模な本線規制が必要になるなど、良好な防災システムの維持管理に苦慮する場合も多くあった。また、長大都市トンネルで採用されている縦流換気の集中排気方式では、トンネル内の風速が低くなる坑口側の集中排気口付近が特に汚損しやすい区間となっており、清掃頻度が更に高くなることが課題となっていた。

 検知器ブレスくんは、これらの課題解決の一助として期待され、阪神高速道路のトンネルで、実装に向けた最終試験調整を実施している状況だ。同社では、阪神高速道路での最終試験調整を終え、全線に展開していくと同時に、同種の火災検知器を有する高速道路会社・公社、国交省などにも、積極的に提供を働き掛けていく方針だ。

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