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新工場のめっき槽は国内最大級の容積 AZの比率50%を目指す

横浜ガルバ― 「溶融亜鉛アルミニウム合金めっき(AZ)」対応新工場を建設

公開日:2022.01.27

 横浜ガルバーは、溶融亜鉛めっきと比べて耐食性に優れる「溶融亜鉛アルミニウム合金めっき(以下、AZ)」に対応した新しい工場の建設と生産体制の整備を進めている。工場はこの3月にも稼働予定で、稼働次第、AZめっきの受注を開始する。東日本ではAZめっきの能力を有する工場は初。新工場のめっき槽は国内最大級の容積(長さ8,500mm×幅1,500mm×深さ2,200mm、いずれも有効寸法)、天井クレーンの吊り能力は製品単重10t/Pといずれも国内最大級の能力を有する。また、めっき層および、亜鉛溶解するためのバーナー熱を伝える浸漬管もセラミック製であり少なくとも50年程度は更新せずに済み、エネルギー効率も省エネとして向上しカーボンニュートラルに向けた取り組みにもなる。従来の鉄製の釜では、合金反応による劣化のため、5~6年程度で更新(釜替え)をする必要があった。道路、電力、鉄道、建築など多様な分野の部材のめっき加工が可能で、操業開始直後の初年度(22年度)は生産量の10%程度をAZに置換える方針で、将来的には生産量に占めるAZの比率を50%程度まで引き上げる。(井手迫瑞樹、桑野祐滋)

AZ

電力会社の鉄塔新設や道路構造物関連の需要を掴む
 AZ設備を導入する新工場を作るタイミングは今しかない

 同社の本社工場は築約70年が経過して老朽化が進み、建屋や設備の更新を検討していた。周辺が商業地域や住宅地のため、現在地での工場の建て替えは難しく、同じ鶴見区内に新しく土地を2年前に取得し、新工場を建設することにした。新工場の敷地面積は現本社工場(2,900㎡)とほぼ同規模で、2021年1月下旬に着工し、これまでに建屋の建方が概ね完了。現在は、設備の据え付けなどを行っており、3月にも稼働開始予定だ。
 新工場にAZを採用したのは、近年JIS規格化(JIS H8643)もあってニーズが高まっていることが背景にある。とりわけ東日本地域における電力会社の鉄塔新設においては、至近でも大型東北案件の需要が見込まれるが、その際、従来の亜鉛めっきという防食仕様では、高耐食性の面で不安を抱いており、それに代わる選択肢として従来の溶融亜鉛めっきを下地とし、さらにふっ素樹脂系塗装を行う高耐食仕様が採用されているが、そうした需要に対し、高耐食性合金めっきの提案受注をするため「AZ設備を導入する新工場を作るタイミングは今しかない」(同社)と判断した。



 道路分野でも同様だ。従来も鶴見工場では支承の鋼材部の防食を主力の一つとして取り扱ってきたが、「NEXCO、国土交通省などの発注機関も合金めっきの良さは理解してくれている」(同社)ことから、溶射あるいは溶射+ふっ素仕様の個所を中心に受注を狙う。加えて落橋防止装置のブラケット、橋梁検査路、排水管、恒久足場の骨組みなどの分野も営業していく。

大型トラックの最大積載幅に対応
 寸法に由来する継手を減らし、耐久性の向上に寄与

 ここで、重要なのが、めっき層の大型化・吊り能力の向上である。支承とりわけ端支点部の支承の鋼部材は大型の場合が多い、めっき層の深さを2,200mmにしたのは、セラミック製のめっき層を作れる最大サイズが今回の容量であったこともあるが、大型トラックの最大積載幅(2,200mm)を有効活用することも考慮してそれに対応できる深さに拘った。他の製品も大型化することで、寸法に由来する継手を減らすことができ、耐久性の向上に寄与できる。

めっき可能サイズおよび吊り能力と工程

 同社のAZ加工工程は、脱脂・酸洗とフラックス処理を経た部材を従来から手がける鉛・カドミウムレスの最純亜鉛めっき「エコZ」に浸漬(1浴目)した後、AZのめっき処理(2浴目)を施し、通常の工程と同様の冷却、仕上げを行う。これにより鉄素地と表層の間に鉄‐アルミの合金層が形成され、AZ特有の被膜構造が出来上がる。
 新工場のめっきラインでは「エコZ」を使用した従来と同じ溶融亜鉛めっき槽と冷却槽の間にAZめっき槽を配置し、1ラインで溶融亜鉛めっきと合金めっきの加工をできるようにした。エコZめっき層の方がAZめっき層よりも浴槽温度が高いため、2層目でひずみが拡大する懸念もなく、良質な合金亜鉛めっき層が形成できる。
 AZは通常の溶融亜鉛めっきと比べて耐食性に極めて優れ、腐食環境下にある構造物の維持管理コストの削減に寄与する。

塩水噴霧試験での外観変化比較

 田中亜鉛グループ営業を統括する髙口謙一専務は今回の設備投資について「生産量の拡大が目的ではない」と説明。「AZという高付加価値のめっき加工で他社との差別化を図ると同時に、関東以北の主に塩害が想定される地域でのニーズに応えたい」と語った。

【解説】 「溶融亜鉛アルミニウム合金めっき」は亜鉛をベースにアルミニウム・マグネシウムが含有された3元素合金めっき(ZN94%、Al5%、Mg1%)で、2019年11月20日に「JIS H8643」として規格化された。高純度亜鉛のめっき処理に続いて合金めっき処理を行う表面処理技術で、耐食性は従来の溶融亜鉛めっきの5~10倍以上と非常に高い。田中亜鉛鍍金が実施した塩水噴霧試験の結果によると、1万時間以上でも赤さびの発生が確認されず(溶融亜鉛めっきは1000時間で赤さびが発生)、特に港湾部をはじめとした塩害地域などの腐食環境において優れた耐食性を発揮する。

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