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ハイピアを有する橋梁や国道45号槇木沢橋のようなアーチ橋で実績

東北地整 吉浜高架橋の高橋脚をロープ高所作業で点検

公開日:2021.11.09

 国土交通省東北地方整備局東北技術事務所は、三陸沿岸道路吉浜高架橋下部工の定期点検に際し、『ロープ高所作業』を用いた打音・目視点検を行った。同橋は橋脚高が最大で40.5m(P3、P4)であり、P2も40m弱、P1、P5も22~28mという高さであることから橋梁点検車等を使うことが困難と判断し、ロープ高所作業を用いた点検を採用したもの。同点検手法は同整備局内でもハイピアを有する橋梁や国道45号の槇木沢橋のようなアーチ橋で実績を有している。(井手迫瑞樹)

地上高30mを超える橋脚や斜面上に位置する橋脚を点検
 近接目視はもちろん、打音検査、附属物の劣化状況も把握可能

 同橋は、橋長373mの6径間PC連続ラーメン箱桁橋(ただしP1、P5は支承構造)で2015年に供用された。竣工時検査を含めると今回は3回目の点検となる。ロープ高所作業による橋梁点検を採用した理由について受注者である近代設計・三協技術・協和設計JVの三浦俊史氏(管理技術者:近代設計)は、「地上高が30mを超える高橋脚であり、斜面上に位置する橋脚もあり、橋面上からの橋梁点検車や下からの高所作業車による点検ができない部分があった。また、点検支援技術カタログも検討し、複数の業者に打診したが、年内の対応は不可という答えがあったことから、フレキシブル性に富み実績も多い、ロープ高所作業技術を採用することに決めた」と話した。

ハイピアの点検状況(遠景)
 加えて、「ロープ高所作業は、人が接近して点検するため、近接目視はもちろん、打音検査も行うことができ、浮き、剥離、ひび割れ、鉄筋露出の把握もでき、さらには排水管など付属物の劣化状況も把握することができる。画角や離隔も理想的な形で撮影できるため信頼性も高く、点検も熟練の作業者が行うため効率的に点検できている」(三浦氏)とした。

打音や目視、付属物の劣化状況の把握もできる

 ロープ高所作業技術は安全面でも非常に気を付けている。同現場でロープ高所作業に従事する日本空糸は、「本現場でも見られた通り、基本的に点検は2人以上を1パーティーとし、単独では作業しません。そのため何かが起きた時にもう1人がすぐに救助に向かうことができます。さらに下から統括者が見ており、俯瞰的に目を光らせています。厚生労働省の平成28年度労働安全衛生規則に則り、ロープ高所作業は特別教育を受講しなければならないとされており、当社では特別教育を受講し、かつ適切な技術的訓練を受けた者のみを従事しています」(同社の伊藤社長)。

2人(以上)1組で点検を行う

 取材日当日は、国土交通省東北地方整備局南三陸沿岸国道事務所からも、若手職員が視察に訪れていた。同視察を主催した同整備局東北技術事務所の佐々木保全対策官は、「ロープ高所作業は橋梁など構造物の点検における有力な技術の一つと考えている。とりわけ複雑な構造物やハイピアなどの場合は、点検車の能力を超えたり、交通規制の可否により、点検車での点検が限られることから、現地の状況によってはロープ高所作業を使うこともありうる。また、打音や近接目視の点検の他、コンクリートの浮きなど、コンクリート片が落下するおそれがある箇所は叩き落しを行い、叩き落した表面にはコンクリート劣化防止や鉄筋が露出した場合には防錆処理などの応急措置を行っている」と語っていた。

国土交通省東北地方整備局南三陸沿岸国道事務所からも、若手職員が視察

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