道路構造物ジャーナルNET

グラウト充填時の不良を防ぐために充填感知センサーを桁内に埋込む

国交省富山河川・芽蜩橋 隣接する既設への影響を門型リフターで回避

公開日:2021.07.05

 国土交通省北陸地方整備局富山河川国道事務所は、国道8号線の小矢部川渡河部に架かる芽蜩(ひぐらし)橋Ⅱ期線の建設を進めている。同橋は橋長352.82mの5径間連結プレテンホロー桁×2(両アプローチ部)+6径間連結ポステンバルブT桁で、すでに下部工とアプローチ部の桁架設が完了しており、現在は残る渡河部の建設を進めている。今回はそのうちP8~P11の3径間の架設を取材した。同橋は既設橋が非常に近接(離隔距離は740㎜しかない)している個所に架けられるため、大型クレーンによる架設は難しく、架設済みのアプローチ桁に地組して送り出す架設桁架設と、その架設桁上面にレールを敷いて台車で運び門型リフターによって左右に移動させてリフトダウンする手法を組み合わせた形で架設した点で特徴を有している。(井手迫瑞樹)

桁高は2200㎜から1100㎜に変断面
 1主桁を5分割したセグメントブロックを運搬して、現場で緊張接合

 今回架設する3径間の支間長はP8-P9が36.72m、P9-P10が36.68m、P10-P11が23.91mで連結部を含めた架設長は100.46mとなっている。P11近接部に河川管理用道路が通っているため、桁高は2200㎜から1100㎜に変断面する構造となっている。主桁は7本あり、地組は1支間の主桁1本ごとに行う。1主桁を5分割したセグメントブロックを運搬して、現場で緊張接合し1本の桁にするものだ。現場での緊張接合をうまく行うため、地組台車を工夫した。具体的には左右はねじ止め方式、上下は油圧方式により細かに位置を調整できる台車を使用してセグメント接合精度を確保した。
 送り出しはまず門型リフターを2機橋脚上に設置した後、すでに架けたアプローチの桁上に仮設レールを敷き、架設桁を地組して運搬台車で引き出し、門型リフターを使ってリフトダウンする。それ以降は地組した主桁を台車に載せて送りだし、門型リフターでリフトダウンし、最後に架設桁を次径間に送り出し、空いた最後のスペースに径間最後の主桁を落としこむという工程を繰り返す。主桁の施工順序はG3→G1→G2→G5→G7→G6→G4という順序とし、架設桁の足場用手摺や桁同士の干渉を避け、架けやすい手順を追求した。

 1本あたりの桁重量はP8-P9、P9-P10で123t、変断面で桁高が低くなるP10-P11でも70tに達する。このスムーズな桁架設に威力を発揮したのが一次下請けの野田クレーンが運用している「門型リフター」だ。同機は完全油圧式の門型リフターで、桁吊り装置が上下するタイプではなく門構の脚柱部が伸縮する構造を用いている。脚の最大幅も800㎜とスレンダーで、既設桁側面に配置している光ケーブル配管への干渉も回避できる。さらに手動のギアトロリーで桁を手軽に左右移動でき、3,500㎜のストロークを連続してリフトダウンできることから採用したもの。同リフターは連続式同調シリンダーを採用しており、仮にどちらか一方に偏荷重がかかっても降下リフト量を左右均等に保って下げることができるため、安心して施工ができる。施工も3,500㎜を連続降下できるため、盛替えを少なくできる。記者が取材した6月9日の施工では、アプローチ部上の主桁の引き出しから架設完了まで一時間半程度という速さで完了していた。野田クレーンでは同機についてストローク4,000㎜、4,500㎜のタイプも保有しており、現場条件に合わせて運用している。

門型リフターの設置状況


橋脚の梁の端ぎりぎりにリフターの脚を置いている

既設橋に近接/光ケーブル配管への干渉も回避

桁の緊張作業


レール上を移動していく橋桁

桁吊りノーズを両端に設置し


さらに桁を吊って横にずらしていく


桁を所定の位置に落とし込む。桁の引き出しから降下完了までは1時間半程度という短時間であった

横締めシースを支持するための棚状の鉄筋を工場製作
 上面はアクアマットを用いて28日間養生

 さて、次に長寿命化の施策である。
 まずシースの配置やグラウト充填に関する工夫は、横締めシースを支持するための棚状の鉄筋を工場製作し、現地で精度良く配筋した。さらにグラウト充填時の不良を防ぐために充填感知センサーを桁内に埋め込み、エアの残留などの不良を起こさず確実に施工できるよう配慮している。
 さらに場所打ちコンクリート部(各主桁間の間詰めおよび横桁部)の長期養生の確保などによる品質向上を図っている。上面はアクアマットを用いて28日間養生するとともに、脱型面はコンクリート保水養生テープを貼り付けて長期養生している。

 現在は同工事最終径間(P8-P9)の主桁架設がほぼ完了した状況だ。

 同橋の設計はパシフィックコンサルタンツ。P8-P11上部工事の製作・架設は日本ピーエス。一次下請は野田クレーン(主桁接合・架設)、鈴木組(上部工一式)、米原商事(クレーン)、田畑建設運輸(コンクリートポンプ)、大川建設工業(検査路製作設置)など。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム