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施工コストを4割強縮減、LCCを6割強縮減

秩父市 下路式ランガー桁橋の塗替え塗装で「アースコート防錆-塗装システム」を採用

公開日:2021.05.24

 秩父市は、市道荒川幹線5号線の荒川に架かる平和橋の塗替えを行っている。塗替えには、1種ケレン以外の素地調整工でRc-1塗装系相当以上の防錆力を発揮する錆転換型防食システム「アースコート防錆-塗装システム」を採用した。同システムでは、通常の塗替えと比較してイニシャルコストは4割強縮減でき、LCCも60年換算で5割強縮減が可能だ。

最大膜厚は633μmに達する
 塗替え面積は2,025㎡

 同橋は、市道荒川幹線5号線の荒川に架かる橋長81.7m、幅員5mの下路式ランガー桁橋。1972年に架設され、1989年と2001年に塗替えが行われている。架設時の膜厚は140μm、1989年の塗替え時は140μm、2001年の塗替え時は140μmとなっており、最大膜厚633μm、最小429μmで平均は506μmだった。塗替えはアーチ部と桁部の全面で実施し、面積は2,025㎡となる。


施工前の同橋(秩父市提供。注釈なき場合は同)

 同橋の定期点検結果はⅡ判定であったが、塗装については橋梁全面にわたり塗膜割れおよび剥がれが生じていた。特に日光が当たるアーチ部については塗膜割れが多く見られたが、桁下面については比較的塗膜割れが少ない状況だった。


上弦材と補剛材連結部の塗膜剥がれ

横桁端部の塗膜剥がれ/横桁の軽微な防食機能劣化

既存塗膜は鉛を含有
 「アースコート防錆-塗装システム」秩父市2015年度以降8件採用

 既存塗膜には鉛が含有されていた。具体的には、架設時の下塗りで鉛系錆止めペイント1種(3層)、1989年塗替え時の下塗りで亜酸化鉛錆止め塗料(5層)、2001年塗替え時の下塗りでシアナミド鉛錆止め塗料(8層)となっており、塗膜除去の際には、作業者の健康障害防止や、粉塵の外部への飛散防止の対応が求められた。
 施工にあたっては、従来足場をアーチ部と桁部に設置し、飛散防止シートで橋梁全体を覆った。素地調整は3種ケレンBで行い、作業員は化学防護服およびシューズカバー、化学防護手袋、電動ファン付全面を装着し、施工範囲を分割して作業を進めていった。さらに、負圧除塵装置も併用し、ディスクサンダーは集塵機付きのものを使用した。ケレンに当たっては、膜厚が厚いことに加え、「塗膜が亀甲状になっている箇所があって苦労した」(塗装工2次下請けのアクア)という。


足場設置状況

化学防護服などを着用のうえ、集塵機付きディスクサンダーを使用してケレンを行った

 塗替えでは、「アースコート防錆-塗装システム」を採用した。同システムは、防錆前処理剤と防錆塗料がさび成分と強固に反応(錆転換)することで錆の進行を抑制・固着し、かつ安定した防錆皮膜を形成して防錆力を発揮するもので、素地調整を軽減しつつ、所定の防食性能を発揮できることが特徴だ。
 採用理由について、秩父市は「LCCを勘案した結果と錆転換型塗装の実績があること」を挙げる。素地調整費を含めた塗装面積1,000㎡規模で、同システムをRc-Ⅰとコスト比較をすると施工コストが約43%削減され、期待耐久年数が35年となっているので、LCCの削減も実現できることになる。60年でのLCCでは、RC-Ⅲと比較して54%、Rc-Ⅰでは52%の削減となる。維持管理費の増大に苦慮する地方自治体にとっては、施工コストとLCCの縮減は大きいと言えるだろう。また、秩父市では、2015年度以降8件採用しており、現時点で再劣化は見られていないという。
 本現場での施工では、1層目に脱脂剤兼用防錆皮膜処理剤、下塗りに変性エポキシ樹脂系特殊塗料を2層(各60μm)重ね、フッ素樹脂塗料用中塗りでウレタン樹脂塗料を1層(30μm)、上塗りで弱溶剤形フッ素樹脂塗料を1層(25μm)塗っていく。取材時には、中塗りがほぼ完了した状態だった。


下塗り作業(右写真のみ:大柴功治撮影。以下の写真、同)

中塗り作業と中塗り完了


中塗り完了

 元請は、斎藤組。1次下請けは、シーエス技研、リュウテクノ(足場工)など。塗装工2次下請けは、アクア。
(大柴功治)

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