道路構造物ジャーナルNET

技術者や協力会社の技能者(約250人)の教育、技術力向上、AIなどの新技術の実験設備として活用

オリエンタル白石 ニューマチックケーソン工法研修施設を公開

公開日:2021.04.27

 オリエンタル白石は、同社のつくば機材センターにニューマチックケーソン工法の技術開発や教育、技術継承を目的として建設した、同工法研修施設をマスコミ公開した。総工費は約1億円。同社は国内のニューマチックケーソン市場の7割弱を占める「リーディングカンパニー」(同社)であり、同施設を整備して、同社の技術者や協力会社の技能者(約250人)の教育、技術力向上を図ると共に、整備も含めた完全無人化やAIによる施工などを実現するための実験施設としても活用していく方針だ。なお同センターでは、ケーソンに必要な機材を製造し、管理メンテナンスまでを一貫して行っている。

施設全景

同センターでは、ケーソンに必要な機材を製造し、管理メンテナンスまでを一貫して行っている

 研修施設のコンセプトは、①担い手の確保育成、②従事者の研修と技能向上、③新規入職者の教育、④職員研修による知見の向上、⑤新規設備の開発、試験運転等による機械設備の改良などだ。
 ニューマチックケーソンの現場としては「大きくはないが、小さくもない」(同)長さ16m×幅14m、面積220㎡、掘削可能土砂厚さ50㎝(実際の厚さは80㎝)の現場を再現した。地上部には遠隔操作用モニターやマンロック、マンシャフト、マテリアルロックやマテリアルシャフトなどを配置、地下部には、走行レールに懸けられた天井走行式ケーソンショベル2台、それらを組立て、解体、搬送するためのロボットが配置され、実際に遠隔操作で施工できるようになっている。実際の現場と同様に各シャフト(φ1,200mm)が配置されており、人や機材、掘削した土砂を積んだバケットの出し入れを行う訓練が行えるようになっている。

マンロック、マンシャフト、マテリアルロックやマテリアルシャフトなどを配置/遠隔操作用モニター

 こうした施設を整備するに至ったのは、「遠隔操作が主流になることで直接機械操作を行う機会が減少している」(同社)との危機感がある。既存技術を維持していくためにも、従事する技術者・技能者が一定の技術力を有することは死活的重要であるためだ。遠隔操作が一般的になっている昨今においてそれは容易ではない。そのため現場と同様の状態を再現した施設で教育を重ねることで、技術力維持向上を図る。
 一方で、遠隔施工による省人化、さらには効率的な施工を進めるため、完全無人化を実現できるハードウェアの開発やAIの導入など新しい技術を確立していくことが重要であり、そうした試験フィールドとしても活用していく。

地下部

2種類のケーソンショベル

組立解体用補助作業ロボット/搬送ロボット

 欧米で開発され発展したニューマチックケーソン工法は、関東大震災復興事業の隅田川架橋工事として永代橋に採用された。欧米ではニーズが減少したが、国内では依然、基礎工事、地下工事の有力な工法として存在し続けている。同社は創業時(昭和8年)から同工法のパイオニアとして取り組み、現在がある。
 日本の特徴的な地盤・地質、耐震性の要求などの適用性もあるが、機械化に努めたことや高気圧障害防止など対策の改善強化に努めたこと、遠隔操作による無人化掘削施工を標準化したことにより、今なお実績を伸ばしている。同社は、020年度、深度70m(0.69MPa)を超える現場の掘削施工を完了し、21年度も同規模及び深度100m(0.69MPa)の現場を施工する予定で、橋梁や立坑などの施設分野に積極的に展開していく方針だ。
 同社は中期経営計画では5年間に生産能力向上やM&A、技術開発などに200億投資する予定となっている。大規模更新、橋梁上下部、地下貯留施設等のインフラ建設、建築分野と広く対象とする中で、今回のニューマチックケーソン研修施設建設はその一環でもある。

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