道路構造物ジャーナルNET

岐阜大学など7者

コンクリート構造物を現場で直接プリント造形できる技術『On-Site Shot Printer』を開発

公開日:2020.05.11

 岐阜大学など7者は、コンクリート構造物を現場で直接プリント造形できる技術『On-Site Shot Printer』を開発した。3Dプリンティング技術を活用し、降水や粉じんに強いICT建機に新開発のハイブリッド吹付システムを取り付けて施工するもの。従来の3Dプリンティング技術とは異なり、ロボットアームなどの特殊な機械を必要としない。また、従来の3Dプリンティング技術で使われるコンクリートのように、下向きに積層するのではなく、垂直面にそのまま造形することを目指した技術だ。現在は埋設型枠としての利用を目標としているが、将来的には橋梁上下部工の構造部材としての利用も視野に入れている。このほど、富士市の施工技術総合研究所(施工総研)内で高さ約1mの壁や約1.5mの柱(型枠)の直接プリント造形も試みて成功した。(井手迫瑞樹)

 同研究の研究に着想したのは、3年ほど前から。同大学の国枝稔教授が、欧州で開発された3Dプリンティング技術を国内でも導入できないかと模索し、研究相手を募った結果、施工総研を中心とした現在のグループで研究を開始した。研究を構成する7者は、岐阜大学(国枝稔教授)、施工技術総合研究所のほか、清水建設、NIPPO、住友大阪セメント、丸栄コンクリート、エフティ―エス。
 「最終的に構造部材に展開できなけば意味がないという点でゼネコンから、当該技術が味方にもなり、脅威にもなり得るプレキャストメーカからそれぞれ助言をいただいている。また、ハイブリッド吹付システムの基礎技術を有するNIPPOにも参画いただき、あわせて道路構造物への適用について模索している段階である」(国枝稔教授)ということだ。

 「3Dプリンティングはノズル制御技術,製造技術,材料が一体となって初めてうまく造形できる技術」(国枝教授)であるため、ICT建機,ハイブリッド吹付システムおよびダレの少ないセメント系材料を用いることにした。
 ハイブリッド吹付システムには、材料を個別に搬送して先端のノズルで混合吹付けする「乾式吹付け技術」と、あらかじめ混合した材料を先端ノズルから吹付けする「湿式吹付け技術」を活用している。住友大阪セメントなどが開発したリフレドライショットを3Dプリンティング技術用にアレンジしたもの。これは、現場での直接プリント造形には、造形するための材料の長距離搬送が必要であることに加え、構造物として造形物の強度確保が重要であるためだ。材料は現状で普通、早強、超速硬コンクリートが適用可能。基本的に乾式材料を用いるためスランプはゼロに近く、セメントや骨材の配合もアレンジし、垂直面に吹き付けてもだれないように形状の保持性能を高く保てるものにした。将来的には短繊維の混和も期待されている。
 この吹付ノズルを一般的に用いられているICT建機のバケットに取付ける。ICT建機を使うことで、特殊かつ精密な専用のロボットアームを使わなくてもよいため、「危険な個所での作業や、複雑な形状の施工も効率よくでき、24時間遠隔操作できることから、省人化やコスト縮減にも役立つ」(同)としている。
 無限の平面設計データを作成・ 入力し、水平軸を制御した。高さについてはオフセット機能(スイッチにより設定した高さ分を上げ下げ可能な機能)により調整した。

 課題は仕上げ面と鉄筋の配置方法。仕上げについては、「今年度の研究で、完全に固まっていない段階で磨き仕上げできる手法を開発する」(同)。
 日本では耐震性を確保しなくてはならないため、欧州とは異なり鉄筋など補強部材の配置は不可欠だが、そうした補強部材の配置の方法やタイミングを定めることは不可欠だ。そうした技術についても「補強素材の選択から、金属の3D成型などのアプローチに至るまで、5年をめどに橋梁上部の構造部材への適用にこぎつけたい」(同)としている。
 加えて、現在進められている大規模更新現場での床版取替についても、測量や解析結果を落としこみ、理想的な床版形状を現場や工場で製作できる技術として期待できそうだ。

 コンクリート分野では、 国土交通省が取組むi-Construction(アイ・コンストラクション)の3本柱のひとつとして、工場製品によるプレキャスト化が推進されているが、同研究開発グループでは、「社会が求めているインフラにおける生産性向上技術とは、 現場打設から工場製品に移行するだけではなく、全く新しい発想によるコンクリート構造物の製造技術の開発」であると考え、3Dプリンティング技術に着目し、研究開発を進めている。同研究は国土交通省の建設技術助成金を得て試験を実施している(https://www.mlit.go.jp/tec/gijutu/kaihatu/jyoseiseika.html )。 (2020年5月11日掲載)

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