落石防護ネットで使われている製品を援用 対象は首都高速だけで6万2千基
首都高速道路など4社 支承部品の脱落を防ぐための支承部品落下防止対策用組紐およびネットを開発
首都高速道路、首都高速道路技術センター、日本支承協会、前田工繊は、大規模震災時などにおける支承部材の脱落を防ぐための支承部材落下防止対策用組紐およびネットを開発した。以前から落石防護ネットなどに使われているポリエステル繊維製の組紐ロープやラッセル編みネット(ネイチャーネット)を援用したもの。合成繊維製であるため軽く、耐久性も落石対策で実証済みであり、首都高速道路が想定している地震時の支承部材飛出し速度2m/sの衝撃荷重を吸収でき、なおかつハンドリングにも優れている。同社は3月に改訂した橋梁構造物設計施工要領において、支承が破損した場合に落下する恐れがある部材には、原則としてフェールセーフ構造を設けることを規定し、その手法についても今回開発したポリエステル繊維製の組紐ロープやネットを用いることを推奨している。首都高速が保有している支承は約7.6万基あるが、そのうちの約6.2万基が設置の対象になる。部材が脱落すると第三者被害が生じる可能性が高い箇所を優先して、設置していく予定だ。
組紐ロープタイプ(左)/ネットタイプ(右)
同製品を採用するにあたっては、狭隘な空間で施工する必要があり、桁端など環境の悪い箇所へ適用しなければいけない。そのため、材料の選定に当たっては、衝撃荷重を吸収できる素材であることはもちろん、軽量さ、高耐久性、施工性(ハンドリング)を考慮した上で本材料を選定した。他にも金属チェーンなどで部材の落下を防止する手法もあるが、「支承部の塗膜を傷つけて防食性能を落としたくない」(首都高速道路)ことや「軽量で組みばらしが簡単であり」(同)、合成繊維を使っているため腐食は生じず、30年経過後でも設置時の6~7割の強度を確保できる「耐候性・耐久性の高さ」(同)が評価されたものだ。
支承部材落下防止対策は、組紐ロープとネットに分かれている。組紐ロープは支承板支承やゴム支承などにおけるサイドブロックの落下を防止するためのもので、鋼材にねじ穴を切ってアイボルトをはめ込み、枠を作った後にロープを全周に回して固定するもの。ロープを巻く回数やアイボルトの径は、対象部材の重量に合わせて変更する必要がある(表1)。最後に差し込み用の治具で片側の組紐を、もう片方の組紐の中に差し込み、最低20D(糸の直径(φ12mm)の20倍)のさつま長(継手長)を確保し固定する。
組紐ロープタイプの施工①位置だし/孔明け/タップ
組紐ロープタイプの施工②アイボルト設置/ロープ設置/完了状況
ネットは複数の部材が脱落する可能性のあるピンローラー支承やピボットローラー支承などが対象で、支承全体をネットで覆い、ネットの上下端部を組紐ロープで固定する。組紐ロープの巻き回数やアイボルト径は、対象部材の質量に応じて変える(表2)。ネットの継ぎ目は突合せ部の下端を組紐で綴じ、次いで裁ち目をかがり縫いし、同様のさつま長で結び固定する。
ネットタイプの施工の仕方
固定部は差し込んだ方向と逆に緩めるだけでばらすことが可能であり、切断などすることなく取り外しができる。日本支承協会、前田工繊は、首都高速道路だけでなく、阪神高速道路やNEXCO各社、各高速道路公社などにも積極的に営業していく方針だ。(2019年10月28日掲載、井手迫瑞樹)