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厳しい塩害に対応するためSSI工法により断面修復

千葉県 仲原橋にグリッドメタルを採用して増厚量を減らして補修

公開日:2019.05.16

 千葉県安房土木事務所が所管する仲原橋(カルバートボックス)で実工事としては初めて補強鉄筋の代わりにグリッドメタルを用いた補修を行っている。補修により桁下の水路容積をできるだけ減らさないようにするため、補修の際の増厚を従来のRCによる補修に比べ半分程度に減らすことができる同手法を採用したものだ。配筋の際の手間や増厚量を減らせるため1工程当たりの施工日数を10日から7日に短縮できる。海岸に面しており既設構造物の塩化物イオン含有量も大きいため、断面修復および被り補修には塩分吸着性能を有するポリマーセメントモルタル「SSI工法」、さらに断面修復後には、珪酸塩系の高分子系浸透性防水材「アイゾールEX」を塗布している。現場を取材した。

 同橋は、千葉県道和田丸山線の南房総市白子、太平洋に面している個所に架かる橋長2.3m、幅員11.23m(道路部7.50m、歩道部3.28m)のカルバートボックスで補修範囲は車道部を含む幅員7.87m部分、カルバートの3面46.4㎡を補修している。架橋箇所は海岸に面した箇所にあるため、台風時は海水がボックス直下の水路にまで逆流する。そのため既設構造物は塩害で大きく損傷しており、一部は鉄筋が露出しており、鉄筋近傍の塩化物イオン量は最大で6.59kg/㎥に達していた。


架橋地の状況/カルバートから外をのぞくとすぐ荒波が見えた

 補修に使うグリッドメタルは鋼板に切れ目を入れて引き延ばして製作する展張型(A型)を用いる。A型はアコーディオン状の「Aに近い形状」(JFEシビル・塩田啓介技術部長)となっている。これは完成品の2~3分の1程度の鉄板にスリットを入れて引き延ばすことで網状の格子筋に成型するためで、生産時の材料ロスを少なくできる。工場の曲げ加工機により、最初から隅角を伴った格子筋を製作可能だ。


グリッドメタルの配置状況

 グリッドメタルの板厚は6mmと薄く、この薄い板厚でD16+D13の鉄筋と同等の引張強度を期待できる。カルバート形状に従って事前に制作したA~Eの5材を配置して、削孔してアンカーで留めていく。継手部(右写真)は100mmほど重ねるが、それでも板厚は12mmほどしかならない。今回の現場では既設鉄筋背面を30mmほどはつり、既設鉄筋を防錆処理した後に、グリッドメタルを配置し、被りも含めて56mm、塩分吸着剤入りのPCMを湿式吹付にて施工していった。鉄筋部以降の被り厚さを従来の49mmから26mmと半減させており、その分のPCMに値する量のコストを縮減できる。グリッドメタル自体は鉄筋よりもだいぶ割高だが、配筋やPCM打設の手間が少なくて済むため施工期間も7割程度短縮できており。材工を含めたコストでは若干縮減できているようだ。

 SSIを用いたのは、残置するコンクリート部にも塩分が浸透しており、その影響を緩和して構造物の長寿命化を図るため。


SSI工法の施工

 アイゾールEXは、外側から供給される塩分を浸透させて塩分吸着の効果を薄めないように表面を被覆するため用いている。


アイゾールEXの施工及び完成状況

 同地では通水量を確保するため断面をできるだけ小さくしたくないことからも、グリッドメタルを用いた工法が有効と考え、採用した。
 今後、近接のボックスカルバート補修でも同工法を採用していく。また、5月には栃木県で橋梁床版下面での補修も行われる予定だ。 (2019年5月16日掲載

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