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設計、製作、溶接、架設全てに難易度が高い2連の鋼製アーチ橋

有明海沿岸道路筑後川橋 上部工の架設が進捗

公開日:2018.05.07

 国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所は、有明海沿岸道路において筑後川を渡河する個所に架かる筑後川橋上部工と早津江川を渡河する個所に架かる早津江川橋の上下部工の施工をそれぞれ行っている。両橋について現場を取材した。今回はその第一回目として、筑後川橋の現場をレポートする。(井手迫瑞樹)

基部は二又に分かれていて、アーチ部(上路)で1本
 橋長450m、総重量は6465tに達する

筑後川橋
 筑後川橋は、福岡県大川市大字小保~大野島の筑後川渡河部に建設が進められている橋長450m(最大支間170m)、有効幅員20.5~21.4m、総重量6,465tの鋼4径間連続(2連)単弦中路式アーチ橋だ。工期は平成28年3月1日~平成32年3月10日までの4年間で、製作・架設はMMB・宮地・川田JVが担当している。基部は二又に分かれていて、アーチ部(上路)で1本になっている。それが2連ある日本で最初の形式の橋梁となっている。
 現場架設は、平成29年8月から準備作業に着手し、平成32年3月までの間に全ての桁架設を完了させる予定だ。


筑後川橋の設計概要図(MMB・宮地・川田JV提供、以下注釈無きは同)

有明海沿岸道路における筑後川橋の位置

アーチ形式採用で圧迫感を低減
 色彩は夕日に美しく染まる桜色

橋梁の特徴
 橋梁の特徴としては、①上流に昇開橋、下流に新田大橋、河川中央部にデ・レイケ導流堤があり、それらと調和を取りかつ、デ・レイケ導流堤上の橋脚高を低くでき、圧迫感を軽減できる鋼アーチ橋とした。②色彩面では、昇開橋、新田大橋(赤い塗装色)を含めて周囲の景観への溶け込みを考慮し、塗装色を夕日に美しく染まる淡い桜色とした。因みに隣接する早津江川橋は、同様に景観上の理由から緑色としている。

筑後川橋のイメージ

 ③吊り材のデザインは大川組子細工をイメージしてクロス配置とし、アーチと吊材により面として見せることで、圧迫感を抑えることも考慮した。因みに早津江川橋は鉛直のケーブル配置を採用している。④アーチのデザインは2連であるため、シルエットを強調させ、河川を軽やかに渡れるようにアーチ形状を台形断面にした。⑤P6橋脚はデ・レイケ導流堤にマッチするように、橋脚形状を台形断面にして、全体をスレンダーにした。


筑後川橋のイメージ②

 桁製作はMMBが市原工場で、宮地は千葉工場で、川田は多度津工場でそれぞれ行っている。

アーチリブは複雑に変化
 3社合計22回の分割仮組立てを実施

 アーチリブの断面形状は、クラウン部の台形断面から補剛桁との隅角部で矩形断面となり、さらに、平行四辺形断面に分岐して、支点部では台形形状となる非常に複雑な構造であるため、設計照査や原寸時にはCIMモデルを活用した部材の干渉照査や溶接施工性の確認を行っている。材料検査、罫書き、切断、孔明けと、桁製作のフローは通常と大きく変わりはない。ただし、部材精度や仮組立て精度については、通常の桁製作に比べ厳格に管理を行っている。特に仮組立てについては、現地への搬送工程を厳守すべく3社合計 22回の分割仮組立てを実施し、重複ブロックや工場間でのブロックの転送などにより仮組立て精度の向上を図っている。仮組立て後は、塗装して現場に台船またはトレーラー、トラックにより運んだ。


アーチリブの断面形状は大きく変化する

工場製作の流れ①、②

工場製作の流れ③、④

工場製作の流れ⑤、⑥

工場製作の流れ⑦

 非破壊検査は工場では各社の専門業者が行い、現場では一括してダンテックが担当している。
 12月に現場を訪れた段階ではP7-P8径間のスプリンギング及び補剛桁が既にほとんど組みあがっており、P6橋脚部は平成29年中には仮組立て、塗装が完了し現場の工程にあわせて製作工場で仮置き保管している状況であった。


2017年12月に訪れた際の現場状況①(井手迫瑞樹撮影)

2017年12月に訪れた際の現場状況② スプリンギングや台形形状が分かる(井手迫瑞樹撮影)

 架設は基本的にはクローラクレーン+ベント工法を用いている。一部(P5-P6径間)は航路がありベントの設置位置が限られるため、P6-P8径間の桁上にP5-P6径間の桁を地組み立てし、エンドレスキャリー、駆動シンクロジャッキ等の特殊な設備を使用した「送出し工法」を採用する予定だ。
 具体的には、第一段階として、P7-P8径間のスプリンギング・補剛桁の架設。次にP6のスプリンギング・補剛桁架設を行い、並行してP6-P7間を河川内に設置した杭基礎の上にベント設備を設置しながらの張出し架設を平成30年の夏くらいまでに行う。


第一段階(イメージ)






第1段階の動画的イメージ(手前がP8)

 第二段階として、平成30年9月~31年5月ごろまでには、反対側のP5-P4径間のスプリンギング、補剛桁架設を行う。P5橋脚は仮設構台が片側にしか設置できなかったことから、片側から架設全域をカバーしなければならないため350t吊クローラクレーンを使用する。同じくP4-P5間の県道を跨いで架設する必要がある箇所では550t吊オールテレーンクレーンを使用する予定だ。


第二段階イメージ

第二段階動画的イメージ

 第三段階は、第二段階と並行して、平成30年9月~31年6月までの間にP5-P6間の補剛桁架設を行う。この径間は筑後川の主要航路上となっていることから、航行船舶への影響を最小限とするために、施工の完了したP6-P8径間の桁上に手延べ機、その後ろに送出し桁を地組み立てし、添接(溶接及び高力ボルト)、塗装まで全て完了させて桁を送出す。


第三段階イメージ


第三段階動画的イメージ

 送出し及び降下作業は平成31年5~6月を予定。1日目で(P5-P6間に設置している)河川中央ベントまで到達させ、2日目に、反対側のP5スプリンギングまで到達させる。3日目に所定の位置の真上まで送り出す。その後送出し設備を降下設備に組み替えて約4m降下させ架設済みの桁と連結する。
 桁の降下は、連続降下ジャッキを使用した吊下げ方式とする予定だ。

 第三段階まで完了した後は、第四段階として、架設した桁上に200t吊クローラクレーンを搭載し、P5側からP7側へアーチリブをベント架設していくこの作業を平成31年6月~11月頃まで行う。最後に、ケーブルの設置を行い、排水装置・防護柵等の付属物の設置と並行して仮設備撤去を平成32年2月末頃までに完了させる予定だ。


第四段階イメージ

第四段階動画的イメージ

最終段階イメージ


最終段階から舗設までのイメージ

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