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日本インシークの技術① 点群データをクラウド上に集約・公開することで共有

点群データのオープン化の取組み ~ RID(Road Infrastructure Database)~

株式会社日本インシーク
技術本部
技術開発室長

平野 順俊 氏

公開日:2022.01.18

1.はじめに

 わが国では、国家単位のデジタル化を実現すべく「デジタル庁」の発足など、ICT、IoT活用などの大きな波がきている。土木業界においては、平成28年1月の石井国土交通大臣(当時)の会見より、社会のあらゆる生産性を向上させるべく「i-Construction」の推進、3次元モデルを活用し社会資本の整備、管理を行うCIMの導入などを行っている。また、近年では、「PLATEAU(プラトー)」や「国土交通データプラットフォーム」などのデジタルツイン環境の整備が進められており、各種プラットフォーム構築やオープンデータ化が加速している。
 弊社では、約10年前にICT機器の一つであるMMS(Mobile Mapping System)を導入して以降、UAV、モバイルレーザーなど各種の点群計測システムを活用してきた。当時は、道路台帳更新のための基礎データとして点群データを取得していた。しかし、一定の精度を有した測量データは、単に2次元図面を作成する過程での産物ではなく、より広く多様な利活用の可能性を持つデータではないかと考え、更なる価値の創出や点群データ(3次元空間)の普及を目的として、約1年前に「点群データのオープン化」を行っている。
 ここでは、点群データのオープン化を目的として弊社が独自で構築した「RID(Road Infrastructure Database)」の取組みについて紹介する。

2.RID(Road Infrastructure Database)の概要

 RIDは、自治体などが管理する道路を対象として、MMSなどの機器を用いて計測を行うことで取得した点群データをクラウド上に集約・公開することで共有し、道路および道路施設の調査、計画・設計、工事、維持管理のストックサイクルの様々な場面で活用することで、十分なインフラサービスを効率的かつ持続的に提供することを目的としている。
 点群データの取得は、道路台帳附図の作成などの既存事業における測量作業にMMSを採用することで定期的に精度・鮮度の良いデータを蓄積することが可能となる。また、道路関連事業だけではなく、まちづくりや防災関連事業など、あらゆる事業のプロセスにおいて生み出される調査、計画・設計、工事、維持管理に関わる情報を点群データ上にアップロード・関連付けするなどの機能拡張を行うことも可能である。
 これらのデータは、一般公開/部分公開などを適宜選択した上でオープン化することが可能であり、点群データの閲覧や簡易な計測に必要なツールはWEBサイト上に組み込んでいるため、利用者は専門ソフトウェアのインストールを行うことなく、今すぐに利用が可能な状況となっている。
 このようにして、道路空間を中心とした点群データを地方公共団体や土木関連以外の関係者にも共有することで、一般の人々における教育・研究やNPOにおける諸活動、民間企業におけるエンターテイメント分野などでの利活用なども期待できる。

3.取組内容

(1) 点群データの取得
 点群データの取得方法としては、一般的には表-1に示すものがある。

 本取組みは、奈良県香芝市で採用されている。香芝市は、奈良県の北西部に位置し大阪府と接する人口約79,000人の都市である。香芝市では、市が管理する道路の87%に当たる約270kmの点群データを取得し公開している。この点群データはすでに述べた路面性状調査や道路台帳更新時に計測し取得したものである。(香芝RID:https://www.insiek.co.jp/ksb-RID/

(2) 公開方法
 公開方法は、図-3に示すようにインターネット経由で行い、点群データの閲覧機能等を搭載したWEBツールとして公開することで、専用ソフトのインストールなどが不要となり、利用者の負担が軽減されるよう考慮した。

 

(3) 主な機能
・ データ閲覧機能
 データの閲覧は、OSM(Open Street Map)を背景に採用した画面上で検索を行うシステムとすることで、一般利用者が直感的に利用できるようなビュワーを採用している。

・ 寸法計測機能
 無数の点群データがすべて3次元の測地系座標を保持しているため、表示されている地物の距離や大きさを画面上で寸法を計測することができる。

・ 任意断面抽出機能
 点群データは座標を保持した点の集合空間であるため、任意の断面を指定することにより断面点群を表示し、その断面の点群データをダウンロードすることができる。

・ オリジナルデータのダウンロード
 本システムではブラウザ上での閲覧および寸法計測を主要な機能としているが、必要に応じて点群データのダウンロードも可能としている。必要な範囲のみを選択しLAS形式などでオリジナルデータを自由にダウンロードすることができる。

4.インフラのストックサイクルにおける点群データ活用のメリット

 点群データの特徴としては、以下に示すようなものが挙げられる。
  ・各点が座標を保持しているため3次元空間の表現が可能
  ・計測密度によるが道路地物が高精度で表現が可能
  ・現場に行かずとも形状寸法の確認が可能
  ・二時期の点群データを重畳することで変位の見える化が可能
  ・容易に点の追加・削除および3次元モデルとの合成が可能
 これらの特徴を活かして、図-7に示すように調査、計画・設計、工事、維持管理に活用できるのが点群データの利点であるといえる。

 図-8に示すように、意味を持たない点の集まりである点群データに対して、地物ごとに「領域設定」を行うことにより、抽出や重畳を容易にするほか、施設台帳や点検結果を付与して維持管理にも活用することが可能となる。また、領域設定のための地物認識をAI技術により自動認識させることで作業の効率化を実現しており、地物の自動識別精度は8割以上である。

5.今後の課題

 今後、点群データをオープン化することに際しては、以下のような課題が挙げられる。
  ・鮮度:最新情報への更新を如何に行うか。
  ・精度:様々な計測機器の使用が想定されるため、精度を如何に確保するか。
  ・網羅性:管理範囲の過不足ない情報を確保できるか
  ・環境の整備:大容量となるデータを如何に集約・保存し、ストレスフリーな環境を整備するか
  ・個人情報保護:映り込んだ個人情報を如何に効率的に匿名加工するか
 これらの課題を解決するには、新技術の研究開発だけでなく、現在の社会システムそのものの変革も必要不可欠であるが、それを実現することにより、より良い社会基盤が構築されると確信している。

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