道路構造物ジャーナルNET

㉑北九州空港連絡橋(その1)

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2021.06.01

(1)はじめに

東京・大阪など10都道府県に「緊急事態宣言」が発令され、さらに1か月程度の延長が囁かれている。後手後手に回っている政府の新型コロナ対策はもはや誰も信用していないのではないだろうか。4月末、80歳過ぎの義母のところに新型コロナ予防接種券が神戸市から郵送されてきた。私が手続きをするのだが、電話を掛けても一切繋がらない。スマホ予約で何とか1か月後の接種予約が出来た。「行政は何を考えているのか?」、と言いたい。老人に「ボケないように電子機器を操作しなさい」と言いたいのか。新たに首相は「デジタル庁」なるものを作った。誰のためになる庁なのか。色々な周辺システムを作るため、特定の業者を潤わせるための浪費をするための庁ではないのか。これがうまく機能すれば役所の事務手続きが簡素化される。役所の仕事は楽になり、手抜きが出来る。仕事もしないで給料をもらえる。というのが目的では無いとは思うが。この数十年、政権与党のお金にまつわる問題が度々発覚している。地域の発展のためにご尽力されている先生の陰で、利益誘導に走られている先生も数多いる。ということで、何回かに分けて地方のビッグプロジェクト「北九州空港連絡橋」について経験したことをご紹介する。

(2)北九州空港連絡橋とは(第11号、2020.8.1掲載)

①北九州空港
 北九州空港は、北九州・京築圏域約200万人の航空利便性の確保と北九州地域活性化を
図るため、国が設置して管理する第二種空港として整備され、2006年3月に開港した。主要な
国内路線及び海外路線を結ぶ重要空港であり、周防灘沖約3kmの海上に位置する総面積
373haの人工島(土捨て場)を造成して建設された海上空港である(図-1参照)。この空港の特筆すべき点は、以下の2点である。

1)ローコストで建設された空港
 関門航路や苅田港の浚渫土砂の土捨て場となっていた埋立地を拡張して空港島として利
用したことで非常に安価な海上空港
2)24時間離発着可能な空港
 騒音問題に配慮して海上に建設することで24時間運用可能な空港

【北九州空港概要】
  設置管理者;国土交通大臣    種別;第二種空港(A)
  滑走路;長さ2,500m、幅60m
  エプロン;大型ジェット機用2バース、中型・小型ジェット機用各3バース

②北九州空港連絡橋
 北九州空港連絡橋は、北九州空港と東九州自動車道苅田ICに繋がる「一般県道新北九州
空港線」約7.7kmの一部を成す、海上に建設された全長約2.1kmの海上橋梁である(写真-1
参照)。特徴としては、1)第17号「公共工事における権利者」でも触れたように、架橋地点の海域は共同漁業権並びに区画漁業権が設定されていること、2)空港に近接しているために空域
制限が設定されていること(図-2参照)、3)従前から苅田港から北九州方面への船舶の通行実
態があり、必要幅の通行帯を確保する必要があること、である。

(3)「新北九州空港連絡橋技術専門委員会」の設置

 1991年秋、当時の福岡県企画振興部の方、本件以降20年来の大親友であり相互ブレーンとなる国府寺部長が大阪心斎橋にあった関西国際空港㈱本社ビルにお越しになった。相談内容は、新北九州空港連絡橋の事業の進め方について、であった。この当時、海上空港(及び連絡橋)の設置又は設置計画は、関西国際空港(1994年9月開港)、神戸空港(2006年2月開港)、中部国際空港(2005年2月開港)等、数が限られていた。その中で建設事業が進捗しているのは関西国際空港(連絡橋)だけであり、アドバイスを求められたものである。北九州空港は、福岡空港と同様に国が設置して管理する二種空港である。地元要望により設置が決まったが故に、「空港は整備するがアプローチは地元で整備せよ」という条件付きである。そこで空港連絡橋の技術検討を実施するために「新北九州空港連絡橋技術専門委員会」が設置された。

 九州で初めてのビッグプロジェクトである。このプロジェクトの事業化・組織立ち上げまでご尽力されたのが福岡県の道路建設課(及び企画振興部空港対策課)の宇留島補佐である。薩摩っ子で九大に進まれ、県庁に奉職された。北九州空港の構想実現や空港連絡道路の計画や整備手法(地域高規格道路)について大変ご尽力された。さらには、前出の国府寺部長と一緒に技術的な戦略を練られた方であり、福岡県に私を招聘して頂いた張本人である。「九州の産官学の発展のため、従来の技術委員会の概念に捕らわれない新しい形の委員会を作りたい」、という宇留島補佐の熱い思いを幾度も聞いた。何回か福岡、大阪で委員会について議論し、最終的に合意した事項は以下の通りである。因みに、技術専門委員会の発足は、1992年2月である。

①委員構成(行政側は県で選出)
 白紙の状態で橋梁形式を検討するため、専門分野ごとに委員(大学教授)を選出する。分野は、①地盤・基礎工、②耐震、③コンクリート、④耐風設計、⑤景観、⑥構造、⑦海象、の7分野である。この7分野の委員の元に各分科会委員を置く。委員会委員は、分科会の主査として、九州の各大学から必要な研究者を分科会委員として招聘する。
②費用負担
  委員会・分科会運営費(謝金等)、検討費(必要な検討は県発注の委員会業務や橋梁検討
業務で実施)は、全て県側で負担。
③調査・検討費用は惜しまない
 とにかく必要な調査検討は惜しまない。例えば、第11回(2020.8.1号)「地盤の支持力」で
紹介したSTN(スタナミック)試験の実施など、軟弱地盤の支持力評価式を作成する上で必要な試験研究は惜しまない。
④政治介入を許さない、技術者としての判断
 これまでとかく政治介入が囁かれる「橋種選定」というステップ。そういう誤解を招かない為にも技術者・研究者が最終決定をする。当然、県民へも十分納得のいく説明が出来ること。九州の産官学の発展に寄与出来るような「橋種選定」のシナリオも作ること。福岡は、鉄の町でもあり、セメントの町でもある。あくまでも技術者がリードする意識を持つこと。

【裏話】
 県庁内に組織が設置されるのは1995年の県知事選後(4年後)。その時には福岡県に呼び
ます、という宇留島補佐の度重なる説得を受けた。その時までに委員会・分科会でしっかり
要素技術の検討や「橋種選定」をして下さい、とお願いした。ということで関空会社、本四公団にいる間は、完全黒子に徹して技術サポートをすることとした。

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