道路構造物ジャーナルNET

「ハイブリッド型点検」とは?

【オピニオン】回転寿司に学ぶ、インフラ維持管理における最適解。

一般社団法人特殊高所技術協会 
代表理事

和田 聖司 氏

公開日:2019.04.15

答えの無い問題に解決策を見出したい

 回転寿司では、従来、人間が行っていたサービスの多くを機械やコンピュータが担っている。

 予約は、スマホから行い、店舗では整理券の発券も機械がやってくれる。 もちろん、お寿司は回転し続けているので、食べたい物を見つけたら選んで取っても構わないし、そこになければ、備え付けのタブレットで食べたい物を注文。 個別に注文した商品を、回転台の上を走るトレーが持ってくる。 お水やお茶なども、セルフサービスになっているし、生ビールも専用の機械にお金を入れて自分で注ぐようになっている。 厨房では、寿司ロボットがシャリを握っていて、大きさや温度監理などは人間が握るよりも正確かもしれない。 某回転寿司では、食べ終わった皿を、テーブル横の投入口に入れるだけで食べた枚数を勝手に数えてくれる。 最近では、会計まで機械で行うようになってきた。 近年大手回転寿司チェーンでは、オートメーション化によって、人的なコストを大幅に縮減することに成功している。 一方で、席に案内するのは人間がやっているし、ロボットが作ったシャリの上にネタをのせて寿司を完成させるのも人間だ。 一定のクオリティーとサービスの維持、機械の管理と、機械で対応出来ないイレギュラー対応などを人間が行っているということだろう。

 SF映画でたまに見かける、100%機械が食事を提供してくれる世界がいずれやってくるのかもしれないが、2019年現在においては、なかなか難しいのではないだろうか?

 そして、我々が携わる社会インフラ維持管理の世界においてもそれは変わらない。

 2012年12月2日に発生した笹子トンネル天井板落下事故を受けて、国土交通省は、国内全てのトンネル(約1万本)と、橋長2m以上の橋梁(約73万橋)に対し、5年に1度、人が手で触れられる距離まで近接して実施する点検を義務化した。

 それまで近接目視どころか、遠望による点検すら実施してこなかった地方公共団体などにとって、点検費用の為に予算を作ることが大きな課題となったのは言うまでもない。

 「特殊高所技術」は「従来技術に比べ、コストの縮減、工期の短縮、安全性の向上がはかれる」と案内してきたが、今までコストをかけていないところではそもそも比較のしようがないし、どれだけ安価であったとしても、短期的にはコストが上昇しているのは間違いないだろう。

 「適正な維持管理を行うことによって、ライフサイクルコストが縮減出来る」
 何年か前によく聞いた話だが、5年に1度近接目視を実施することがそれに繋がるのかどうかはなんとも言い難いところだ。

 「特殊高所技術」が活用される現場においては、数十年間近接目視点検が実施されてこなかった所が少なくない。
 そして、ほぼ毎年だが、「特殊高所技術」によって近接目視点検を行ったことによって、重大な損傷が発見され、1週間以内に通行止めが決定した橋梁が10橋程度出てくるのも事実だ。


特殊高所技術による点検

特殊高所技術を用いた点検の結果、全面通行止めとなった橋梁も

 お金がないから出来ませんでは済まされないぐらいに、社会インフラ事故が及ぼす影響は大きく、そして大変悲しいものだ。私自身も、可能であるならば維持管理の導入部分である定期点検のコスト縮減、ライフサイクルコスト全体の縮減にも繋がる方法を見つけたいといつも考えている。

 そして、数年前から、ドローンやAIなど、先進的な技術によって、人間が実施している業務を代替えする研究が各所で行われ始めた。人的なリソース、コストなど、課題はたくさんあるものの、明確な解決策が無いままに始まった5年に1度の近接目視。

 国土交通省は、精度の高い点検方法を義務化したのと同時に、「NETISテーマ設定技術の募集」で、「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム」を公募した。

 これは、民間力で、今は無い新たな技術の開発に期待することによって、答えの無い問題に解決策を見出したいという思いの表れであったように思う。 


出典:国土交通省ホームページ 次世代社会インフラ用ロボット現場検証結果報告 より

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