道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」④

「施工状況把握チェックシート -品質確保の効果と協働関係の構築-」

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 

細田 暁 氏

公開日:2016.01.01

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」
①寺小屋から全国へ それはコンクリートよろず研究会から始まった「コンクリート構造物の品質確保とコンクリートよろず研究会」
② 山口県のひび割れ抑制システムの構築 -不機嫌な現場から協働関係へ-
③「ひび割れ抑制システムから品質確保システムへ -施工の基本事項の遵守と表層品質の向上-」
の続きです。

1. 初体験

 私は、2012年10月11日(木)に初めて、施工状況把握チェックシートを使っての現場でのコンクリートの打込みの施工状況把握を体験した。2009年3月に山口県のひび割れ抑制システムに出会ってから3年半も経過し、日本のあちこちでこのシステムの素晴らしさを説明している張本人であったのに、システムの主要ツールの一つであるこのチェックシートを現場で実際に使ったことが無かったのである。実践を信条とする研究者・技術者として恥ずべきことであると反省する。この日に行われた、下関のボックスカルバートの現場で行われた施工状況把握の研修会1)にはどうしても参加したかった。3限に学部3年生用の必修のコンクリート構造の演習が予定されていたが、それらの複数の業務もキャンセルしてこの研修に参加した。
 研修は、現場近くの事務所での座学からスタートした(写真1)。講師は山口システムの構築から関わってきた森岡弘道氏が務め、受講者は山口県職員が20名、下関市の職員が6名に加え、筆者および広島大学の半井健一郎准教授であった。参加者には2章で説明する山口県の開発したe-learningの事前学習を義務付け、座学においては施工の基本事項の遵守が行われない場合、どのような不具合につながるのかが説明された。
 座学の後、ボックスカルバートの現場に移動した(写真2)。この日は側壁と頂版の打込みであった。段取りが適切な現場は整理が良くされているのが常であり、二宮純氏はよく「足場板の配置を見ると、現場が打込みのことをどれだけ計画しているのかが分かる」と言う。この現場においても、足場板が適切に配置されていた(写真3)。施工状況把握チェックシートの内容や効果については2章以降で述べていくが、施工計画や段取りが適切になされるようになることがポイントであり、この現場においても、バイブレータの挿入箇所が型枠にマーキングされており、適切な準備がなされていることが一目で分かった(写真4)。
 筆者は、写真5でバイブレータにより締め固めている作業員と会話をした。「鉄筋にバイブレータを当てずに締固めを行うのは難しくないですか?」と聞くと、「簡単です」と答える。「コンクリートにバイブレータが届いてから後ろにいるスイッチマンがスイッチを入れてくれる。締め固めた後、引き上げるときはスイッチを切ってくれる。だから、鉄筋に当たりっこない。」と作業員が自信を持って答える。このように現場の意思が統一されることが、山口システムの真髄の一つなのだろう、とこのとき肌で感じた。



 現場の研修では、施工状況把握チェックシートにすべて記入することが難しいと筆者は感じていた。施工者に聞かないと分からない情報や、判断そのものが難しい項目もあったからである。
 この日の研修では、事務所に戻ってふりかえりが行われた。施工会社からも2名参加してのふりかえりとなった。班に分かれて議論し、感じたことや判断が難しかった項目などを各班の代表者が発表し、施工者、学者も交えて議論を行った。その過程で、真に品質確保を達成するための様々な視点が交わされ、参加者にとって有意義な研修になったことを実感した。
 この研修の後、筆者は山口県や横浜市の現場で施工状況把握チェックシートを活用した施工状況把握を何度か経験し、現場での研修の指導役も務めることもあった。その過程で筆者の施工状況把握チェックシートについての理解も大いに深まった。その甲斐あって筆者らのプレゼンテーションにも迫力が伴うこととなり、2012年12月下旬に東北地方整備局が品質確保のチャレンジに踏み切ることにも至るのである。筆者は、様々な局面において、現場の重要性を痛感している。

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