道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ④独創のコツ、なぜ研修制度は機能しないのか

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2015.08.01

 前回「道路メンテナンス会議」の役割と国内外で起こった事故、事故を生かすことが困難な現体制にについて何が課題かを述べた。今回は、「メンテナンス会議」における解決すべき課題としている技術者育成について考えてみる。

時代を変えた偉大な英国人 ブルネル  独創のコツは日々の努力とここ一番の勇気

1.土木技術分野の技術者像

 人類は、身を護り生きることを目的として種々な道具を使い、その結果、高い技術を身に付けてきた。安全で快適な生活を求め、多岐にわたる技術を獲得し発展させてきている。技術の獲得から発展をさせる推進者が技術者・エンジニアである。『古き昔の技術者・エンジニアとは、経験や工夫を通してものづくりを成し遂げる技術者であったが、近代は、現象・事象の成り立ちを解明する科学とものづくりに直結する技術が協同する時代へと推移し、技術者も教育や訓練を受けて、専門家・エンジニアへと変身した。』と「ブルネルの偉大なる挑戦」日刊工業新聞社・2006.8で筆者の佐藤建吉氏が述べている。

写真-1 グレート・ブリテン号のスクリュー(ブルネル)

 佐藤氏は、金属疲労(フレッティング疲労)の研究家であるとともにイギリスの著名なエンジニアであるブルネルの研究家としても有名である。

 ブルネルは「時代を超えたエンジニア」と言われ、父親でイギリス・テムズ河底トンネルを現代のシールド工法の祖となる技術で完成させた機械・土木のエンジニアの長男として1806年に生まれた。イギリスで「時代を変えた偉大な英国人」として評価が高く、現状を打破し、革新を作り出すキーパーソンと言われ、本名はイザムハード・キングダム・ブルネルである。ブルネル父子の偉業は、私が関係している橋やトンネルだけでなく鉄道、駅舎、船舶(グレート・ブリテン号他)等都市交通インフラストラクチャー全般に及んでいることである。父子の行った設計・施工技術は、それまでの設計概念や工法を打開し、新たなシビルエンジニアの時代を切り開いている。

 ブルネルが関与した著名な橋は、クリフトン吊り橋とロイヤル・アルバート橋がある。クリフトン吊り橋は、イギリス・ロンドンの西側に位置するブリストルの西部に流れるエイボン川の高さ70㍍を超える渓谷を結ぶ橋長215㍍、吊り橋部が192㍍のアイバーチェーンの美しく、優美な外形を持つ名橋である。私もクリフトン吊り橋がどのような橋梁かを見に行ったが、橋は当然のごとく外形の美しさと構造の素晴らしさは感動したが、それよりも橋下に流れるエイボン川の泥土層のような土緑色した河床と両岸の緑の対比がなんとも奇妙な感を覚えたのを今でも覚えている。

写真-2 クリフトン橋から望む奇妙なエイボン川

 ブルネルの話に戻すと、ブルネルは、我々現代の技術者と同様なタイプの教育をベースの育つエンジニアであることである。偉大さは桁違いであるが、彼は、フランス・ノルマンディーのカールカレッジ、パリのアンリ4世校などで数学と図学を学び習得した後に母国イギリスに戻りエンジニアとして活躍を始めた、新しいタイプのエンジニアである。ブルネルと同様な道を辿った技術者は山ほどいるであろうが何故彼は卓越した能力を身に付けたかである。ブルネルは、教育で得た知識によって設計を行い、努力と独創力(想像力)によって従来の枠組みや権威と立ち向かい、種々なことに挑戦しつづけたことが彼の名声と人気を得た肝である。私の好きな言葉に代数幾何学で有名な数学者・広中平祐先生の言葉にある。

 広中先生は、「独創のコツ」を『第一に、結果がどう出るか分からないのにコツコツ努力を続けること。第二には、ここ一番という時に打って出ていく勇気、博打根性といってもよいものを持つこと。この両方が無いとせっかくもっている力も出し切れない。』と言っている。私個人としても、技術者に最も必要なことがこれではないかと思い、かなり前から座右の銘としている。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム