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塗膜くずから可燃性ガスが発生、底部に滞留して引火の可能性も

中日本高速道路 東名中吉田高架橋塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会第2回会合を開催

 中日本高速道路(NEXCO中日本)は21日、「東名高速道路 中吉田高架橋 塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会」(委員長:伊藤義人名古屋大学名誉教授、右肩写真)の第2回会合を開催した。

 昨年11月21日に発生した火災は、2日間の作業による水性塗膜剥離剤を含む塗膜くずが現場に堆積していたことで、水性塗膜剥離剤に含有するアルコールが気化して可燃性ガスが発生、火災当日は足場内に自然通風がある程度確保されていたことから換気設備を稼働していなかったことにより足場内の底部にガスが滞留して引火、もしくは塗膜くずや養生シートに何らかの原因で引火して延焼した可能性があることが明らかにされた。現場では、塗膜くずの搬出は週1回の頻度で行っており、当日は上り線側に約400kg、下り線側に約1,150kgの塗膜くずが堆積していた。引火原因は、現段階では不明であるとしている。洗浄や素地調整で使用する溶剤(シンナー)については、足場内に持ち込んでいないという。



塗膜くずの堆積状況(NEXCO中日本提供、以下同)


 第1回会合後にNEXCO中日本は委員会の意見をもとに、点火源や可燃物となりえるリスクの抽出と可燃物の延焼性を確認するための実証実験を実施。事故現場内の足場にあった養生シート、塗膜くずについての検証を行った。

 養生シートは防炎性の足場養生シートの上に、非防炎性・非難燃性のポリエチレンの養生シートを2層積層していたが、実験では点火に対して一時的に燃焼して溶解するものの、自消し燃え広がるなどの延焼性は確認できなかった。塗膜くずに関しては、養生シートに引火した火は塗膜くずに延焼することが確認されるとともに、塗膜くずから塗膜剥離剤の成分であり、空気より比重の大きいアルコール系の気化物質が発生することが確認された。NEXCO中日本では、塗膜くずから可燃性ガスが発生することは想定していなかったという。

 これらの実証実験結果から、冒頭のような延焼メカニズムを想定し、暫定的な再発防止策を策定して、同日の委員会で発表された中間とりまとめ(案)に反映された。

 暫定的な再発防止策(案)では、・塗膜除去工の作業中は、作業に伴い火花が出る工具の足場内への持ち込み禁止の徹底、・足場内で使用する養生シートはすべて難燃性能または防炎性能を有するものとすること、・塗膜くずは足場外に少なくとも1日1回以上の頻度で搬出すること、・常時換気とともに、ガス検知器を作業班ごとに配備し、可燃性ガスが滞留しやすい低い位置で測定を行うこと――などが盛り込まれた。



暫定的な再発防止策(案)①


暫定的な再発防止策(案)②


 今回の会合では委員から、①発注者、受注者および作業者の間で安全ならびに最悪事態の回避の意識の徹底・共有を図ることができる仕組み、ツールの検討が必要、②火災感知器、火災報知器については、煙感知型が有効と思われるので適切に機種を選定すること、③火災事故再発防止策暫定案については、実際に現地で検証し、最終とりまとめに反映させること――という3点の指摘がなされた。

 第3回委員会では、委員会で指摘のあった項目ならびに関係機関の検証結果から得られた新たな知見等の再発防止策への反映を検討していく。開催時期は未定。

 NEXCO中日本では火災事故後、塗膜剥離剤をともなう塗替え工事46件を止めているが、今回の暫定的な再発防止策(案)の対応が完了した現場から、できるだけ早く工事を再開したいとしている。(大柴功治)


【記者の目】

 現場の塗膜くずの搬出を火災事故再発防止委員会は1週間ごととしていたと認定した。『土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改訂第2版』の4.3.7には「除去塗膜は周囲への飛散、漏洩を防止して、あらかじめ定められた場所に保存する」と書かれており、さらにその解説として「除去塗膜は作業後直ちに資材置き場などの定められた場所に移動し、保存することが望ましい」とされている。まずはこれを徹底することが必要だ。「直ちに」という文言は、できるだけ速やかに、という意で読解することが適当であり、作業効率性よりも安全性を優先することは当然であろう。

 また、同ガイドラインの6.2安全対策では②火器に関する注意の項で今回想定している原因も含めた様々な注意を喚起しており、主に有機溶剤を想定して、空気よりも比重の重い成分に対しては特に注意するよう記されている。今後は中間とりまとめで記されていたようにアルコール成分についても現場で濃度を検査していく必要があろう。

 いずれにせよ、今回対策の柱となる塗膜くずの排出頻度を1日1回以上行い火事の原因を除去することと、換気設備の常時稼働などの対策の徹底が火災事故を起こさないための必須条件といえる。(井手迫瑞樹)

(2020年1月23日掲載)