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コストを670万円、車線規制日数を6日間短縮

岐阜大学SIP実装プロジェクト第6回報告会を開催―ロボット技術を活用して各務原大橋を定期点検―

 各務原市と岐阜大学工学部付属インフラマネジメント技術センター、岐阜県建設技術センターは、2月27日に各務原市の市立中央図書館において「岐阜大学SIP実装プロジェクト第6回報告会―ロボット技術を活用した各務原大橋の定期点検結果の報告―」を開催した。各務原市が所管する一級河川木曽川に架かる各務原大橋(橋長594m、10径間連続PCフィンバック橋)について、ロボット技術を用いた事前点検を行うことにより、効率的かつ精度が高く、点検コストの縮減、規制の短縮を目指したもの。今回の点検では、従来の近接目視点検に比べて、ロボットを事前点検に活用した上での近接目視を行うことによりコストを670万円縮減(3,070万円→2,400万円)でき、車線規制日数も10日から4日に6日間短縮できた。今後は道路橋定期点検要領(案)の改定において、発注者判断によりロボットの活用も採用できることから、同橋で発揮した成果は援用できる有力な技術といえそうだ。(井手迫瑞樹)


 同SIPのプロジェクトリーダーを務める岐阜大学の六郷恵哲特任教授(右上写真)は開催挨拶で「2年半前にSIPを開始し、様々な橋梁でのロボット点検技術の試行を経て、1年前には『ロボット技術を取りいれた橋梁点検指針(案)』を地方自治体向けに出すことができた」と述べた。そして「その指針を使って、各務原大橋について昨年11月にロボット技術を用いた事前点検を行い、今年2月には事前点検を踏まえて近接目視点検を行うことができた。こうした新技術の導入というのは大学が関わらないと難しいことであるが、それもSIPという大型プロジェクトがあったからこそできたことであり、今後もこうしたプロジェクトが必要である」と語った。また、ロボット技術を用いた点検という新しい技術の使われにくい課題としては、「法令に合わない、未完成でまだ使えない、使い方がわかりにくいといったものがあったが、これを官学民がSIPの中で対話して対策を立てていくことで、一つ一つ改良していくことができた」と話した。


県内外から161人が参加した


 まず大日コンサルタントの矢島賢治氏とテイコクの古澤栄二氏が各務原大橋のロボット技術を用いた点検結果について報告した。

 今回の点検対象部位は同橋の桁下および支承、下部工のコンクリート。これらの変状を富士通と名古屋工業大学が開発した二輪型マルチコプタ、デンソーが開発した可変ピッチ機能付きドローン(以上ドローン系)、三井住友建設と日立産業制御ソリューションズが開発した橋梁点検ロボットカメラ、ジビル調査設計が開発した橋梁点検カメラシステム(以上ロボットカメラ系)、新日本非破壊検査が開発した打音機能付き飛行ロボット、日本電気が開発した打音点検飛行ロボット(以上打音点検ロボット)で撮影、計測および打音点検した。その後、大型橋梁点検車「AB1400X」や特殊高所技術による近接目視および打音点検も行い、ロボットによる計測の正確性についても確認した。

 調査方法は各ロボット技術の特徴を生かすために広域調査と狭域調査の2種類の手法を試行した。広域調査(ドローン系)では広い視野での写真撮影ができ、迅速な調査や3Dモデリング、オルソ写真による損傷状況把握ができる。その反面ひび割れは幅0.3mm以上しか識別できない。一方で狭域調査(主にロボットカメラ系)は部材に近接して狭い視野で撮影するため0.2mm以上の細かなひび割れを計測できるが、現場調査に時間がかかり膨大なデータ処理が必要となるなどのデメリットがある。支承の点検についても小型の2輪型マルチコプタを使った接写による点検を行った。

 打音検査は、上部工についてロボットカメラ系を用いたサーモグラフィ調査によって浮きの疑いがあると判断された部分を、新日本非破壊検査の打音検査で確認した。同工法は、打音によって音の波形スペクトルを抽出し、異常を診断するもの。下部工は日本電気の開発した打音点検飛行ロボットによって取得した音を聞いて、浮きがあるかどうかを判断した。これらの情報を複合的に活用することにより、より良い点検を追求することができそうだ。

 また、点検結果は3次元画像データや、詳細な変状マップに位置データを与えた状態で結果を取りまとめる(2D変状図(オルソ画像背景+詳細画像の紐付けまたは3Dモデル(形状のみ)+変状マップ+詳細画像の紐付け))ことができるため、解析時は従来よりも飛躍的にデータを理解しやすくなっている。


 次いでユニオンの溝部美幸氏がロボットによる事前点検後の近接目視による結果について報告した。

 点検車や特殊高所技術を用いて、これらの健全性Ⅱ以下の0.3mm以上のひび割れ発生個所と主桁側面のひび割れ(0.3mm未満)密集発生箇所、浮き剥離が疑われる個所および主桁中央部などロボット点検が困難な個所について定期点検を行った例を示した。近接目視結果では、蜘蛛の巣やノロなどをロボット調査において拾ってしまう例があることや、画像補正からひび割れをより大きく検出する傾向があることなどが示された。但しひび割れの見落としはほとんどなく精度が高いことも分かった。一方でデータ量は膨大なものになるため、取得映像から変状を自動検出して技術者が妥当性を判断できるような効率的な検出機能の追加も必要であるようだ。

 各務原市都市建設部の中村俊夫道路課長は、ロボット点検技術を事前調査にもちいたことで、コストや工期が大幅縮減されたことについて示した。その上で年度末にも改定される道路橋定期点検要領に発注者の任意によるが、点検にロボット技術などが活用できるようになることについても触れ、期待感を示すとともに、「ロボット技術は一つで完結するものではなく、人による近接目視も全く要らなくなるわけではない。各技術をうまく使い分けながら、点検成果の高品質確保とコスト縮減の両立ができるよう期待したい」と述べた。


 休憩後、ロボット技術点検を取り入れた橋梁の今後というテーマで岐阜大学の羽田野英明氏がロボット技術を取り入れた橋梁の今後について、主に鋼橋点検へのロボット技術の実施例について報告した。土木研究所の新田恭士氏は、ロボット点検の社会実装に向けた取り組みについて、国内の取り組みや米国の技術を用いた3次元ビューワーの紹介、膨大なデータを処理するためのインフラプラットホームやAI技術の開発などの進捗状況について話した。また、鳥取大学の黒田保氏は鳥取県の江島大橋での実証試験に基づく「ロボット技術を活用した橋梁点検指針(案)」について報告した。(2019年3月4日掲載)