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設計地震動、地域別補正係数の妥当性については引き続き慎重に検討

熊本地震対応 ロッキング橋脚 完全自立構造を基本として耐震補強

8月にも再度委員会を開催予定

 国土交通省は24日、熊本地震による被災を受けて、道路構造物のあり方を見直すべきか判断するため社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会(委員長=三木千壽・東京都市大学学長)を開催した。その結果、落橋を招いたロッキング橋脚の耐震補強の考え方の明確化、地盤変状により被災した橋梁もある(阿蘇大橋など)ことから現行基準の配慮事項に地質・地盤調査、橋の構造形式、設置位置などを追記、南阿蘇橋などでは設計意図と異なる壊れ方をしたことから、全体の損傷携帯を制御する設計手法を基準類に反映する――などに取り組むことを決めた。また、盛土・切土・法面やトンネルについても被害状況に応じて議論し、個別対策に取り組むことを決めた。今後は内容についてより深く分析した上で、8月にも再度委員会を開催する予定だ。


H8道示以降の橋梁で被災したのは20橋に留まる

 斜面崩壊などで93箇所が通行止め 約半数が緊急輸送道路上

 熊本地震による被災は、橋梁182橋(震度6弱以上を観測した地域内約15,700橋のうち)で軽微な被災を被ったが、その殆どが布田川断層近くか阿蘇の外輪山周辺に集中している。また同地域における平成8年道示以降の基準を適用した橋梁は1,250橋あるが被災したのは20橋に留まった。被災した橋梁も落橋・倒壊などはなかった。但し「橋の機能回復が速やかに行い得る」ことが難しい橋梁は4橋あった(桑鶴大橋など)。土工部では震度5強以上を観測した地域を中心に斜面崩壊などが発生し、県道以上の道路のうち93個所で通行止めが生じた。そのうち46個所が緊急輸送道路に該当している。

 一方でトンネル被害は軽微だった。震度6弱以上を観測した地域のトンネルは234個所が該当するが、県道熊本高森線の俵山トンネル、および隣接する同線の南阿蘇トンネルの2個所のみが被害を受けた。但し大きな被害を受けたのは俵山トンネルのみだった。


橋梁の被災状況(以下、国土交通省配布資料より抜粋)


トンネルの被災状況


土工部の被災状況


速やかな機能回復が期待できる耐震補強を加速化へ

 ロッキング橋脚 やむを得ない場合は半自立構造も

 今回は、被害に基づいて橋梁では5点、土工では3点、トンネルでは1点についてそれぞれ課題及び論点を設け、議論した。その結果、斜面崩壊などによるものを除く落橋は、府領第一橋(高速道路を跨ぐ県道橋)と田中橋(益城町)で生じたがいずれも耐震補強が未実施だったこと、それ以外には落橋などが生じていないことから、過去に行った耐震設計基準の改定に基づき補強した施策は着実に効果を上げていることが確認できた。そのうえで耐震補強が未実施なため被害を受けた事例(熊本市道「中央線陸橋」)があることから、そうした箇所の補強についても着実な実施を求めていく。一方で速やかな機能回復が望めない橋梁は震度6弱以上が観測された地域の緊急輸送道路で12橋確認された。こうしたことから緊急輸送道路においては落橋防止対策だけでなく地震後速やかな機能回復が期待できる耐震補強を加速化する必要がある――ことが確認された。

 一部で落橋したロッキング橋脚を有する橋梁については、橋脚全体をRCで巻き立てて壁化し上下部も剛結する手法、上部もしくは下部を剛結し、一方の支承だけを存置する完全自立構造を基本として耐震補強していくことが決められた。但し高速道路を跨ぐ個所にあるため施工上の著しい制約も見られることから、次善策として橋脚全体をRC巻き立てかブレース材によって連結する一方、上下端のピポット支承は逸脱防止構造を設けた上で存置する手法を示した。これは橋軸方向には単独で自立できないが、橋軸直角方向には自立する「半自立構造」と言えるもの。橋軸方向の抵抗力は別途確保が必要となる。


ロッキング橋脚を有する橋梁の落橋


ロッキング橋脚の補強の考え方

 地盤変状による被災は、落橋した阿蘇大橋や橋台部が大きく損傷した阿蘇長陽大橋、斜面崩壊に一部が飲み込まれた戸下大橋、橋台が沈下して損傷した俵山大橋などがあったことから、現行基準の配慮事項に「地質・地盤調査、橋の構造形式、設置位置等の配慮以降を追記」することが提案された。

 また、平成8年道示以降の基準で設計されていた大切畑大橋でゴム支承の破断、南阿蘇橋で制震ダンパーが取り付けブロックごと外れているなど、設計意図とは異なる壊れ方をした橋があったことから、これについても「高い信頼性をもって全体の損傷携帯を制御する設計手法を基準類に反映」することにした。


設計地震動、補正係数の妥当性は慎重に検討 

 熊本県は地震動を0.85倍に補正する地域であるが、一部の周期帯でレベル2地震動の設計スペクトルを超えている地域(益城町など)があった。但し、平成8年道示を適用して耐震設計した橋梁では、致命的被害が生じていないことから設計地震動、地域別補正係数の妥当性については引き続き慎重に検討していく、こととした。


 土工分野においては、まず新旧河川(九州道秋津川橋橋台部など)付近の集水地形上の盛土や水辺に隣接する盛土が崩壊した事例があった。これは過去の駿河湾地震時における盛土崩壊の事例と類似していることから、現在、高さ10㍍以上の盛土で全国的に取り組んでいる対策を加速させるとともに、今回被災した盛土と類似の地形について対策を検討していく。また落石・岩盤崩壊についても多くの箇所で生じていることから、重要な緊急輸送道路から防災対策事業を加速化させることが必要、とした。


 トンネル分野については、最も大きな被害を受けた俵山トンネルでも、トンネル空間自体が閉塞するという致命的な崩壊はなかった。一方で、今回の崩落個所は、極端な地山の不良箇所であることを過去の建設時の記録などから確認できている。これを踏まえて、覆工の補強などを重点的に行うとともに、山岳トンネルの耐震の観点からの配慮事項の明確化を図っていく。具体的には①計画・調査段階において活断層の把握に努める、②設計段階や施工段階において、特殊条件(断層・破砕帯や地質の剛性が急変する箇所等で極端な地山の不良箇所や偏圧を受ける地形などを指す)を有する区間は十分な支保構造を構築する、③維持管理段階においては、特殊条件が存在し、定期点検で覆工に変状(主に外力を要因とした変状が対象。地山条件が影響している場合が多い)が見られた場合、変状の原因および進行状況を踏まえて補強を含めた措置を検討する――など。


 委員会後の取材で三木委員長は、「古い橋の耐震補強は新しい橋を造るよりはるかに難しい。それでも今回の被災状況を見ると、(阪神大震災などの知見に基づいた耐震基準の改定による)耐震補強対策は十分な効果を発揮していると言える。それでもゴム支承が破断したり、制震ダンパーの取り付け部が損傷して所定の性能を発揮できなかったりとした事例も見られた。こうした知見は、検討を加えられ次の対策に生かされることと思う。もう少し、結果を分析してから道路橋示方書も含め現行のどの部分に手を加える必要があるのか、それとも無いのか判断していきたい」と述べた。(2016年6月28日、井手迫瑞樹)