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ベント支柱の基礎部に不当沈下、それに伴う傾きが事故原因

新名神有馬川橋桁落下事故 中間とりまとめを公表

 西日本高速道路は19日、新名神有馬川橋桁落下事故に関する技術検討委員会を開催、中間とりまとめを発表した。P11側の吊桁を支えるベント支柱の基礎部に不当沈下が生じ、ベント支柱の傾きが進行したことを事故原因と結論付けた。今回ベント支柱の基礎を構築するにあたって、元請(横河ブリッジ)は、当該地のボーリング調査を行っておらず、周辺の数値を参考にして基礎や改良地盤を構築した。しかし、今回の中間とりまとめを発表するにあたって、当該地の地盤をボーリング調査したところ、改良した地盤の下に強度が低く変形しやすい層があることが分かった。これは過去の宅地造成時の盛土層であるということだ。こうしたことから今後の再発防止として仮設構造物の基礎の安定および変位に関して、ボーリングなどで地耐力の調査を行った上で、必要な対策を講じるとともに、対策された効果の確認を義務付けることなどが示された。また、不安定化しても桁落下まで生じさせない施策として、吊方式は(今回のような受梁ではなく)より安定的な直吊り方式を基本とする、一次的に片吊り状態になる時は、安全性が確認されるまで吊り支持移行前の支持状態を維持するとともに、支持側では今回のようなジャッキではなく、安全サンドルおよびサイドストッパーを設置することなどが示された。


沈下量および土質断面図(以下、西日本高速道路配布資料より抜粋)


今後の対応策

 前回の委員会では確認事項として①ベント支柱の鉄筋コンクリート基礎部の地盤状況を確認するためのボーリング調査、②A2仮受けジャッキおよびP11仮支承の摩擦係数の確認、③A2およびP11において桁を支えていた部材の耐荷力解析、④ビデオ画像解析による落下挙動の解析―――の4点が示され、各々確認が行われた。

 その結果、①では、有馬川側の沈下量と陸側の沈下量が異なるため不当沈下になった。②では実物の試料が入手できなかったため同種の試験片を用いて小型再現実験を行った結果、摩擦係数は、接合面の組み合わせによって0.05~0.24と変動が大きく、若干の揺動でも不安定になる可能性があった。③A2鋼管ベントとP11受梁はともに橋桁の荷重を直接受けて損傷したのではなく、橋桁が落下した衝撃により損傷したことが推測できた。④どちらが先に動き出したか特定できないが、ほぼ同時に落下したことが窺われ、また落下前に橋桁が3秒程度揺動、落下は大きく2段階で発生したことが分かった。

 

 これを受けて、事故メカニズムは、P11、A2どちらが先行したか分からないため、両方で推定した。

 A2側の推定メカニズムは、P11側のベント傾斜が進行したことにより、橋桁がA2側に押される水平力が生じており、A2側は仮受けジャッキ2基のみで支持されていた為、水平方向の安定性が損なわれ、結果的に北側A2仮受けジャッキから橋桁が逸脱し、反力バランスが崩れ、橋桁全体が揺動し始めた(ビデオ画像分析から橋桁が落下するまで約3秒このような挙動を示していることを確認している)。橋桁が南側に移動したことにより、南側A2仮受けジャッキから逸脱したため、橋桁は落下し、その衝撃で鋼管ベント柱は圧壊し、A2橋台の橋座へいったん落下(同様にP11側は橋桁が降下用受梁にいったん落下)し、最終的にA2側では国道176号上に南側へ18㍍ずれて落下した――というもの。 


A2側(左)およびP11側(右)推定メカニズム

 P11側の推定メカニズムは、事故原因はA2と同様にP11側のベント傾斜が進行したことにより、橋桁がA2側に押される水平力が生じていることでP11側も受梁上の仮支承2基のみで桁を支持していたためいったん水平方向の安定性が損なわれると南北どちらかの支承から桁が逸脱、橋桁の反力バランスが崩れて橋桁が揺動しはじめ、橋桁が降下用受梁にいったん落下(A2側ではA2橋台の橋座にいったん落下)し、この落下によりP11側では降下用受梁が大きく変形し降下用受梁受金具からずり落ちたため、橋桁はさらにP11到達用ベントへ落下(A2側では国道176号上へ南側に約18㍍ずれて落下)した――としている。


 橋桁の落下を防ぐことのできなかった要因としては、仮受ジャッキおよび仮支承2基での支持のため、若干の揺動が起きただけで一気に不安定化しかねない支持状況であったこと、一連の作業について橋桁および基礎部を含めた仮設構造物の状態(変位、傾きなど)について計測や監視が行われていなかったこと、P11側ベント支柱が進行性のある傾斜をしていたにもかかわらずP11側到達用ベントのジャッキを解体してしまい、受け直しができなかったこと――などを挙げている。


支持状況および事故当日の作業状況

 再発防止策は冒頭に加え、作業段階ごとに計測管理項目(変位、倒れ、反力など)とその管理基準値の設定、計測頻度とその記録方法、計測値が管理基準値を超過した場合の対処方法などについて事前に計画を求めることや、計測管理項目には橋桁、仮設部材に加えて仮設構造物の基礎部など大きな荷重がかかる地盤の状態についても含めることなどが示された。こうした指摘は全て西日本高速道路の設計施工管理に反映していく方針だ。


 また、有馬川橋工事の今後の対応としては、①指摘を反映した施工計画を立案し、再発防止を徹底、②作業段階ごとの変状を計測記録し、管理基準値との管理を行うこと、③送り出し完了から降下作業完了までの期間中は特に橋桁落下に対するフェールセーフを講じること――など求めた。具体的には例えば①においては吊下げ方式に拘ることなくサンドル設備による降下方法の採用も検討することを求めている。②においては各作業段階ごとの計測記録と管理基準値内にあることの確認、その情報共有、③は摩擦接合だけでなく、橋桁とA2橋台およびP11橋脚をPC鋼棒や鋼製ブラケットなどにより直接固定することも求めている。

 同委員会の山口栄輝委員長は「現場では様々な作業が同時進行している。その中には第三者に影響を与えるリスクもある。そのようなリスクが完全に解消されるまで、安全管理を適切に実施し、施工の難易度にかかわらず、施工精度をしっかり保つことが非常に重要だと感じた。そのためには土木学会の鋼構造架設設計指針などに基づいて現場の条件を踏まえた安全照査を踏まえて徹底的に管理していただきたい」と述べた。また事故の発生について「有馬川橋では桁の送り出しが終わった後、余野川橋では大ブロック架設が完了した後に起こっており、土木技術そのものに問題があったとは考えにくく、技術的難易度が高い工程を終えて、ある意味気が緩んだ時点で事故が起こったという感想を持った」とし、「最後まで技術の難しさにかかわらず十分な安全管理をしていただきたい」とした。


【記者の目】

 仮設構造物の地盤調査は、基本「施工者の判断」(西日本高速道路)。これはNEXCOだけでなく、自治体などの大規模構造物の送り出しやケーブルクレーンの架設においても元請である架設業者の「持ち出しになる」ことが多く、その後の協議で「どれくらい取り返せるか不安」ということをある大規模架設工事で現場の代理人から聞いたことがある。しっかりとした調査を行い、基礎を作ればそれに伴い費用はかかってくるわけで、コスト的に非常に悩ましいことは推定できる。今回の現場では、そもそも当該地の地盤調査を行っていないことが的確な仮設構造物基礎をできず、事故を惹起してしまったわけだが、元請も事前に地盤調査した近傍値を参考に、より安全側に構築したつもりであった――ことは想像に難くない。今回、委員会が提言し、西日本高速道路が導入する予定の「仮設構造物製作に当たっての地耐力調査」は、こうした事故を起こさないという意味で画期的であり、他の事業者にもぜひ広がってほしい施策と言える。

 また、ジャッキ支持、仮支承支持の不安定さの指摘、および安全サンドル、サイドストッパーの設置は当然の施策と言える。各段階での計測の徹底、管理基準値との照らし合わせによるリスクの検知などとも合わせ、大丈夫だろうという技術への過信、楽観主義を戒め、絶えずリスクから考える施工が、鋼橋ファブの信頼性回復にとって重要である。(2016年6月20日 井手迫瑞樹)