大成建設はPC橋梁ファブ大手ピーエス三菱に対して同社を子会社化する公開買い付けを行うと発表した。現在の筆頭株主であるUBE三菱セメントの有する全株式(ピーエス三菱発行済み株式の33.46%)と第2位の株主である太平洋セメントの全株式(同9.48%)を取得する。さらに過半数の株式を取得し、連結子会社化することを目指す。競争が激化するPC上部工の新設分野や高速道路各社の大規模リニューアル事業への競争力強化を目指すものと思われる。(井手迫瑞樹)
大成建設は、高速道路の橋梁を中心とした大規模更新工事では、比較的後発であり人員的にも厳しい一方で、ピーエス三菱は半断面床版架設工法など市場ニーズに応じた技術開発をいち早く進めたことによって、同分野で堅調に売り上げを増やし実績を上げている。一方で、大規模更新は、橋梁だけでなく法面やトンネルなど、長距離・広範囲に複合的な形で業務が発注されることが増えていることから、今後もPCファブが単独受注する案件は減少傾向にある。その状況に対し、両社がJVなどを組むことにより大きなシナジーが期待される、と考えたのであろう。
具体的には、長大化・広範囲化した発注案件に柔軟に対応可能となる、各地域に拠点を有するピーエス三菱のPC工場がより効果的に使えるようになる、資機材の共同調達によりコスト縮減が可能となる、両社の情報を集約化する形で架設・継手技術や材料の共同開発を行うことにより、技術開発が効率化でき、コストも縮減できるーーことなどが期待される。
新設上部工は、4車線化、6車線化などが新規発注される一方で、全体的には市場は縮小傾向にある。そうした状況下においても両社で技術開発や技術提案能力、コスト縮減効果など早期にシナジーを発現させることにより、受注拡大を図る。
完全子会社とせず、連結子会社としたのは、「対象者(ピーエス三菱)の現在の企業文化や経営の自主性を尊重することが対象者グループの企業価値を向上させるために重要であり、本公開買付け後も対象者株式の上場を維持することが適切と考えたことから、対象者を完全子会社とせず、連結子会社とすることが望ましいと判断」(大成建設プレスリリースより抜粋)したということだ。