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第3回事故調査委員会を開催 近く中間とりまとめを公表

清水立体橋桁落下事故 不安定な架台設置と桁・セッティングビームの内部応力残留が主要因

公開日:2023.09.14

 国道1号清水立体尾羽第2高架橋事故調査員会(舘石和雄委員長・名古屋大学大学院工学研究科教授)が12日、静岡国道事務所で開催された。3回目となる委員会では、事実関係、橋桁落下の要因をさらに詳細に検討し、その要因分析および再発防止策について議論した。落下要因については、「P4側(名古屋側)のセッティングビームが架台から外れたことで、セッティングビームに力が集中し、それと架設桁をつなぐ金具のボルトが破断したことで落下に至った」(舘石委員長)と結論づけた。事故原因と再発防止の調査、検討を行う委員会の目的は達成されたことから、近日中に中間とりまとめを公表する。


架設概要図/委員会で確認された事項(国土交通省中部地方整備局 事故調査委員会開催結果概要より抜粋。以下同)

想定される落下状況/落下状況から抽出される落下要因

 橋桁落下の根本原因となったセッティングビームが架台から外れたことについて、委員会ではふたつの要因に絞った。一つ目はP4海側の架台が不安定であったこと、二つ目は桁およびセッティングビームに内部応力が残留していたことだ。
 海側の架台は、既設桁のウェブ芯とセッティングビームのウェブ芯を一致させるために、既設桁からはみ出して設置されていた(山側はP4橋脚梁部があったが、海側は中空状態となっていた)。また、既設桁上のスラブアンカーを避けるために斜めに配置されており、サンドル材はボルト固定されていたが、既設桁と架台および架台と調整装置(ジャッキ)は固定されていない状態だった。これに対して、舘石委員長は「決定的にダメな方法だとは思わないが、確実性のある方法と比較すると不安定感は否めないサンドルの置き方だった」とした。設置方法は設計段階ではなく現場で決定されたとの見方も示している。


P4橋脚の架台配置(事故当日の作業状況再現結果)

P4橋脚付近の資機材飛散状況

 2点目の内部応力の残留については、約10cmの芯ずれを直すために橋桁を押したときに動かなかったことから、そのときに発生したことを想定している。そして、調整装置で再度位置を直すために桁をジャッキアップした瞬間に戻る形で桁のほうから動き出したとのことだ。ただ、現場ではその計測が行われていなかったので推定であるとした。
 同日には、再発防止に向けての提言骨子も公表された。骨子では、降下作業時の架台やセッティングビームの安全対策に加えて、計測管理とその記録、作業手順の順守などについての方針を示している。具体的には、・架台から桁を支持する際には集中荷重が作用しても桁フランジに局所変形が容易に生じないように、桁の補強を行ったり、桁を直接支持しない方法を検討する、・調整装置を用いる場合は、支点位置での変位量や反力を管理し、不安定な状態にしないように、鉛直、水平反力の不均等や傾斜を考慮した調整方法や監視方法とすること、などである。舘石委員長は、「工事関係者には、中間とりまとめの原因究明および再発防止策を踏まえて、今回のような悲惨な事故がないように、その壊滅に向けて取り組むこと」を要望した。

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