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軽量段差修正材「EPSスロープ」やFRP製軽量渡し板「F-Deck」を用いる

首都高速道路 地震防災訓練で路面段差と開きの仮復旧を実施

公開日:2023.08.30

 首都高速道路は30日、中央環状線大井北換気所敷地内で地震防災訓練を実施した。首都直下地震により橋梁ジョイント部に路面段差と開きが発生し、横転車両および滞留車両で通行できなくなった状態を想定し、緊急交通路として1車線を確保するとともに、路面段差と開きの仮復旧を行うもので、同社、同社グループ会社の首都高パトロール、首都高メンテナンス西東京、首都高技術、および国土交通省などから126人が参加した。
 東京西局の住吉英勝局長は訓練に先立ち、「当社には首都直下地震が発生した場合、救助活動、救援物資輸送等の緊急交通路として24時間以内に1車線を確保する重要な使命がある。この使命を全うするためには、日頃から高い危機管理意識を持ち、日々、訓練を重ねていくことが不可欠。今年は関東大震災から100年を迎える節目の年となる。本訓練の意義、重要性を認識し、緊張感をもって訓練に取り組んで欲しい」と挨拶した。


挨拶をする東京西局の住吉英勝局長(左)。訓練には126人が参加した

 訓練では、同社社員による被害状況確認の後、4tトラック程度まで牽引が可能なトーイングトラクターや、車輪の下に設置して車体を持ち上げるゴージャッキを用いた滞留車両の移動が行われた。路面段差を発見して急ブレーキをかけたため横転した車両は、レッカー車によって引き起こされた。車両が施錠されていると移動に時間がかかるため、「社内に鍵を置いて、施錠しない状態で退避することをお願いしたい」(住吉局長)とのことだ。なお、2014年11月の災害対策基本法の一部改正により、車両移動のための措置(窓ガラスを割るなど)が可能となっている。


パトロールカーに搭載した折り畳み自転車で移動し被害状況確認を行う/トーイングトラクターによる車両牽引

横転車両を引き起こした後、ゴージャッキを用いて移動させる

 30cmの路面段差の仮復旧では、首都高速道路と積水化成品工業が共同開発した軽量段差修正材「EPSスロープ」を用いた。土台部に発砲ポリスチレン(EPS)、表面補強層に繊維補強プラスチック(FRP)を採用して、軽量化かつ高強度を実現した。1部材のサイズは、長さ2,637mm×幅1,000mm×高さ320mmで重量約97kg。これを3分割することができるので、人力での運搬・設置が可能となっている(分割時の1部材最大重量は約34kg)。また、分割により210mm、120mmの段差にも対応する。両社では、より大きな段差被害に対応し、軽量土のう積み上げよりも作業効率の向上が図れる「EPSフラットブロック」も開発しており、今回の訓練でも使用した。


EPSスロープ。3分割して運搬・設置

EPSフラットブロックの設置

 路面の開き(50cm)に対しては、首都高速道路と宮地エンジニアリング共同開発のFRP製軽量渡し板「F-Deck」で仮復旧を行った。FRP形材と平板を組み合わせて接合した構造のため、約30kgと軽量で人力での運搬・設置ができる。サイズは長さ1,400mm×幅700mm×高さ90mmで、500mmの開口部、300mmの段差まで対応するとともに、設計輪荷重が10tであるため、大型車両も通行可能である。


F-Deckの設置。短時間で作業は完了した

 F-Deck上などには、約25kg/枚のゴムマット(首都高速道路・パシフィックコンサルタンツ共同開発)を敷設した。両社では、約5kg/袋の軽量土のうも共同開発をしている。


ゴムマットの敷設と軽量土のうの設置/仮復旧完了

 従来は、土詰め土のう(約25kg/袋)と敷き鉄板(約800kg/枚)による路面段差修正が一般的であったが、これらの部材の活用により運搬・設置の作業効率向上が図れ、迅速な対応が可能となっている。

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