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P4橋脚に生じた約10cmの芯ずれを直すためのジャッキアップ中に桁が落下したと推定

国道1号清水立体尾羽第2高架橋事故調査委員会 第二回会合を開催

公開日:2023.08.09

 国道1号清水立体尾羽第2高架橋事故調査委員会の第二回会合が8日、静岡国道事務所で開催された。舘石和雄委員長は桁の落下状況について、ヒアリングや警察からの情報提供、構造解析などを行った結果、「横取り作業は既に完了しており、ジャッキダウンも90mm程度完了した段階において、P4橋脚に生じた約10cmの芯ずれを直すため、山側の調整装置の水平ジャッキ1基で直そうとしたが、何らかの理由で動かず、調整装置のストロークをゼロに戻した後、ジャッキダウンし、桁を一旦預け、左右の調整装置で再度位置を直すために桁をジャッキアップしていた際に事故が起きたと推定される」と説明した。今後は両支点部に何らかの事故が起きた要因があると考えられることから、ジャッキが安定していたかどうか、サンドルの固定状況に問題がなかったか、全体の変位の連携・連鎖、などについて調査していく方針を明らかにした。なお、ジャッキダウン残量はP4が0.18mに対し、P3は0.75mであった。


現地調査に基づく分析状況(国土交通省中部地方整備局部ルーフィング資料より抜粋、以下同)

横取り設備と効果設備図/使用した調整装置

施工手順(左から右に読んでください、拡大推奨)

横取り作業状況、(左)P3、(右)P4

横取り、降下作業状況(P3)

 桁は全体的に海側に落下した。P3(東京側、サンドルで支持)とP4側(名古屋側、セッティングビームで支持)を比べると、P3側がより海側に落下していた。P3側の主桁は傾斜して、長い延長に渡って路面にめり込み、P3橋脚上のサンドルは橋脚の上から落下して路面上に飛散していた。P4側の主桁は落下した衝撃で路面が陥没したが、P4橋脚上のサンドルはP4橋脚の上に留まっていた。セッティングビームのコネクションプレートが先行破断(下記後述)したことにより、衝撃が緩和されたという事だろうか。


桁落下全体状況/P3、P4橋脚付近の落下した桁の状況

 P3橋脚付近で特徴的な事象は、撤去した際の吊り上げ時に主桁の下面を観察すると、横方向に多数の傷がついていることが確認できた。サンドルで受けていたであろう支点付近で、板の局所変形が少し生じていた。P3橋脚上に桁が落下した際、P3橋脚上の支承と当たって付いた傷が確認できた。


P3付近桁落下状況

 P4橋脚付近で特徴的な事象としては、セッティングビームのコネクションプレートのボルト孔が、上下方向に引き伸ばされた形で塑性変形していた。同箇所のボルトは全て破断して飛散していた。

コネクションプレートの損傷状況


P4付近桁落下状況

 これらから桁はP4側から先に着地したと推定した。下フランジの傷から考えるとP3側は橋脚の梁に当たりながら海側へ落下し、落下の直前にセッティングビームのコネクションプレートに大きな力が作用したと考えられる、とした。

 今後は、関係者に対するヒアリングをさらに行い、事故の再現実験をリアルないしバーチャルで行っていく方針で、第3回会合は4週間後をめどに開催される予定だ。(井手迫瑞樹)

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