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2度とこのような事故が起こらないようにしっかりと検証

「国道1号清水立体尾羽第2高架橋事故調査委員会」を開催

公開日:2023.07.11

 国土交通省中部地方整備局静岡国道事務所は11日、静岡市清水区尾羽で建設中の国道1号静清バイパス下り線、1号清水立体尾羽第2高架橋鋼上部工工事で生じた事故を検証する「国道1号清水立体尾羽第2高架橋事故調査委員会」の第1回会合を開催した。
 舘石和雄委員長(名古屋大学大学院工学研究科教授、右上写真)は、亡くなられた2人の方に哀悼の意を示すと共に、「今回使われた横取り架設工法は一般的な架設工法で、今後も使う機会は多いと考える。2度とこのような事故が起こらないようにしっかりと検証していきたい」と述べた。委員は舘石委員長のほかに白戸真大・国土技術政策総合研究所橋梁研究室長、廣畑幹人・大阪大学社会基盤工学講座構造工学領域准教授が務めている。

 桁落下が生じた推定工程は、横取り施工時あるいはその後のジャッキダウン時としたが、「送り出し時も含め、全ての工程を精査していく」(舘石委員長)とした。ただし、「工事従事者も警察の事情聴取がすすめられており、関係資料も押収されている」(国土交通省静岡国道事務所)ため、検討は捜査が一段落してからとなりそうで、国道上の落下した桁の撤去も警察による実況見分が全て完了した後となる。
 検討の重点項目として、舘石委員長は「資機材が適切であったか、作業手順が適切であったか」などを精査していくと共に、施工だけでなく設計も含めて議論していく方針を示した。
 その上で少なくとも本工事については、「委員会が完了し報告がなされるまで、中止する」(同事務所)としている。

 さて、資料を見ると、一方はセッティングビームによる支持、一方は橋脚梁上の支持である。示された概略図面を見ると、横取り設備がG1桁を最終的に載せる支承上に配置しているように見える。送り出しや横取りによる架設は桁の動きだけ見ると動いている時が難しく見えるが、施工に詳しい技術者は口をそろえて「ジャッキダウン時が一番怖い」という。そのため施工時の安全については非常に気を遣う。横取り時は通常、作業範囲以上滑らないように端部にストッパーを設置して落橋を防ぐ、さらに横取り梁にテープや罫書きなどを設けて進捗状況を適切に把握しながら施工する。ジャッキダウン時は同様に横滑りしないように桁落下防止用設備を設けて、左右の高さ調整に細心の注意を払い、さらに左右のいずれかは必ず安定したサンドルで受けるように施工する。


工事概要図/当日の作業内容(国土交通省静岡国道事務所配布資料より抜粋、以下注釈無きは同)

G4から今回事故の起きたG1側に4%の横断勾配/P3~P4横取り・降下詳細図

反対側の橋脚梁上の横取り設備、桁落下した箇所の設備も同じ構造であったのだろうか(井手迫瑞樹撮影)

今回事故の起きた桁は、桁が広がる配置となっている/P4近傍のセッティングビームの構造

落下した桁をP4側から見る(井手迫瑞樹撮影)

同P3側から見た状況(井手迫瑞樹撮影)

落下した桁を川を挟んで側面から見る

 ただし、本工事はG4桁側から端部のG1桁側に4%の下り勾配であること、桁に張出ブラケットがついている構造で偏心しやすい構造であること、架設時においては単支間であり支持構造が前後で違うこと、桁がG2~G4と違い、外に広がる配置であること、横取り軌条桁がG1を据え付ける支承の上に配置されており、ジャッキダウン量が大きくなることなど、施工的には比較的難しい条件がそろっていた。設計の際に施工をどのように考慮したか、また施工計画も適切であったのか、実際の当日の施工状況も含め、委員会の一刻も早い報告が待ち望まれる。(井手迫瑞樹)

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