鋼桁のジャッキアップを行い既設床版撤去
NEXCO中日本 中央道多摩川橋で現行車線を確保して床版取替工事
中日本高速道路(NEXCO中日本)八王子支社は、中央自動車道の国立府中IC~八王子IC間に架かる多摩川橋で床版取替工事を進めている。同橋は橋長428.3mのPC単純ポストテンションT桁橋(20.47m)+鋼3径間連続合成鈑桁橋×3連(387.36m)+PC単純ポストテンションT桁橋(20.47m)。
多摩川橋(大柴功治撮影。写真はすべて同)
1967年12月の供用から約55年が経過し、コロナ禍前の交通量が約68,000台/日(大型車混入率約20%)という重交通であることや凍結防止剤散布の影響などにより既設RC床版(厚さ160mm)に損傷が発生しているため、大規模更新事業として上下線の鋼橋部の床版全面(約9800㎡)をプレキャストPC床版に取替えることとした。施工は、オリエンタル白石・日本橋梁JV。
本工事では交通への影響を最小限にするために、中央分離帯を改良して新たに2車線分の走行路として活用し、現行の片側2車線を確保していることが特徴だ。これにより「これまで渋滞は発生していない」(NEXCO中日本)という。施工は車線をシフトしながら行われ、中央分離帯部、下り線、上り線の順番で床版取替えを行っていく。
現在は中央分離帯部を施工中で、その工程は上下線間への増設桁の設置、既設床版の撤去、既存鋼桁の補強、新設床版の架設となっている。既設床版の切断、剥離、撤去、新設床版の架設という通常の床版取替よりも工数が多く、さらに供用中の車線横の狭隘な施工ヤードということもあり、施工に時間を要する困難な工事となっている。
全体工程(左)と中央分離帯部の工程(右)(NEXCO中日本提供)
供用中の車線に挟まれた狭隘な施工ヤード
上下線一体構造の橋梁とするための増設桁を設置した後、既設床版の撤去を行うが、その施工にあたっても課題があった。建設時のRC床版は鋼桁をジャッキアップしたうえで床版コンクリートを打設し、強度発現後にジャッキダウンをすることにより床版に橋軸方向のプレストレスを導入している構造となっていたのだ。このプレストレスを開放しないと、既設床版撤去時に座屈の可能性があった。そのため、地覆部を先行撤去した上で、鋼桁のジャッキアップを行い、プレストレスを開放した上で既設床版の切断、撤去をした後、ジャッキダウンをするという施工を行っている。また、合成桁で上フランジに多数のずれ止めジベルがあることから、床版剥離作業は行わず、ワイヤーソーで上フランジ上の床版を4cm以上残した状態で水平切断して、残りをチッパーで斫っていくという作業も加わった。
既設鋼桁の補強は、上フランジ・下フランジ部には当て板、ウェブ部にはL型部材の設置を行っている。これらの作業を1連(3径間)ごとに行い、完了後に新設床版の架設に移行している。各工程のサイクルは、増設桁設置が約6m/日、床版撤去が地覆部約20m/日、床版部約15m/日、既設鋼桁補強が約5m/日ということだ。
既設鋼桁の補強
床版の撤去・架設は、狭隘な施工ヤードのために大型クレーンを用いることができず、本現場用に製作した門型クレーンを採用した。高さは約7m、重量は約22t、吊り装置は15t吊ホイストクレーンを使用し、レール上を自走する構造で2基配置している。
新設床版は橋軸方向約2m×橋軸直角方向約8mのサイズで、床版厚は230mm、重量は約10t。これを1日あたり8枚架設していく。架設枚数は中央分離帯部で1連61枚×3連=183枚、上下線あわせた全体数では549枚に達する。継手はエンドバンド鉄筋を用いて床版厚を薄くすることができるSLJ工法を採用した。
床版取替機による新設床版の架設
継手はSLJ工法を採用
側径間のPC橋部については、増設桁の設置を行った上で上面増厚を行う。足場は、先行床施工式フロア型システム吊足場「クイックデッキ」を採用している。