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送出し部材長は約170.5m、総重量約714t

熊本県 (仮称)第二天草瀬戸大橋 桁長90m、R=550mの曲線桁を8日間で送出し

公開日:2022.04.12

 熊本県は、天草上島と天草下島をつなぐ「(仮称)第二天草瀬戸大橋」の本渡瀬戸航路をまたぐ桁を、3月28日から4月3日および4月5日の計8日間で送出しにより架設した。施工は日立造船。
 架設したのは、支間長100m のP14~P15径間の鋼床版箱桁(1BOX)で、桁長90m、鋼重480t。手延べ機(69m)や連結構、後部桁をあわせた送出し部材長は約170.5m、総重量約714tに達した。送出し長が160mにおよぶ上に、R=550mの曲線桁を2.27%の上り勾配で送出すという難度の高い施工となった。


曲線桁を上り勾配で送出す

 本架設では架設済み桁上を送出しヤードとして利用し、両側のウェブにあわせて4本の軌条を設置している。軌条はR=550mの送出し線形にあわせるため、軌条桁の継手には角度付きの部材を製作して継手部で軌条梁を折り、レールに曲線を付加した。
 送出し設備は、軌条上に前方台車、中間台車2台、後方台車を配置し、送出し側であるP14橋脚上に400tシンクロジャッキ×6基、到達側のP15橋脚上に250tシンクロジャッキ×4基を設置している。前方台車と中間台車は従走台車とし、後方台車には50tクレビスジャッキ(ストローク1,000mm)と37kgレール用クランプジャッキ(50t)を台車の前後に1軌条1組を設置して、押し引きジャッキとして推進力を確保した(ジャッキは大瀧ジャッキ製を採用)。


軌条は4本。軌条を送り出し線形に合わせるために製作した角度付き部材

P14橋脚上の400tシンクロジャッキ/中間台車/後方台車に設置された押し引きジャッキ

 橋脚上のシンクロジャッキは、長支間の送出しのために2主鈑桁(2ウェブ)+2主箱桁(4ウェブ)で構成した手延べ機を採用し、架設桁は1BOX断面(2ウェブ)となっていることから、それぞれの通過に対応可能な配置としたことが特徴だ。具体的には、P14橋脚上では前方に2基、後方に4基配置して、手延べ機鈑桁部の通過時には前方2基を、手延べ機箱桁部の通過時には後方4基を、架設桁の通過時には縦列に2基ずつ全4基を使用した。P15橋脚上の設備は手延べ機と連結構のみを受けることになるため、4基としている。
 曲線での送出しとなるが、手延べ機は直線であることから送出しステップごとに仮受点での手延べ機の位置が橋軸直角方向に水平移動することになる。そこで、シンクロジャッキの下に同ジャッキを橋軸直角方向に動かせるスライド装置を設置するとともに、同ジャッキを橋軸方向にも調節できる回転装置も設ける工夫を行った。


2主鈑桁+2主箱桁で構成された手延べ機/シンクロジャッキを橋軸直角方向に動かせるスライド装置

 上り勾配に対する安全対策ではワイヤークランプ装置を用いたおしみ設備を設置。送出し中は10mごとに反力管理を行って、施工の安全を確保した。

 送出し初日となった3月28日は、午前8時30分から作業を開始した。送出し量は1時間あたり約10mで、盛替えを行いながら送出しを行い、送出し長が35m(前週25日に実施した試験引き5mを加えた合計送出し長は40m)に達した段階で前方台車の反力を解放した。初日は約37m(合計送出し長42m)を送出す計画だったが、作業が順調に進んだことから53.5m(合計58.5m)を送出し、到達まで残り33.5mとなった時点で作業を完了している。作業終了時間は午後5時だった。



初日 送出し開始前

 2日目は桁を約5m送出した後、P14側送出し設備の組み替えを行った。ここまでの送出しで手延べ機がP14を通過し、以降は主桁部の送出しとなる。主桁の縦断勾配変化量に対応した設備高さの変更が必要になるため、P14側の送出し設備の高さを0.6m上げる作業を行った。本作業は狭隘部でサンドルによる組み替えを行うために、想定以上の時間を要することになった。計画では、同日に手延べ機をP15橋脚上の設備に到達させる予定だったが、翌30日に到達させている。


2日目 送出し前(=1日目送出し完了状態)

2日目 送出し完了

手延べ機がをP15橋脚上に到達(日立造船提供)

 手延べ機先端のたわみ量は到達直前には約2.7mとなる。そのため、到達側のP15橋脚上には送出し設備より一段低い位置に嵩上げ設備を構築して、ジャッキアップによる手延べ機先端のたわみ処理を行った。その後、送出し作業を進めて、4月5日には架設桁を所定位置に到達させて、送出し架設が完了した。


P15橋脚上の嵩上げ設備(左)とジャッキアップによる手延べ機先端のたわみ処理後(右)(右写真:日立造船提供)

架設完了(日立造船提供)

 4月中に約6.3mの桁降下作業を予定している。
 設計は、オリエンタルコンサルタンツ。元請は、日立造船。

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