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1号線羽田トンネルなどの損傷対策を検討

首都高速道路 大規模更新・修繕事業に関する技術検討委員会を設置

公開日:2021.12.24

 首都高速道路は22日、大規模更新・修繕事業および機能強化の具体的な取り組みを検討する技術検討委員会を設置し、第1回委員会を開催した。委員長は、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授の前川宏一氏(右肩写真)。1号羽田線羽田トンネルで発生している塩害による損傷、RC床版やゲルバー部の損傷など対策必要箇所について、これまでの点検や更新・修繕事業で得られた新たな知見を入れて検討を行い、来春には中間とりまとめを公表し、2024年度以降の事業着手を目指していく。
 同社では2014年に大規模更新5箇所と大規模修繕55kmの事業に着手し、累積未補修損傷数をピーク時の約5割まで減少させてきた。しかし、開通から50年以上経過した路線の占める割合が、2014年の4%から2020年では約5倍の22%に増加し、20年後の2040年には65%に達することから「構造物の高齢化が急速に進展している」(首都高速道路・前田信弘社長)状況である。また、「(首都高は)1日約100万台の交通量、一般道と比べて約5倍の大型車交通量など、世界的に見ても過酷な使用状況に置かれている」(同)ことから、高齢化と相まって新規損傷発見数も増加している。さらに、補修を繰り返しても構造物の性能が十分に回復しない事例や狭隘部など点検困難箇所における損傷が明らかになるなど、新たな課題も発生している。


首都高の使用環境と高齢化/損傷数の傾向(首都高速道路提供。注釈なき場合は同)

 委員会ではこれらに対して対策の方向性を検討していくとともに、工事実施による交通規制をともなう渋滞などの社会的影響を軽減するために、迂回路の確保などの既存ネットワークの機能強化を検討していく。前川委員長は、「ハード、ソフト、マネジメントを含めて総合的な議論を進めていきたい。予防保全により、今後50年、100年に渡って構造物を健全に保ち、道路機能を維持することが最終着地点となる」と述べた。


委員会の名称は「首都高速道路の大規模更新・修繕及び機能強化に関する技術検討委員会」
委員会で挨拶を行う前川委員長(左写真)。記者会見に臨む前田社長(左)と前川委員長(右)(右写真/大柴功治撮影)

 委員会後の記者会見で大規模更新事業対象箇所として挙げられた羽田トンネルは、1964年に開通した首都高初の海底トンネルで延長は300m。開削部200m、ケーソン部50m、沈埋部50mで、構造目地が多く、経年劣化にともない侵入した海水によりトンネル躯体の塩害が急速に進行している。特に、開削部中床版で塩化物イオンが深部まで浸透し、鉄筋が消失するほどの激しい腐食が発生している。剥落防止工や導水桶の設置などの補修は行っているが、躯体内の塩分除去に加え、一部の中床版は再構築が必要となっている。


羽田トンネルの損傷状況

 RC床版については、舗装を打ち換えるたびに舗装切削機が床版上面を切削し、一部区間で被りが消失して鉄筋露出・切断が発生していることから、上面増厚による補強が対策案として挙げられている。抜本的な対策としての床版取替は、建物が近接し施工ヤードが確保できないといった都市高速道路の宿命から現段階では難しいとの考えが示された。
 ゲルバー部などの狭隘部では点検技術の進歩により、支承の圧壊、固着および周辺の腐食が確認されている。桁連続化などの抜本的構造改良が求められるが、対象区間が長く、大規模な工事になるので、今後の委員会で綿密に検討していくとのことだ。
 その他、鋼橋における経年劣化による大規模な塗膜剥離や腐食の発生、高力ボルト(F11T)の遅れ破壊の確認などの課題についても、対応案を議論していく。


新たに得られた知見と必要な対策(案)

床版上面増厚を要する箇所/鋼橋の損傷状況

狭隘部の損傷状況

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