東京製綱インターナショナルとオリエンタル白石が共同開発
炭素繊維ケーブルを緊張材として使用したプレキャストPC床版「CFCCスラブ」の販売を開始
東京製綱インターナショナルとオリエンタル白石は、共同で炭素繊維複合材ケーブルを(CFCCⓇ)を使用したプレキャストPC床版「CFCCスラブ」の販売を開始した。鉄筋やPC鋼材を使わず、CFCCⓇを緊張材として使用しているため、凍結防止剤を多量に散布する地域や塩害が厳しい地域でも腐食による損傷を起こすことがない。疲労耐久性の面では設計耐用年数100年相当の300倍に相当する輪荷重載荷走行試験を行っても破壊に至らない高い性能を有している。目地部も30mmと狭く、従来の継手施工に比べて床版取替時の所要工程を約15%短縮できる。(井手迫瑞樹)
同床版は、橋軸直角方向にプレテン、橋軸方向にポステンのCFCCⓇ製緊張材を配置した。同緊張材は炭素繊維と熱硬化型樹脂を複合化し、より合わせて成型したケーブル。PC鋼材に比べてヤング係数が低く、クリープや乾燥収縮による緊張力の減少を抑制できる。ケーブル径も大小商品化されており汎用性が高いことから補強材として採用した。
コンクリートは、60N/mm2(従来は50N/mm2)の高強度短繊維補強コンクリート(ポリプロピレン短繊維『バルチップMK』を使用、繊維量0.5vol%)を用いて製作しており、床版内の鉄筋をほぼ不要とした(地覆高欄部のアンカー鉄筋のみ必要)。結果として、床版重量を従来比6%軽量化している。ポステン定着部も緊張時こそ、金属製の定着具を用いるが、グラウト硬化後は定着具を切断し、グラウトの付着による定着に移行するため、床版内に金属を残置しない。同定着部は港湾桟橋の合成床版で20年以上の耐久性、プレストレス量の維持を確認している。
また、床版同士の目地(従来の継手に相当)も30mm程度に縮小することができる。同目地には床版コンクリートと同様の強度を有する高強度モルタルを充填する。輪荷重走行試験の損傷も目地部より本体部に先行して出ることを確認している。
イニシャルコストは従来のプレキャストPC床版に比べて13~22%程度高くなるが、LCCを考慮すると鉄筋腐食やひび割れによる損傷を起こしにくいため、厳しい環境下におかれた橋梁の床版取替へ積極的に展開して行く方針だ。
(2019年4月10日掲載)