道路構造物ジャーナルNET

165人が出席

池田甫氏を偲び「技術講演会」を開催

公開日:2016.12.04

 日本道路公団試験研究所長などを歴任し、国内だけでなく海外も含めて日本の橋梁を中心とした技術の発展とその伝道に力を尽くした池田甫氏は、今年8月24日に惜しくも、未だ74歳の若さで亡くなられたが、その池田氏を偲ぶ会が11月29日に「高速道路技術の変遷研究会」と題して、日本大学理工学部駿河台キャンパスで開催された。発起人は藤野陽三横浜国立大学上席特別教授など。通常の「偲ぶ会」ではなく技術講演会という形式で開催されたのが粋なはからいである。

 3部構成で、第一部は藤野教授の挨拶に始まり、春日昭夫氏(三井住友建設)が「世界へ発信したエクストラドーズド橋の技術-小田原ブルーウェイ ブリッジとその後-」、金井 誠氏(大林組)が「東京湾アクアラインが拓いたシールド工法による世界の道路トンネル」、出雲淳一氏(関東学院大学)が「海外との技術交流を通しての高速道路の維持管理技術の発展」、小川篤生氏(大成建設)が「我が国の高速道路の橋梁技術の発展」という題で、池田氏の各分野での足跡を辿りながら技術講演を行った。

壇上には池田甫氏の写真。一緒に講演を聞いているかのようだ。

講演会には160人以上が参加した
 記者は、大阪での取材があったため、第二部から参加した。第二部では、仕事上あるいは友人として池田氏に近しい講演者が、様々な立場、分野から池田氏を偲びつつ講演した。三谷浩氏(元世界道路協会(PIARC))や松岡和久氏(元JICA)は、国際的な場での池田氏の功績や傑出した語学力、相手をリスペクトして、瞬く間に友人関係を形作ってしまう立ち居振る舞いについて印象深く話した。韓亜由美氏(Studio Han Design)は、師匠である伊東豊雄氏に紹介されて池田氏に会い、その伝でアクアラインのシークエンスデザインを依頼され、そこから土木分野のデザインに仕事の幅が広がった「幅の広さ、縁の担い手」としての池田氏について自身の成果物を紹介しながら語った。田村幸久氏と藤波督氏(元日本道路公団)はJH時代の池田氏について、語った。
 その中でも最も印象に残ったのは、高橋修氏(日本工営元社長)の内容である。様々な国の人に共通して分かりやすい英語を話す卓越した語学力。相手を思想、信条、宗教その他の内容で決してバイアスをかけない公正さ。何より相手の良い部分を的確に把握するその力と、それをもって形作る交友関係。個人の卓越した能力と誠実さがにじみ出たエピソードが満載だった。
 第三部は懇親会が開催された。伊藤學東京大学名誉教授や池田尚治横浜国立大学名誉教授などが故人の徳を偲んだ。出席者は官学民から165人に及んだ。

池田尚治氏(左)、伊藤學氏(右)がそれぞれ池田甫氏の思い出を語る

池田紘子夫人と娘の池田香織さん

池田甫氏の写真を中央に出席者の集合写真

 【記者の目】記者が池田甫氏に会わせて頂いたのは、10年ぐらい前、溶射団体の研究会の席であったように記憶している。その時は既に新日鉄(当時)の顧問で、JHのOBとは聞いていたが、その業績は詳しく知らなかった。しかし、その後にNEXCOを中心に様々な場で、その偉大さを聞き、折にふれてお伺いするようになった。特にここ数年来は、個人的な相談にものっていただいた。特に本NETを立ち上げる際に後押ししてくれた言葉、記者への激励は今でも力になっている。技術的な知見はいうまでもなく、人格的にも高潔かつ寛容で、他人の良いところを見つける天賦の才を有していた池田甫氏。今はただご冥福をお祈りいたします。(井手迫瑞樹)

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