道路構造物ジャーナルNET

UFC床版継手構造

リブ同士をボルトで接続

公開日:2014.10.30

 阪神高速道路と鹿島建設は平成25年8月に発表した鋼床版とほぼ同じ重量に抑えつつ、PC床版と同様の性能を合わせもつ超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を用いた軽量・高耐久な道路橋床版について、継手部の構造を明確にした。具体的には継手部のリブ同士をボルトで接続する構造(図)。これにより床版厚を継手部で増す構造とならないため、全体の床版厚を抑えることが可能になった。製作コストは鋼床版以下に抑えられるとしており、今後は都市部の新規路線の床版や損傷した床版を迅速に取替え施工可能な工法として採用を図っていく。

     UFC床版、接合ボルトのイメージ(左) UFC床版の実験供試体(右)
 阪神高速道路が展開する都市部においては、施工ヤードも取りにくくクレーンなどの重機もできるだけ小型化することが望ましいことから、軽量で施工もし易い鋼床版を用いることが多い、しかし既設橋鋼床版では大型車交通台数の増加などを要因とした主に溶接部周辺の金属疲労亀裂が顕在化している。そこで両社は鋼床版に変わる軽量かつ高耐久なコンクリート系床版の開発をめざし、UFC床版の道路橋部への適用にめどをつけた。
 両社の開発に用いたUFCは鹿島建設などが開発した超高強度鋼繊維補強コンクリート「サクセム®」で、圧縮強度が通常コンクリートの約5倍を有する。これを活かすことでより大きなプレストレスを導入でき、鋼繊維の補強効果から高い引張強度を得ることができるため、鉄筋は不要となり、その分床版厚を薄くできる。また、組織が非常に緻密であるという材料特性と工場製作時に蒸気養生を十分に行うことから高い耐久性も期待できる。
桁との接続は頭付きスタッドによる接合する構造。また、床版パネルのサイズは橋軸方向に橋軸方向の幅は2.5m、橋軸直角方向の長さは,幅員と同じ長さのものを1枚で製作するか,縦桁やウェブの位置で分割した長さとしており、どちらにするかは,幅員の大きさや運搬・架設の制約で決定する。
 両社が開発したUFC道路橋床版は鋼床版箱桁のデッキプレート及び縦リブを置き換えるものでリブの配置をワッフル型にすることでさらに軽量化を図った。リブには高強度PC鋼材をプレテンションで配置し、2方向にプレストレスを導入している。

        重量は鋼床版とほぼ同等、PC床版の4分の1

   UFC床版(見上げ)                  ワッフル型のUFC床版  
 採用前には、松井繁之大阪大学名誉教授、長井正嗣長岡技術大学名誉教授、二羽淳一郎東京工業大学教授、三木朋広神戸大学准教授の元、3次元FEM解析による試設計、および実際のUFC道路橋床版を用いて大阪工業大学の輪荷重走行試験機で実車両走行を想定した試験を行い、安全性も検証した。具体的には100kNから220kNまで荷重を階段状に増加させながら各荷重で4万回、合計20万回の、設計荷重の約2倍、阪神高速道路で実測された軸重の100年分以上に当たる過酷な試験を行った。その試験の後、床版に水を張りさらに4万回の輪荷重試験を行った後でも床版に損傷はなく健全で、高い疲労耐久性を確認できた。
 阪神高速道路と鹿島建設既設RC床版更新へのUFC床版の適用についてUFC床版の試設計や詳細構造(現場施工部との取り合いなど)を検討し、製作試験を計画している。今年度内をめどにUFC道路橋床版の設計・施工・維持管理要領を作成する予定だ。(井手迫瑞樹)

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