道路構造物ジャーナルNET

北西線も2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までに開通目指す

首都高速道路 横浜北線がついに開通

首都高速道路株式会社
神奈川建設局長

寺山 徹

公開日:2017.03.31

鋼床版 バルブプレートか板リブを使用
 トンネル 二次覆工を不要に

 ――新技術の採用について
 寺山 鋼橋の防食についてはフッ素樹脂塗料を上塗りに採用した塗装を採用しています。また橋梁の舗装については、2年くらい前に改訂された舗装基準に基づいて、排水性舗装も元々13mmトップ(骨材の最大粒径)だったものを5mmトップにしています。


排水性舗装の施工(首都高速道路提供)

 鋼床版については疲労損傷を懸念されていることと思います。確かにJCT部は急曲線が多いため、Uリブ床版はほとんど使っておらず、バルブプレートか板リブを使用して、両側の溶接がきちんと見えるような形状にしています。鋼床版の最小板厚は12mmです。
 トンネル内部については、基本的に山手トンネルで培われた技術を採用しています。視線誘導を高さ2mまで配置し、従来用いていたタイルは剥落の危険があるため、無機系塗装による視線誘導を行っています。
 また、これも品川線と同様の技術ですが、二次覆工を不要にする技術を採用しています。
 そもそも二次覆工には地山から漏れる水の防水効果と、火災時のコンクリート爆裂(水蒸気爆裂)の防止効果という二つの課題に対策するため必要なものでした。特にセグメントは構造部材ですから爆裂したりすると地山が落ちてしまう可能性もあります。
 しかし現在のシールド施工は非常に精度がよく、セグメントの繋ぎ部分も防水の仕組みが入っていて、ほとんど水が漏れない形になっています。爆裂についても、品川線の時からポリプロピレン繊維をコンクリートセグメントに入れておくことで先に同繊維が溶融し、それにより水蒸気が抜ける道を確保し、水蒸気爆裂を防ぐことができる技術を採用しています。これによって二次覆工を不要にしています。


シールドトンネルの施工状況およびセグメントの運搬(首都高速道路提供)

トンネル床版 スパンは7.8m
  全部で5,000パネル以上を敷設

 ――トンネル内は非常に幅の広いコンクリート床版を採用していると聞きますが
 寺山 トンネル内径は11.5mで、コンクリート床版の幅は8.15m(スパンは7.8m)×長さ2mとなっています。構造形式はプレキャストPC床版で床版の厚さは330mmです。コンクリート強度は50N/㎟です。PC構造にしたのは、橋軸直角方向のスパンが7.8mと長いことから、床版厚やプレストレスの導入を決めました。床版同士の接続はループ継手+場所打ちコンクリートです。全部で5,000パネル以上の床版を敷設し、つなげました。場所打ちコンクリートは全て新横浜出入口側の立坑から入れて、先端まで運びました。


供用直前のトンネル状況(左)/床版パネル幅は7.8m(右)(井手迫瑞樹撮影)

 道路下には半円状の空洞があり、災害時の安全空間として利用できます。電気や通信ケーブル、水管なども格納されています。

北西線 横浜市と共同事業 受委託協定を締結
 いよいよトンネル部の掘進を開始

 ――北西線について
 寺山 横浜環状北西線は東名高速道路の横浜青葉IC・JCTと北線・第三京浜の横浜港北JCTを結ぶ7.1kmの高速道路として、当社と横浜市の共同事業として工事が進められています。施行区分としては、横浜市が主に4.1kmのトンネル部分を、当社が残りのJCT部の高架構造を担当することとしています。その上で、さらなる工程短縮を行うために受委託協定を締結し、首都高施行区分の高架構造の一部を横浜市が施工し、横浜市施行区分のトンネルのうち上り線(青葉→港北)を首都高が施工することとしました。首都高は中央環状新宿線、同品川線、横浜北線などシールドトンネルの掘進について蓄積した技術を有している一方、高架部分は地元対策に秀でた横浜市にお願いして着手時期を早めることで工期を短縮できるようにしています。


いよいよトンネル掘進が始まる

 トンネル施工は3月末に当社、4月中旬に横浜市がそれぞれ掘進を開始する予定です。既に両方のシールドマシンとも発進立坑に設置されており、発進の準備をしています。上下線とも片押しで施工していきます。トンネルは35mの都市計画幅を有しており、直径約12mのトンネルをシールドマシンで掘進していきます。北西線は北線と地質が異なっているため、セグメント厚さは45cmと少し厚くなりますが、上下トンネルの離隔は北線にほぼ準じます。
 高架構造についても全て発注を完了しています。
 ――特に橋梁工事の安全対策は
 寺山 首都高速と横浜市で統一的な基準を決めて、施工業者にそれを守ってもらうよう指導しています。基本的に高速道路各社には非常に厳しい統一的な安全対策が国土交通省から求められており、それに準じるものになります。
 また、今秋には東名高速道路や第三京浜道路を交差する個所に架設する工事が控えています。これらについては中日本高速道路、東日本高速道路に委託します。最大で1600t吊クレーンによる架設を計画しています。高架構造は今年1年でほぼ形が見えてくると思います。共同事業者である横浜市と連携して、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通を目指しています。
 ――橋梁架設時のベントに対する安全対策はどのように行う予定でしょうか
 寺山 ベントの構造や現地条件に応じて地耐力確認を行う予定です。
 ――北西線の高架構造は
 寺山 横浜港北JCTからトンネルの坑口まではダブルデッキからパラレルに移行し、青葉側はトンネルを出た後、パラレルにJCTにタッチする構造となっています。


横浜港北JCT部、北西線の建設が進んでいく(井手迫瑞樹撮影)

維持管理を念頭にした設計が必要
 なるべく無駄なもの、落ちるものを付けない

 ――付言して
 寺山 一つ一つの構造設計をする時に維持管理のことを念頭にした設計をしなくてはいけないというのが大きな時代の流れになってきている、と思っています。一方で維持管理のことだけを考え過ぎて、色々なものをくっつけるとまたその点検が必要になってくるわけで、なるべく無駄なもの、落ちるものは付けない、という意識を徹底しています。
 今後、新設が少なくなっていく中で技術の継承を真剣に考えていかなくてはいけません。維持管理をするためにも新設事業で構造物全体の建設に接して全容を把握しておくことは非常に重要です。そのため、今回の現場でも若手を意図的に集中投入しています。
 ――ありがとうございました

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