道路構造物ジャーナルNET

海外ではJ&Mで2万㌧の鋼橋生産も

JFEエンジ 安定的に400億円の受注を目指す

JFEエンジニアリング株式会社
常務執行役員
鋼構造本部長

川畑 篤敬

公開日:2016.04.17

 JFEエンジニアリングは、ここ3年3万から3.8万㌧程度の受注を達成するなど堅調に推移している。海外事業もミャンマーにJ&Mを設立、ODA案件を中心に東南アジア全域で2万㌧の生産量を目指す。EPP工法や合成床版など新商品や大規模更新・大規模修繕への対応なども含め、同社の川畑篤敬常務執行役員鋼構造本部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

新設市場は厳しく認識
 特殊鋼構造物も含め受注増図る

 ――ここ3年の鋼橋セクターの状況(受注㌧数、売上、純利益)および、中期的な経営環境の所感と経営目標について
 川畑常務 橋梁市場は、ここ数年、新設橋梁25万㌧弱で推移しています。今年度も同程度で、来年度も大きな変化はないと予想しています。業界で集約の動きもありますが、小さいパイを多数の会社が奪い合う構造は変わらず、依然として厳しい競争環境にあると認識しています。東日本大震災の復興道路、中部縦貫道路などこれからを期待できる個所もありますが、一方で都市再生分野や高架構造からアンダーパスや地下構造へシフトしていますし、地方のいわゆる高速道路のミッシングリンクをつなぐ工事も実際の発注量を見ると少ないと感じます。そうした中で工場の年間生産量を安定させるため、その他特殊鋼構造物などを含めて鋼構造商品の受注増を図っていきます。


鬼高PAオフランプ橋の夜間架設

 また、改築・保全市場についても今後の拡大を期待していますが、大規模案件は今年度の東品川、来年度は高速大師橋(いずれも首都高)と年1件程度で限定的といえます。但し、NEXCOや都市高速道路などの大規模更新・大規模修繕分野、国土交通省や自治体などの架替えも今後増えていくことが予想されており、積極的に取り組んでいきます。具体的には4車線化やICの増設、交差点立体化、床版取替などの事業です。
 ここ3年の鋼橋セクター(国内橋梁のみ)の業績は、受注額が350~400億円/年、売上額が250~350億円/年、生産重量が3~3.8万㌧/年で推移しています。受注規模を安定的に400億円程度にしていくことを当面の目標にしています。

EPPは順調に推移、さらに適用増目指す
 橋梁用ノンスルーフロアが首都高で採用

 ――EPP(エコ・ペイント・ピーリング)工法や合成床版など重点的な営業品目および今後投入予定の製品について
 川畑 EPPについては施工面積ベースで昨年度は4万5千平方㍍、今年度は首都高速の工事が事故の影響で止まっているものの4万平方㍍と販売は順調に推移しています。但し、これを大きく伸ばしていくことが課題です。ブラストなどに比べて粉塵の飛散がないなど有機性の塗膜剥離剤と比べて水系であるという環境面の優位点をアピールするとともに、施工性、経済性についてもさらに改善し、競争力のある商品として更に伸長を目指したいと考えています。東北などでは当社のグループ会社の北日本機械が積極的に展開しています。またそれ以外の箇所では当社施工はもちろん、ショーボンド建設様などの現場でもお使いしていただけています。今後はさらに知名度を上げていく必要があります。


EPP工法

 合成床版(リバーデッキ)については、関東地整・圏央道の発注が一段落し、市場が小さくなってきていると感じています。高い耐久性を有する床版であり、受注した上部工工事を中心に適用していきます。また、海外ODA案件として受注したバングラデシュのプロジェクトでは、合成床版が採用されているためグループ会社のJ&M(ミャンマー、JFEエンジニアリングが60%出資)での製作も検討しています。施工の際に足場をかけなくてもよいという点と品質管理しやすいというメリットがありますので、日本独自の技術として現地工事に組み込んでいきたいと考えています。
 新商品としては、美観と点検性能を兼ね備えたアルミ製恒久足場として「橋梁用ノンスルーフロア」を開発し、拡販に注力しています。5年に1度の近接目視が義務付けられる中、都市高速道路など高架橋の一般街路、および主要交差点において、交通規制を必要としない恒久的な足場設置ニーズに対応するため、施工中案件で通気性、採光性、および美観に優れたアルミ製の恒久足場材として提案・実施し、新規発注案件の受注も達成しました。


橋梁用ノンスルーフロア(設置CG)

ノンスルーフロア下部の構造(落下物を防止しつつ、通気性や採光性を確保できる)

 ――橋梁用ノンスルーフロアの詳細をもう少し教えてください
 川畑 下部にスリットが入っており、そこから採光・通気できるため、内部に照明や換気を設備する必要がありません。また、スリットは曲げているため物を落としても途中で引っ掛かり路下まで落ちない、と安全面もすぐれています。桁下空間は最少でも600㍉程度の空間を確保できるような設計にしています。
 橋梁とは少し離れますが、鉄構関連製品では、国土強靭化により既設桟橋や岸壁などの耐震補強やリニューアル需要の拡大をにらみ「深梁工法」や「がんばL工法」の採用拡大を図ります。

技術提案部門を営業から技術へ移す
 中長期に通用する本質的な技術力向上を目指す

 ――鋼橋業界は、限られたパイを奪い合う構図が続いていますが、その中で新設橋梁や架け替え橋梁を受注するための技術力強化について
 川畑 受注強化のために、高い評価が得られる技術提案力の強化を目指しています。4月の組織変更では、営業部門に属していた技術提案部門を技術部門に配置し、実践での技術を提案にフィードバックしやすい環境にしました。
 特徴的な現場としては、首都高の改築現場が挙げられます。既存技術に捉われない斬新な発想で交通規制の緩和を図っています。


熊野町立体/堀切・小菅拡幅(いずれも首都高速道路)

 ――御社も含めた各ファブが営業部門に技術提案部署をおいていたのは、各発注機関の窓口と技術提案部門に関わる人間が恒常的に接することで相手のニーズを引き出し受注につなげるという狙いがあったと思います。そこをあえて外すのはなぜですか
 川畑 仰るとおりです。しかしそれはある意味要望対応であり、自社技術の向上には寄与しないのではないか、と判断しました。今後国内で増えてくる大規模更新・大規模修繕や海外事業は本質的かつ創造性に富んだ技術提案が必要です。それには技術提案部門をより現場に近い所に配置して、力を磨くことが大事と判断しました。
 ――確かに総合評価方式は、担当者の判断によるところも大きく当たれば大きいが、評価担当者が異動すると今までの提案が通用しなくなるというケースもあると聞きます
 川畑 それもあります。そのため中長期期に通用する技術提案力を身につけたいと考えています。一時は受注に苦しむこともあるかもしれませんが、長期的にはきっと良い方向に働くはずです。

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