道路構造物ジャーナルNET

社会インフラ構造物の防水、剥落防止対策、橋脚補強の表面防護、法面対策などで定評

SQS工法協会が一般社団法人化 新会長に半野久光氏が就任

一般社団法人SQS工法協会
会長

半野 久光

公開日:2023.04.19

 社会インフラ構造物の防水、剥落防止対策、橋脚補強の表面防護対策などで用いられているSQS工法の普及を推進しているSQS工法協会は工法のさらなる普及を図るべく、4月から一般社団法人化した。今後どのような分野に発展を遂げていこうとしているか、同協会会長の半野久光氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

半野久光会長略歴

超速硬化ポリウレタン樹脂吹付材を表面被覆材料として使用
 硬化後は強靭で高い物理性能を持つ塗膜層を形成

 ――まずSQS工法について教えて下さい
 半野会長 SQS(Super Quick Spray)工法とは、超速硬化ポリウレタン樹脂吹付材を表面被覆材料として、新設および既設の幅広い構造物に適用するものです。特にSQS材は2液硬化型吹付塗膜材で、硬化後は強靭で高い物理性能を持つ塗膜層を形成し、施工においては、専用の高圧ポンプを組込んだ機械化システムにより、スプレーを用いて連続的に吹付けを行い、10~20秒後にはダレ落ちることなくシームレスに成膜できるのが大きな特徴です。
 また、これにより、平面以外の立面や天井面などの複雑な部位も場所を選ばずに施工が可能で、施工後の塗膜も均質で良好な水密性を有すると同時に、従来塗装に比して塗り重ねのローテーションが少なく工程削減に大きく寄与するのも特徴の一つです。
 ちなみに2000年の土木研究センターの技術審査証明を受け、16年には沿岸技術センターの確認審査、評価証明も受けております。
 お陰様でSQS工法は、トンネル構造物や地下駐車場などの地下構造物の防水や橋梁のコンクリート高欄などの剥落対策、橋脚耐震補強のRC巻き立て工法の表面防護、さらには海浜部におけるコンクリート防波堤の塩害対策などにも用いられるようになってきました。特に首都高速道路や名古屋高速道路公社では、コンクリート高欄での自動化塗装装置の導入といった新しい取り組みもみられるようになってきました。
 最近では斜面の法面防護などの需要も増えつつありますし、コンクリート構造物に限らず、鋼構造物に関しても、防水や防食目的で使われることも増えております。


トンネルの剥落防止工やアンダーパスの剥落防止工、橋脚耐震補強の保護工などの実績

鉄道橋でも用いられている

 ――SQS工法協会は、かなり前から活動していますね
 半野 本協会は、SQS材を活用した土木・建設分野でのコンクリート構造物や鋼構造物の防水被覆技術に関する研究を行うと共に、SQS工法の広く一般への普及を通じて構造物の長寿命化を図り、公共の福祉の増進に寄与することを目的として1997年SQS工法研究会としてスタートしました。
 その後、2015年にSQS工法協会へ名称変更し、組織改編を行い、さらに今年、2023年4月に非営利団体の一般社団法人として新たに発足し、現在に至っています。

道路分野 道路開削トンネルの躯体保護や橋梁高欄の保護塗装などで実績
 塗膜性能だけでなく施工効率も従来比2倍に向上

 ――一般社団法人化した理由は
 半野 SQS工法として、広く各事業者様に使用されてきました。しかし最近の国の国土強靭化事業に伴い、新設構造物への対応に加えて、既設構造物の補修・補強に関する対応もその重要性を増しております。これに伴い特殊用途での見積依頼や技術的問い合わせも寄せられていることから、これまでに任意団体であった本協会は一般社団法人へ舵を切り替えて、発注者の様々な要望に正規に対応するため一般社団法人化しました。

 ――会員数とその会員の内訳は
 半野 一般社団法人化する前のSQS工法協会は、材料メーカーや施工業者など20社以上の会員がおり、現在までにその大多数が会員継続の意思を示していると考えますが、法人化を機に更に多くの新規会員も募集する計画でおります。

 ――現在までの主な実績例を教えて下さい
 半野 古くは首都高速道路の開削トンネルで躯体を保護するアスファルト防水の代替材料として、採用した事例があります。また、コンクリート壁高欄の中性化対策や剥落防止対策としても使用しています。これは従来のコンクリート保護塗装がコンクリートの収縮クラックにより割れてしまうケースが多かったため、引張性能の高いウレタンを使用することで保護塗装の性能を向上させたものです。こうした高欄の保護塗装は首都高速道路だけではなく、名高速などでも採用が増加しています。
 コンクリート壁高欄は、首都高などでは鋼板補強されている箇所もありますが、鋼板の腐食が進行している箇所において錆を除去し、厚膜の保護塗装を行うという事例も増えてきております。


道路橋壁高欄自動塗装例

 SQS工法の保護塗装は、塗膜の性能だけでなく、施工効率が良いことも特徴です。従来のコンクリート保護塗装は下地処理、断面修復後、プライマーを塗布した上、4回塗り重ねる必要がありましたが、SQS工法は断面修復後の施工がスプレー塗布で2回塗りするだけでよく、高速道路上の規制回数を大幅に少なくすることができ、社会的コストを大きく縮減することが可能になりました。
 反面、デメリットとして施工時の飛散の発生がありますが、技術改良によって塗装の自動化、飛散防止対策も向上しております。また、港湾桟橋、コンクリート護岸などの塩害対策などでも実績が増えています。

のり面吹付 モルタルでは7cm厚必要な箇所もSQSでは2mm厚ですむ
 四国では保護層のひび割れの有無や厚み測定を定期的に測定

 ――国土強靭化という観点からは、橋梁はもちろん、法面の防護も重要になっています。SQS工法はこうした分野でも使えるのではないですか
 半野 はい。コンクリート吹付けの代替材料として、SQSを使用する例は国交省、地方自治体、NEXCO関連等においても実績を上げています。

 ――法面や自然斜面の保護工におけるSQS工法の長所はどのような点にありますか
 半野 軽く、素材が引張に強いため薄膜で保護できるという点が長所といえます。従来の吹付けモルタルでは7cm厚が必要な箇所も、SQSが形成するポリウレタン樹脂を用いた保護層では2mmの厚さで済みます。また、現場が大規模になれば、吹付モルタルで施工する場合、法面付近の現場の車線のかなり長い延長を規制して、練り混ぜ機械や吹付け用ポンプなどの設備を設置する必要があります。しかしSQS工法は2~4tの車一台分のスペースを確保すれば施工でき、工期も短縮できるため、ここでも社会的コストを縮減できます。とりわけ地方の道路は車線数が少なく、1.5車線道路のような区間もあり、車線規制区間・期間の減少が求められており、それに応えられる工法であると自負しています。
 また四国では2年以上前に施工した法面保護の現場において、保護層のひび割れの有無や厚み測定を定期的に測定しており、損傷度の問題は生じていません。


のり面での施工例

 ――今後の展開はどう考えていますか
 半野 従来からの活動を強化するとともに、特に本工法のさらなる普及、啓発活動、工法のさらなる研究開発や改良に関する活動、本工法の技術基準や設計基準、生産基準の整備に関する活動、施工マニュアル、安全マニュアルの策定、本工法の認定制度の運営に関する活動、人材育成や各種講習会の開催などを考えております。
特に国や地方公共団体などの公的機関や各道路会社などにSQS工法の優位性と活用について積極的に働きかけていきたいと考えております。
 ――ありがとうございました

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